「いやだ。」
大倶利伽羅はにべもなくふい、とそっぽを向きますが、投げキッスするまで終わりません。
「……。」
大倶利伽羅の目が、ちらりと横目にあなたを見上げます。
目が合って、あなたが見つめ返すと、大倶利伽羅の眉間にぎゅっとしわが寄って、また視線が逸らされました。
「…。」
むんずと結ばれた唇はへの字になっていて、頬が赤らんでいます。拗ねたような顔をしていますが、大倶利伽羅は照れているらしいです。
様々な葛藤が浮かんでは消え、していた大倶利伽羅がきゅうと目を閉じました。眉間のしわが解れて、ようやく観念したようです。
「はぁ。」
わざとらしく吐かれた溜め息には、どうして俺がこんなことを、というふりがながふってありました。
「おい、目を閉じろ。」
目を閉じた相手に投げキッスというのは、果たして意味があるのか疑問ですが、ここは譲らぬと大倶利伽羅はじろりとあなたを見つめます。
どうしますか?
…そうですね。
あなたが折れなければ話が前に進まないらしいので、察しが良くて気のつくあなたは目を閉じてあげます。
「……。」
大倶利伽羅はあなたの瞼に、ひらひらと手のひらを翳しました。警戒しているようです。
しかし彼の警戒とは裏腹、あなたは素直に目を閉じていました。
大倶利伽羅はひとつ息をつくと、右手に握っていた刀の、柄の端、頭と呼ばれる部分にちゅむ、と口付けます。そして、それをそのままあなたの唇へ優しく触れさせました。
触れさせました?
感触が降ってくると思わなかったあなたは驚いて目を開きます。
そして大倶利伽羅の驚いた瞳と視線がかち合いました。
やった後に、失敗に気付いた大倶利伽羅は、今しがたの行動を瞬時に振り返って混乱しました。
「…っこれだから馴れ合いはごめんだ。」
よく分からないいつもの捨て台詞を言って、大倶利伽羅は踵を返してずんずんと歩いて行ってしまいます。
残されたあなたは、唇をそっと撫でました。間違いなく、そこに残っている感触を確かめて、今しがた逃げてしまった大倶利伽羅と同じように耳を赤くするのでした。
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