「よく頑張ったな、俺がきみを癒してやる。」

鶴丸国永は得意そうな表情で、あなたを出迎えました。鶴丸にマッサージされる、という字面だけで、すでにあなたは少し疲れてしまっているようです。

布団の上にうつ伏せで寝かされて枕に顔を埋めると、鶴丸があなたの上に跨るように乗り上げてきます。
体重をかけることなく膝立ちのまま、彼は襷をきゅっと締め直しました。

「驚きの結果をきみにもたらそう!」

鶴丸国永に背中を向けることへの気苦労と、存外丁寧に始まった肩へのマッサージが、あなたの疲労度をちょうど相殺していて妙な心地です。

「随分と凝ってるなぁ。大方面倒なアンケートでもやらされたんじゃないか?」

きみは優しいからな、と暖かい眼差しを落としながら、あなたの首筋を揉み揉みとほぐします。
真面目にマッサージに取り組んでいる鶴丸に、あなたはだんだんと心を許しはじめました。

首の後ろから、肩にかけて、暖かい手のひらが行き来して、筋肉が、ゆるり、ゆるり、ほどけていくのを感じます。

はあ、と柔らかく溶けた息があなたの口からこぼれると、鶴丸は嬉しそうに笑います。

「どうだ?なかなかの腕だろう?」

手のひらが少しずつ、下へ、下へとおりてゆきます。
肩甲骨の窪みをぐりぐりと揉まれると、目には見えない羽が、背中からぐうんと伸びるように感じられました。

すっかり安らいだあなたのことを目に映して、たまにはこういうのもいいもんだな、と改心しかけていた鶴丸でしたが、それも束の間のことでした。

鶴丸の指先が、あなたの脇腹に引っかかった時。あなたのひゃあ、という声を聞いてしまった彼の胸中で、凪いでいた悪戯心が瞬く間にむくむくと膨らみます。

「……。」

試しにもう一度、今度はわざと両脇から脇腹をひとかき、ふたかき。
きゃああ、と上がった悲鳴が手の内でじゃれる猫のようにかわいくて、鶴丸はつい、あなたのお腹を擽りはじめてしまいました。

「ははは!どうした主?まっさーじだぜ!」

息も絶え絶えに抵抗するあなたに馬乗りになってわしゃわしゃと腹をくすぐる鶴丸国永は、千年以上生きてるようにはとても見えません。もちろん悪い意味で。

ひいひいと呼吸もままならず転げまわったあなたの目に涙が浮かんでるのを見て、ようやく鶴丸は手を止めました。

もういやだ。あなたは先ほどまでの絆された自分自身に、心底呆れ…る、と見せかけて反撃に出ます。

鶴丸の脇腹にこちょこちょと、指を走らせると、うはは、と今度は鶴丸が倒れます。
あなたに対しては、本気で抵抗出来ない鶴丸国永は、じたじたと暴れる手先をなんとかなだめてあなたの手を取りました。

手を繋がれて、はあはあと息を切らせた二人はぱたんと一緒に横になります。

本来の目的はどこかへ飛んでいき、どっぷり疲れて何もしたくないあなたの乱れた髪を、鶴丸が手櫛で整えます。詫びるような、甘えるような指先が、頬を滑ってゆきます。

やがて上がった息が落ち着くころ、繋いだ手をきゅっと握りなおして、鶴丸がその見た目に相応しい微笑みを浮かべました。

「きみが好きだ。」

私は嫌いです。と思った矢先、握られた手がふわりと挙げられて、視界に入りました。

「だから、ほら。今日は俺と居ような。」

あなたの右手は鶴丸の左手と、いつの間にやら襷でぐるりと縛られています。

結んだあなたの指先に口付けて、笑った鶴丸のことを、どうしても憎めないあなたも、きっと彼のことを好いているのでしょう。





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