「主、お疲れさま。いっぱい答えてきたんだね。えらいえらい。」
光忠が眉根を下げて、あなたの頭を労わるようにそっと撫でます。
髪が乱れないように、優しい指の先までが気遣いで満ち満ちています。
「疲れたでしょ?…お弁当、作って来たんだ。食べてくれるかい?」
取り出されたのは可愛らしい二段のお弁当箱。光忠が持つと、随分小さく見えて、あなたはなんだか可愛いなあ、と目を細めました。
ぱかりと蓋を開けたら、見事な彩りのたくさんのおかずがお弁当箱の中で輝いています。待ってましたと言わんばかりの、愛情の群れがあなたのお腹をぐう、と動かしました。
「主はこれが好きだったよね?」
光忠がお箸で、あなたの好物をつまんで差し出してくれます。
「僕が食べさせてあげる。ほら、あーんして?」
あなたは恥じらいつつも、ぱくっと光忠の手から食事をします。ひとかみ、ひとかみ、ごとに味が口いっぱいに染み出して、頬が緩みます。
冷めても美味しいようにと、しっかりと味付けがされていて、ごはんが恋しくなることでしょう。
「ふふ、美味しいかい?次はごはんだね。」
お米はつやつやと、一粒一粒がきれいなまま、お箸の先に乗っかっています。ごはんの間に挟み込まれていたおかかが溶けるように旨味をご飯に移していて、甘く出汁に色付いています。
「はい、あーん。」
もふり。どうやら一口ぶんには少し多かったようですね、口いっぱいに頬張ったあなたの頬に、ご飯がひとつぶ。
「ああ、ついちゃったね。」
光忠がそっと、あなたへと顔を近づけます。
キスされる!と目を瞑ったあなたの唇の端に、光忠の唇がそっと触れて、はむように離れていきました。
頬についたごはんをもくりと食べて、光忠は楽しげに目を細めました。
「次は、どれがいいかな?」
顔を覗き込まれて、あなたは照れた頬がさらに熱くなるのを感じます。
そのあまりに可愛らしい反応に、光忠はとてもご機嫌な様子です。
「ふふ。そんな目、しちゃだめだよ。僕が君を食べたくなっちゃうでしょ?」
このまま、お弁当箱が空っぽになるころには、あなたはすっかりとろけてしまうことでしょう。
こんどは光忠が幸せに飢えた目で、「いただきます。」を言うのでした。
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