17 二人は、服についた葉を落とし元の場所に戻す。 せっかく作ったクッションなのだ。長く使わないといけない。 ーーにしても。 エラムは自分の命を救ってくれた葉たちを見て思う。 この葉はどこから持ってきたのだろう。 「この葉っぱは私が集めたんです」 「うえっ!?」 驚きのあまり肩を揺らすが、彼女はただただ無意識に言っただけのようで彼を見てどうしたんですか? と聞いているように眉を潜めていた。 エラムはそれをある意味好機だと考え、その話題をふくらませた。 「山全体からですか?」 そう問えば彼女は先ほどのことを忘れたかのようにあっさりと答えた。 「はい、この山のいろいろなところから落ち葉を拾ってはここに集めておりました」 「すごいですね。雨風で吹き飛んで行ったりしなかったのですか?」 「飛んで行ったらまた集めるだけです」 すごい。純粋に彼は感嘆の息を漏らした。 自分よりも幾分か小さな少女が山の中を駆け回り、木を登り、崖さえも登って生きている。 人里を離れて、自分たちの力で生きている。まるで殿下とは正反対の生活をしてきたようだ。エラムは自分たちの先頭に立つ、年の近い王族の少年に失礼だと思いながら彼女と比較していた。 「エラム様、お仕事も終わったことですし時間までお散歩でもしてますか」 「時間……?」 はて、この頃に帰ってこい、などと細かい門限などあっただろうか。 「『太陽が赤くなったら帰ってきなさい』と、母が……」 「ああ、そうでしたね」 あの時は自分も行くことになるとは思ってもいなかったから聞き流していた。 エラムは空を見上げる。まだ空は青い。赤く染まるまでにはまだ時間がかかりそうだった。 「……割と時間が残っていますね」 「そうですね……あ、そうだ」 レアはなにか思い付いたように彼を見上げる。 包み込むような太陽の光に照らされた満月がより一層輝いた。 「"乙女草"でも見にいきますか?」 「えっ」 乙女草と言えば今日まで自分たちを眠らせていた元凶である。 シロンから押し花で見てはいたが、実物となるとやはり違うのだろうか。 しかし、つい先ほどまでそれが原因で眠っていたというのに、それを見に行っても大丈夫なのか。 レアにその心情を伝えると、大丈夫ですよと彼女は空で眩しく自分たちを包み込む太陽のように微笑んだ。 「もう花粉は飛んでいったのでしばらく花粉は出てこないんです。それに身体に耐性も多少ついていますからね」 エラム自身、興味が強かった。押し花では足りない、好奇心が湧き出てくる。 それにもう花粉の心配がないのなら、いかない理由はない。 まだ時間はたっぷりとある。せっかく彼女が提供してくれたものを無下にする理由もなかった。 行きたいです、そうエラムが伝えると彼女は頷いて一歩踏み出した。 カゴにはあふれんばかりのキイチゴが。揺れて山が崩れることはあっても、その実が落ちることはない。 |