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目を覚ますと、太陽の光が真っ先に飛び込んできた。
天井は高く、ゴツゴツとした岩肌。まるで洞窟のようだ。


アルスラーンは未だ重たい身体を持ち上げて、ハッと我に返る。


ここは……どこだ!?


ふと視線を右にずらすと、すぐ隣にダリューンが眠っていた。
目を丸くしたのは一瞬、そのまたすぐ隣に眠っているはナルサスではないか。


左を見れば、すぐ横にエラム、その隣にギーヴが眠っている。
ファランギースがいない、と一瞬考えたが、自分の下に敷いてある布団を見て胸を撫で下ろす。


私だけではない、皆布団で眠っている……害を与える気はないのか?


ここは誰かの家だろう、彼はより細かく部屋を見渡す。


広く、高い天井は改めて見ても立派な岩肌で、側面に二、三個所隙間が空いていた。そこから太陽の光が入っているのだろう。
壁際には飾り気のない引き出しやタンス、蝋燭などと言った木材の家具が綺麗に並べられており、普通の家と大差ない部屋。


強いて言うならば、出入り口であろうところに真っ白な布がかかっている。


自分は誰かに助けられたのか、とアルスラーンが深く息を吐いていると、白の布が揺れた。
誰か来るーーそう思ったのは遅かった。


「ヘアッ!?」


「……」


一番最初の悲鳴は彼からではないーーその後の沈黙が彼のものだ。


布を揺らした者の正体は、髪の長い少女だった。
髪の長さを見てもそうだったし、なにより声が女のものである。


そして、今その少女はーー白の布を被って、白い壁に同化しようと必死だった。
動かなくなった布を見て、アルスラーンは声を失う。
しかし、一ついいことを思いついた、と身体の力を抜いて重力に身を任せた。


「まだ……身体が重たいな……」


身体が布団の上に落ちた音がして、彼はまた目を瞑る。所謂、狸寝入り。


しばらくすると、先ほどの少女の声が彼の鼓膜をふるわせた。「ね、寝てしまいましたか……?」


布が擦れる音がする。アルスラーンは、目を開けたい衝動を我慢して耐えつづける。本当に眠っているように、自然に。
すると、急に額に触られている感覚。手を置かれているのか。


「……熱はない、か。良かった」


安堵したような声と共に、水音が聞こえた。
ちゃぷちゃぷ、額に冷たい物が置かれた。濡らした手ぬぐいだろうか。
視界を塞いでいる以上得られる情報は少なかったが、それでも彼女に敵意がないことがわかっただけで十分だった。

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