愛されたかったのかもしれない


遠くの方を見ていた。中庭を挟んで向こう側の校舎。廊下側の窓が開いていて、アイツの姿が見えた。
(あ、まただ)
仁王の視線の先には柳生がいる。真剣に授業を聞いている柳生は、後方斜め後ろにいる仁王の視線に気付いていないようだ。仁王はシャープペンシルをくるくると回しながらノートに何が落書きをしていた。
『いま何の授業してんの?』
机の下でスマートフォンをいじりながらブン太は仁王にLINEを飛ばす。しばらくすると控えめにブン太のスマートフォンのバイブが鳴った。
『数Bじゃよ』
『どうせおまえ授業きいてねーだろぃ?相手しろよ』
『しょうがないのう…ほんにブンちゃんはかまってちゃんやね』
仁王の視線が柳生の背中から机の下のスマートフォンに移る。そう、それでいい。それでいいのだ。
『なぁ、今日の放課後ひま?』
何気なさを装いながらブン太が問う。しばらくの間をおいて、仁王から返事が来る。
『放課後は図書室に行く予定があるんじゃ、』
『そっか、』
そのままLINEは途切れた。
仁王が自ら図書室になんて行く訳が無いだろうに。どうせ参考書を借りに来た柳生を待つつもりなのだ。

「かなわねぇな、ほんと」

ブン太は風船ガムを思い切り膨らませて、それが弾ける様をまるで他人事のように眺めていた。


End.
2015/03/15
title by ネイビー
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