どうか綺麗に終わらせてくれ


最初から終わっている恋。始まることのない恋。
こんなどうしようもない苦しい気持ちを、仁王は知りたくなんてなかった。


「どうして私を避けるんですか、仁王くん」

どうしてもなにも、一緒にいたくないからだ。それ以上でも、それ以下でもない。
「別に、さけとらんし」
「どうして目を合わせれくれないんですか」
「めんどくさい女みたいになっとるぜよ柳生」
「私は仁王くんにそんな態度を取られる心当たりがないんです」
言えるわけが無いだろう。仁王が柳生に恋心を抱いているなんて、そんなこと口が裂けても言えないに決まっている。男が男を好きになるなんていうのは普通に考えて気持ち悪いことだ。滑稽なことだ。人生を真っ当に生きているの柳生に、この気持ちが受け入れられるわけがないのだ。
だから、仁王は傷付く前にあきらめる。

「勘違いしとるようやけど、俺は馴れ合う関係は好かん。柳生は部活ではパートナーやけど、プライベートは別じゃ」
「…そうですか」

そう、これでいい。これでいいんだ。
こうして突き放せば柳生も愛想を尽かして離れていくはずだ。心臓をちくちくと刺す後悔の念も、すぐに消えてなくなるだろう。
こみあげてくる何かを必死に抑えながら、仁王は柳生に背を向ける。

「仁王くんはこういう嘘をつくの、本当に下手ですよね」

「……どういう意味じゃ?」

振り返ってじろりと柳生の目を見れば、困ったような表情をされる。困っているのはこっちの方だ。今も内心を悟られまいかと、ビクビクしているというのに。

「好きなんでしょう?」

「!」

ほら、図星。

呆然とする仁王に柳生は微笑みかけて、私もあなたが好きです、と。
「あなたの代わりに、私が言ってあげます」
「好きですよ、仁王くん」

こわくて踏み出せなかった一歩を手を引かれる形で、恋の始まる音が聞こえたような、仁王はそんな気がした。


End.
2015/02/02
title by ネイビー
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