「持ちきれないってばよ!」


さっきまで優勢に立っていたナルトの手持ちは溢れるほど増えていた。
そんな中、ヒロイン2が女部屋から一人で戻ってくるとサクラといのがニヤリと彼女を見た。


「で?どうだったのよ?」
「…何が?」


頬が緩んだままのいのがヒロイン2に聞くが、彼女の反応は相変わらずだ。


「とぼけちゃってー」


いのとサクラに問いつめられ「あーうるさい」と言いながら少し後退りすると、たまたま目が合ったチョウジがキョロキョロとし始める。


「そういえばキバは?」


彼が探していたのは、さっき一瞬だけ顔を出して去って行ったキバだった。
何となく状況を察しているのか、問いかけた時の彼の視線はヒロイン2に向いていた。

「…隣の部屋で寝てるんじゃない?」

「はぁ?!何で俺がこんな大変な時に寝てるんだってばよ!!」


そっかぁ、と納得するチョウジの横で、大量のカードを手にしたまま頭をガシガシと掻くナルト。
そんなナルトをよそに、サクラといのはヒロイン2とキバの事が気になって仕方なく、質問責めをしながらずいずいと入り口の方に詰め寄る。
いっそのこと逃げてしまおうか、とヒロイン2の脳裏をよぎった瞬間、彼女の背後の襖が開いた。


「何やってんだ、お前ら」


振り向くとそこには眉を顰めて立つシカマルと、その後ろでこっそりと身を潜めるヒロイン1がいた。


「あ、シカマルー」


ポテチ片手にチョウジが彼に手を振れば、彼も軽く左手を挙げた。
そのとき、ヒロイン2に詰め寄っていた二人が目の色を変えて標的をシカマルへと変える。


「ちょっと何してたのよ二人とも!」


楽しげに問いただすと、シカマルもまたヒロイン2と同じように「あーうるせ」と返しながらチョウジの横に座る。
いの達がシカマルに気を取られてる隙に、ヒロイン1はそっと忍び足で部屋に入ろうとする。


「何やってたの?」


気づかなかった。
いの達に気を取られて、ヒロイン2がまだ入り口に座り込んでいた事をすっかり忘れていた。
普段そんな事聞いてこない彼女からの質問にヒロイン1は一瞬、身が固まる。


「…お幸せに」


硬直したヒロイン1の様子から察したのか、ヒロイン2は一言だけ言葉を放った。
見破られた恥ずかしさからか、その大人の対応のせいか何となく頬が熱くなり恥ずかしくなったヒロイン1は、ちょこんと彼女の前にしゃがみこむ。


「…、ヒロイン2こそ、キ、キ、キバは?」
「寝た」
「ね、寝たぁぁぁぁああ?!」
「ちょ、うるさい」


寝たと言っただけなのに過剰反応するヒロイン1は抱え込んだ膝に顔を埋める。
そんな彼女を見て、ヒロイン2はただ首を傾げた。


「キバってば…大胆すぎ…」
「ヒロイン1のおかげかもね」


ニコっとヒロイン2が軽く微笑むと、目を丸くさせ両手を顔の前でぶんぶんと振り始めた。


「わた、わたし、そこまでやれって言ってないよ!!」
「え、何をやれって?」
「そ、そんな事わたしの口からはとても…寝たとかそんな…てか言ってないって!!」


変に過剰反応し、顔を真っ赤にするヒロイン1を見て、ヒロイン2は少し疑問を感じる。


「…なんか勘違いしてるんじゃないの?」
「…え?カンチガイ?」
「寝たって言ったじゃん?」


ポッとまた頬を紅く染めるヒロイン1を見て彼女は確信する。
彼女は勘違いをしている、と。


「…意味違うよ、ばか」
「ばかって言われた!」


いつもの事だけど!と拳をブンブン振りながらノリツッコミをするヒロイン1が可笑しくて、ヒロイン2はニッと笑って少しからかってやる。


「このスケベ」
「なぬっ?!スケベ?!」


初めて言われたスケベという言葉に驚いていると、「あんたたち何コソコソしてんのよ」というサクラの言葉で現実に引き戻される。


「こっちで一緒にUNOやろうよー」


そのチョウジの問いかけに「はいはい」と言いながら空いてる席に向かうヒロイン2の後ろを、「スケベって…!」と未だ先ほどの言葉を引きずるヒロイン1が続く。


「ほら、そっち空いてるよ」


シカマルと向かい合わせに座ったヒロイン2は、彼の隣を指さしこう言った。
シカマルは余計なことすんなよ、と言わんばかりの視線をヒロイン2に送りつつも、さりげなく座布団を自分の隣に敷き「ほら」と言いながらポンと座布団を叩いた。
そんな状況に赤面しながらヒロイン1はその座布団に座ると、サクラといのの視線がグサグサと刺さった。


「さぁ、3人も来たし最初からやり直しよ!カード回収回収〜」
「えぇぇぇええ?!せっかくこれから反撃するところだったのに…!」


大量のカードをやっと整理し終えたナルトがサクラからカードを回収されていると、ドアが開くもの凄い音がするとともに、寝ぼけ眼のキバが部屋に入ってきた。

ヒロイン2が振り向きキバのほうを見るとちょうど視線と視線がぶつかる。
暫く視線がぶつかったまま動かないキバは、やっと動いたかと思えばヒロイン2の膝の上に頭を乗せ再び眠り始めた。
恥ずかしさのあまりヒロイン2は力いっぱいキバの体を押せばゴロゴロと転がってそのままキバは壁に衝突した。

いつも通りにしていたつもりのヒロイン2だったが、周りの視線が凄く痛く感じて思わず頬が熱くなる。


「ちょっと、何よ今のー?」
「え?なんか見えた?」
「そ、存在消した?!」


からかういのに、普段通りに振る舞ってるつもりのヒロイン2。それに何だかキバが不憫に思えてきたヒロイン1。


「おーい、キバー?大丈夫かー?」
「…ん?」


ナルトの問いかけで起きた彼の額には、壁とぶつかった痕がくっきりと残って紅くなっていた。