『よっと!』

目を月から反らすと木から飛び降りてシグアの隣に歩み寄る。

シグアの隣に立つとまた月に目を向けた。


『…俺らってさ、二人で一人じゃんか。って言ってもそこまで影狼一族の事知らないか…。』

う〜んう〜んと考えながら何かを話そうとしているロウにシグアは苦笑をし、仕方ないと思いながらも話を聞く事にした。


『昔から影狼一族には色んな依頼がきてたんだ。…で、依頼に合わせて性別も性格も変える必要があったんだ…。だから俺ら一族はそれに合った進化をしてこんな体になった……。カゲは女、ロウは男。性格も全然違う。それは辛くもあったけど幸せだったんだ…。昔から一人になることがなかったから…。でもさ、でもさ、幸せになるにはどうしてもどちらかがソレを諦めなきゃいけないって事に気づいちまったんだ。』


シグアは黙って話を聞いている。

『カゲはソレにまだ気付いてない。二人で幸せになれるって思ってる。でも現実はそんなに甘くない……だから、だから…。』


『…溜め込んどるようじゃの〜。』

今まで黙っていたシグアが口を開いてボソリと呟く。

『…………』

シグアの言葉にロウは無言で月を見ている。


『……まだまだお主は子供じゃ。勿論フーン達もじゃがな。……じゃから考え過ぎれば潰れてしまうぞ?』


月から地面にいつの間にか目線を落としているロウを見て、シグアは笑った。

『子供には考え過ぎは心にも体にも毒になる。もし考えに煮詰まったら笑ってみよ。それでもダメなら星を見て泣けば良い。結構楽になるぞ?』

そう言いロウの頭を撫でやればロウは驚いた様に私を見てきた。

じゃが直ぐに目線を地面に戻してしまった。


撫でていた手で優しく今度はポンポンと叩き。

『……何があったかは聞かぬが…。今は私達がおる。何か言いたくなったり煮詰まったりしたら遠慮せず言うがよい。』

シグアは日頃からは考えられないほどの優しい声でそう言うとロウは小さくコクリと頷いた。

『……お主は………ロウになるとカゲの面影がなくなるんじゃな〜。』

『………まあな。』

『…カゲは?』

『大丈夫……寝てる。』

『……そうか。』

『カゲには今日のは言わないでくれよ。』

『ああ、わかった。』




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