後輩たちの恋愛事情(灯里様/恋部隊) 『あらあらあら……』 目の前で繰り広げられている光景を一人の女性が面白そうに眺めている。 女性――ナズナの視線の先には不機嫌そうな顔をした後輩とへらりと笑う金髪の男。キクチとザウスである。 ザウスは不機嫌そうなキクチに何やら話しかけているが、その度に彼女の表情が険しくなっていく。ザウスがキクチを好きだということは、よくよく観察してみれば分かる。 キクチ本人はまったくこれっぽっちも気づいていないが、見る者が見れば分かる。 もっとも、キクチの場合、本人が鈍い上にラルクしか目に入っていないからだろうが。 「冗談ではありません。私はすこぶる本気です。いいですね。絶対について来ないでください。ついて来たら貴方とは一切喋りませんから。では」 すると、遂に痺れを切らしたキクチが立ち上がり、ザウス一人を残して部屋を後にする。 残されたのは大量の書類とぽかんと口を開けたまま固まっているザウスだけ。 『残念だけど、前途多難のようね。でも面白いからいいわ♪ キクちゃんも大変ね』 ザウスはナズナの存在に気づいていないのだろう。彼の背中からは隠しきれない哀愁が漂っている。ナズナは気配を消し、そっと部屋を出た。楽しげに鼻歌を歌いながら。 End |