3
また目を覚ますと、あの広い天井だった。
眠ってしまっていたのか、とアルスラーンが身体を起こせば。


「ふひゃッ!?」


すぐ隣に、先ほどの少女の姿。


これでもかと言うくらいにかっぴらいている黄色の瞳に、間抜けな顔をしている自分が映っていた。


彼女は手に持っていた手ぬぐいを反射的に放り投げてはまたあの白の布に手を伸ばす。
しかし、彼が「待ってくれ」と腕をつかんだ。


「私たちをここへ運んできてくれたのはお主か?」


真っ青な顔でゆっくりと首を縦に振る少女。
ありがとう、礼を言う。そう口を開きかけた瞬間。


「ん……あれ、殿下……って! 何者ですか!?」


エラムだった。
彼は声をあげて近くに武器になるものはないかと探し始めた。


騒がしい彼を目覚ましにダリューン、ナルサス、そしてギーヴまでもが目を覚ました。
エラムが枕元に置いてあった自分の手持ちの短刀を彼女に向ける。
それを見たダリューン達は、少女を敵を見なし各々刃を剥いた。


「貴様何者だッ!! 殿下から離れろッ!!」


ダリューンが鬼の様に怒鳴れば。
アルスラーンが口を開く前に腕にかかる力が急に重たくなった。


「お、お許しく、くださぁ……い……」


涙目になりながら倒れた少女。
その時、ダリューンの怒声を聞いたのか二つの足音がこちらへ向かってきた。


「なんじゃ!? なにがあった!?」
「レア? どうしたの?」


白の幕をあげたのは、真っ青なファランギースと白い雲の様な髪の女だった。


「ファランギース!?」
「ファランギース殿!?」


すでに目覚めていた彼女の姿を見て、安堵するよりも驚きが大きい。
倒れている少女そっくりの髪の女は、「とりあえず居間へどうぞ」と微笑んだのだった。

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