まだ眠らない


テスト最終日に仁王の家に泊まることになった。先月発売された新作のゲームを二人でやろうという話になって、学校が終わるなり仁王宅へ直行するという計画を立てた。ブン太は母親に今夜仁王の家に泊まる旨を連絡して、普段は使わない方面の電車に仁王と二人で乗り込む。ちょっぴりとした非日常に、ブン太の胸は躍っていた。いつもと違う外の景色を眺めながら他愛のない話をしているうちに仁王の最寄駅に到着する。そこから5分ほど歩くとすぐに仁王の家に着いた。仁王母への挨拶もそこそこに、丸井は仁王の部屋に乗り込む。
相変わらず物の少ない質素な部屋だ。テレビとゲームの電源を入れる仁王の動作は相変わら素早かった。

夕飯を跨いで、ゲームは日付が変わる手前まで白熱した。いい加減に二人とも寝なさい、と仁王母にゲーム機を取り上げられてしまい、仕方なく二人はしぶしぶ寝ることにした。
おやすみブンちゃん、と仁王が部屋の電気を消して、部屋はあっという間に闇に包まれた。

「……」
薄暗い室内でブン太は何度も寝返りをうつ。時刻は既に深夜二時をまわっているが、何故か妙に目が冴えて眠れない。明日は朝練がないので別段夜更かししても支障はないが、無音の室内で永遠に続くような孤独を感じるのは何となく嫌だった。
「ブンちゃん、眠れんの?」
その静寂を打ち消したのは仁王だった。丸井はもう一度寝返りをうってから、うん、と返事をした。
仁王が寝ているはベッドの上で、ブン太は床に布団を敷いて横になっている。仁王が上から小さく手招きをして、こっちきんしゃい、と言うのが聞こえた。ブン太は布団から抜け出して、仁王の布団に潜り込んだ。
「ブンちゃんは俺が隣におらんと眠れんの?」
「うるさい」
布団の中で手探りに仁王の手を見つけて、ブン太はそのまま握り込む。仁王の手はブン太よりも一回り大きくて、それがなんだか気に食わない。
「手、はなすなよ」
「わかっとうよ」
少し眠ってしまうのが惜しかったけれど、ブン太はそのまま眠りに落ちた。

「おやすみ、」

手のぬくもりを、ずっと感じていたい。



End.
2015/02/02
title by ネイビー
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