ロスト

※ほんのりとした死ネタ
流血表現がありますので苦手な方は回れ右




















鼻をついたのは、強烈な鉄の匂い。
目の前に広がる海に伸ばした手は、赤黒く汚れた。
きっとこの色を見た瞬間から、私の心は死んでしまったのだろう。










小さな部屋の小さな椅子を眺め、ただ日々が過ぎていく。
ほんの数日前までその椅子に座っていた持ち主をひとりぽつりと待つ。


ねぇ、わたしこのままじゃしんじゃうよ
ひとりでなんて、いきられないよ


このままあなたが帰ってこないのではないか。このままずっとひとりなのではないか。
あなたのいない未来を何度描いて、何度消しただろうか。

それでも、忘れることなんて、できやしないのだ。


だから、きょうもわたしはまちつづける










いつしか辺りは埃を被り始め、汚した手はその色を残したまますっかり乾いている。
凄まじい臭いを放つ肉塊にも、もうなにも感じなくなってしまった。


ねぇ、いつになったらかえってきてくれるの?
僕の帰る場所はここしかないからって、いってたじゃない


涙なんて、とうの昔に枯れてしまった。
ごめんね、大好きなあなたのことなのに、もう涙を流すこともできないなんて。


ごめんなさい、ごめんなさい、呟く言葉は、もう誰にも届かない。





かつて、診療所であったこの建物
いまはもうただの廃墟となってしまったこの場所

本当はどこかでわかっているのに、私はここを離れられない。
あの日、この場所を離れるべきではなかった。それだけが悔やまれて、まるでこの場所にひとり居続けることでその罪を贖うように、この場所から動けない。





ロスト
(ここはファーム 君と過ごした私の家)
(君のいない街の中 私は今日も二度と帰らない君を待つ)






鈴村健一さんの同題曲からいろいろ拝借しました。

行く宛なしでファーム滞在していてシャンタオに片想いな女の子の不幸せなおはなし
ちょっとおつかい頼まれて留守にした夜にPSP追加エンドの悲劇でみんな死んでしまったという妄想
その後大きいシャンタオがお迎えにきてくれるおはなしとか書きたい

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