目がこわい


…外が眩しい。

朝日がカーテンの隙間からさして、ごく自然に瞼が開いた。

「…っっ!!」
…開いたところで、目の前に男の子の寝顔が飛び込んで来て、息を飲む。どんがらがっしゃんと一瞬で頭が散らかった。体は硬直する。

昨日の子だ。昨日の?刀の子だ!なんでここに?寝てる?寝顔可愛い。どうやって入ってきたんだろう。睫毛長い。二度寝するつもりだったのに。無理。手が握られている。何がどうして?しかも両手?パトラッシュとネロのポーズみたいになってる!どんな状況?ラブコメですか?寝顔可愛い。
頭の中に浮かんでは消える自問自答と煩悩。
状況を理解したら、いやいやいやなにこれむりむりむり!という言葉の群れが頭の中に氾濫した。

脳が考えることを拒否するとは、こういうことか。
落ち着け、自分。やはり学ランごと寝ているし、相手はおそらく未成年だ。過ちは…起きていない。よかった。大丈夫だ。健全な添い寝オブ添い寝。なんの問題もない!

さあ、とりあえず、距離を取ろう。とっ散らかった頭でも、これが適正距離ではないことはなんとか判断することができた。

すう、すう、と規則正しい寝息を立てている男の子を前に、すすすと後方にずり下がる。距離を取った上で、そっと手を引き抜きにかかる。まず右手。息を詰めて、集中…集中…やわく絡んだ指の隙間、手のひらを浮かせて、そぅっと、あとは指先を抜き取れば…というところであっけなく男の子が瞼を開いた。

「っ!」
「………。」

目線がしっかりと合って、私は絶望に頭がぶん殴られたように真っ白になった。

男の子は無感情に、こちらをぼんやりと見ている。
「…ぅわ、あの、これは!」
これは?いやいや寝るときは一人でしたけど!なぜ私が焦っているのか、わからないけれど焦る。
イケメンの寝起きって、こんなに可愛いものなのか!ずるい!誰か説明してほしい!

じろり、とても不機嫌な様子で睨まれる。怖い。鋭い視線に、さっきまでの可愛さが霧散した。
「…うるさい。寝ろ。」
「へええ!?」
今この子寝ろって言った?寝れませんけど!という間に男の子は再び目を閉じてしまう。

やっぱり不良だからこういうことは朝飯前なのか?本当に朝飯前だね!と脳が空回りをやめない。

引き抜きかけた手は無情にもしっかり握り直されている。

…もうだめだ。もう十分頑張ったよね。すっかり疲れてしまった。ふと時計をみるとまだ朝の七時だ。薄ぼんやりと、ああ四時間しか寝てない、と思ったらどっとくたびれた。

午後には昨日注文した荷物も届くことだろう。
「もう、知らないよ。」
「………。」
やはり反応がない。猫みたいな子だな、と思って、意識を手放した。




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