ひとりごと

日本刀って意外と重い。

「ごめんね、ちょっと血がついちゃった。」上着で包んで、さっきの男の子が置いてった刀をどうにか持ち帰った。持ち帰ってよかったんだよね!?もう家に着いちゃったけど!

夜風に頭は冷えた。落ち着いて思い返しても、まったく現実味のない出来事だった。
ただずっしりと重たい刀が、私の手にあって、それに着いた土埃や血糊が生々しく、あの男の子の足取りがフラッシュバックした。

鬼のような、蛇のような、生き物。あれは、私に向かってきていた。あの子はどうして、私を守ってくれたのだろう?

ぱちりと電気をつけて、部屋に上がる。
ひと目で見渡せるワンルームは、朝となんら変わりない。脱ぎっぱなしのパジャマを見て、帰ってきたんだと安心する。

クローゼットの傍にそっと刀を立てかけて洗面所へ。家に着いたら手洗いうがい。これは体調管理の基本中の基本だ。
「………。…ひゃっ!」
ふと見た鏡に血濡れの自分が写っていて驚く。血を吸った髪が頬にべっとりと張り付いていて、完全にホラーだ。やばい。帰り道に誰ともすれ違わなかった奇跡にひとまず感謝した。
このまま先にお風呂を済ませてしまおう。

服を脱ぎながら、「ちょっと待っててね。」と言ってしまって、あれ、なんで刀に話しかけてるんだろうと思った。

一人暮らしは思ったことがなんでも声に出てしまう。





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