二人向きあって、あなたが両手を山姥切国広の頬へと伸ばします。
「はあ、いったいどういう風の吹きまわしだ。」
山姥切国広は呆れたように言いながらも、手を拒むことはなく、ただあなたを見据えています。
ひたり、両手が彼の頬を包みました。
きめ細やかな肌は、マシュマロのようにさらさらと柔らかで、ふに、ふに、と手のひらに馴染みます。
つい夢中になって両頬の弾力を楽しんでいると、山姥切が理解に苦しむ、といった表情であなたを見つめてきます。
「何がそんなに面白いのやら。」
それでもなお、むにむにと頬を触るのをやめないあなたに、山姥切は、はたと閃きました。
俺も触ってみればいいのか。
布の下から、山姥切の手のひらがするりと現れて、あなたの頬へと柔く吸い付きました。
「これは…!」
山姥切国広、この世に生を受けて以来、これほどまでに柔いものに触れるのは初めてです。
もちもちもち、てぷてぷてぷ。
「…くっ…。」
己が内に蔓延る衝動を飲み込まんとする山姥切国広の呻き声。何かに屈したように、山姥切国広は俯いてしまいました。
俯いてもなお、彼の頬をふにふにするのをあなたはやめません。だってご褒美ですもの。当然です。
「…悪く思うな。」
顔をあげた山姥切国広の目の中を光がうるりと泳ぐのが、あなたには見えました。葛藤し、恥じらい、それでも山姥切国広は自分の望みを叶える決意を静かにしていたのです。
頬へと触れていた手が引き剥がされて、握り込まれる代わりに、あなたの頬へと山姥切国広の頬が寄せられます。
やがてぴったりとくっついた二人の頬は溶け合いそうです。
ふわふわ、もちもち。
幸せに満たされてゆく二人。
熱いのがどちらの頬なのかは、もう知れないまま、ただ安らかな沈黙に、そっと目を閉じるのでした。
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