『なっ!!』

主さんの言葉にハーンは勢い良く椅子から立ち上がった。

それにワシは驚いてハーンを見る。

『俺が、俺がそんな王族だかなんだかよくわかんねえ理由でコイツから離れるとかあるわけないだろ!』

不機嫌そうにそう言い放つとハーンはドカリと乱暴に椅子に座り直した。

『落ち着け、ハーン。まったく…お主は変な所で熱くなるからの〜ι』

リグアはため息をついてハーンにそう言い、主さんの方を向いた。

『儂もハーンと同じじゃ。そんなくだらん理由でコヤツから離れたりはせんよ。』

苦笑しながらそうリグアは言った。

ハーン…リグア…

く〜、不覚にも2人の言葉にウルウルしちゃったじゃないか。

目を少し潤ませながら誤魔化すように天井を見る。


クイックイッ

天井を見ていたら不意に服の裾を誰かに引かれた。

『お母さん…。』

その声に天井に向けていた目線を隣に座るカゲに向ける。

見るとカゲはワシの服を強く握り締め、真剣な眼差しでワシを見ていた。

『私はお母さんが誰であろうと側を離れたりしないよ。』


…っ!!

か、カゲ〜っ!

カゲの言葉に感動して震えていると。

『ハルン、お前はどうなんだ?』

未だに眉間に皺を寄せて不機嫌そうにしているハーンがハルンに向かってそう言葉をはいた。

『決まっている。フーンは嫁だ、離れる訳がない。』

そうキッパリとハルンは腕を組んで言い放った。

ハルン…


……両手を上げて喜べないのは何故だろ。

乾いた笑みを浮かべてハルンを見つめていると今まで黙って見ていた主さんが息を吐いた。

『…いい子達を連れてるね、風雨さん。』

そう笑って主さんが言う。

その言葉にワシは照れながらも頷いた。




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