後方支援もお手の物


かちゃり…。

開かれた玄関のドア、その幅はわずか5cm。
開けた先には想像どおり、嫌というほど見知った顔があって、大倶利伽羅はため息を吐いた。
隠すことない剥き出しの警戒心が金の瞳をぎらりと光らせている。

「何の用だ。」

自分ちのような言い方をする大倶利伽羅に、光忠は上手くいってるみたいだね!と笑った。佐川男子もびっくりの、爽やかを絵に描いたような笑顔だ。なぜか宅配業者と同じ格好をしている。審神者は今回の任務に命懸けなので、金に糸目はつけない覚悟が垣間見える。歌仙に強いられて読んだ川柳の、『博多さま、掘っててよかった、大阪城』も光るというものだ。

「伽羅ちゃんにお届けもの、だよ!」
「……チッ。」

態度が悪くなるのも仕方ない。だって光忠の背中には大小二つの白い影。目はらんらんと光っており、野次馬感丸出しである。ため息を飲みながら、ひと抱えもあるダンボール箱を受け取る。

「頑張れよ!伽羅!」
「俺たちが付いてるからな、大船に乗ったつもりで任せておけ!」

光忠の両脇から顔をのぞかせた鶴丸と太鼓鐘にばちこーん!と片目を瞑られて、言葉を失う。カンストしてもうどれくらい経つか。こいつらは暇を持て余しすぎだ。

悪態をつきながらも、大倶利伽羅は生まれて初めての恋慕にどうしたものかと戸惑っているのも事実である。
こいつらは他人と打ち解けることに関しては凡人の並をゆうに超える手練れである。不本意ながら頼るしかなさそうだ。

だが、頼りにしている。なんて口が裂けても言えない。そんな言葉を溢そうものなら、どんちゃん騒ぎされるのが目に見えている。

しばしの間。

なんと言うべきか考え出したらなんだか頬がむず痒くなって、大倶利伽羅はぷい、と目をそらした。眉間がきゅっと寄る。知る人ぞ知る、大倶利伽羅の照れ隠しの仕草である。

「……そうか。…勝手にしろ。」

ぶっきらぼうに言い放たれた言葉に、三振りの口があんぐりと開く。てっきり帰れと突っぱねられると踏んでいた旧知の仲間たちは、完全に不意を突かれた。

訪れた沈黙と、返された間抜け面に居たたまれなくなって、大倶利伽羅はぱたんとドアを閉めた。がちゃりと鍵も忘れない。ついでにチェーンもかけた。誰とは言わないが国永などは平気で鍵くらい開けてくるだろうからな。

玄関前に取り残された三振り。
ちゅぴぴ、と鳴いた雀に気を取り直した鶴丸が信じられんといった表情で光忠と太鼓鐘に向かいあう。

「おい、今の見たか?」
「……色恋沙汰は人を変える、ってーのはほんとなんだな!」
「伽羅ちゃん、本気なんだね…!!」

あれがデレに分類されるとは、普段どんだけツンなんだ大倶利伽羅。それを見逃さない彼らの絆たるや。
俄然湧いてくるやる気に、三振りの拳は強く強く握られている。

そこへ、名前の部屋の隣。ちょうど角部屋になっているそこから引っ越し業者が出てきて一礼する。

「荷物の搬入、完了しました!」
「ああ。ありがとな。」

そう。当然のごとく彼らが借りた部屋は名前のすぐ隣。はじめこそ、絶対嫌がられるだろうな、と考えていたが、予想を裏切る大倶利伽羅の協力要請?も得られたことだし、これで心置きなくサポートできるというもの。もっとも、たとえ嫌がられたとて、隣に住むのを!やめない!のだけれど。

「っしゃー!やるか!荷解き!」
「夕ごはんは引っ越し蕎麦、食べなきゃね!」
「おっ、いいな!それじゃあ、ちゃっちゃと終わらせるとするか。」

何を隠そう、彼らはめちゃくちゃ楽しんでいる。




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