■ 毛布の中には寂しさがあった

大学生パロ

 いつまでも一緒いれるはずがない、そんなことは言われなくてもわかってた。
 十年以上隣にいて当たり前だった真田が、ドイツに行ってしまうらしい。まるで手塚のあとを追うように。プロのテニスプレーヤーとして生計をたてるならば日本国内で燻っているわけにもいかないと。幸村自身真田の結論に異論はなかったし、むしろ応援したいと思っている。しかしそれは“幼馴染みの”立場での意見だ。恋人としては、離れ離れになるなんて耐えられない。
 何度も何度も、行かないでくれと言いそうになるのを幸村は必死に堪えていた。真田が念願のドイツ留学に行く。足を引っ張るわけにはいかないのだ。幸村が笑顔で送り出すことが、真田のためなのだ。
 真田が日本を経つまであと三日。今週末の早朝の便で出発するらしい。
 会いたい気持ちもある。でも今会えば平常心が保てないだろう。真田も準備に追われているだろうし、これでいいのだ。きっと時間が幸村の空白感をまぎらわせてくれる。


「幸村」

 ふいに聞こえた声に、幸村は思わず顔をあげた。
 今幸村は部屋にいて、突然の真田の訪問に一瞬何が起こっているのかわからなかった。きっと母親が部屋に通したのだろう。
「さなだ……」
「最近連絡をしても返事がこなかったのでな、心配していたんだぞ」
「…ああ、少し体調が優れなくてね」
 なるべく顔を合わせないように幸村は淡々と答える。声は、震えていないだろうか。
「……何故俺のことを避けるんだ?」
「避けてなんかいないよ」
「今も俺の方を見ようともしないではないか」
「……」
「幸村、」
「じゃあ……」
 幸村は拳を握り締めた。もうすぐそこまで涙がせりあがってきている。
「じゃあ真田は俺が行くなっていったらドイツに行くのをやめてくれるの?」
 語尾が震えて、ぽろりと涙の粒が頬を伝う。
「真田が夢を叶えるためにドイツへ行くのに、そんなこと言えるはずないだろ!」

 もう顔を見られたくなくて、幸村はベッドの上で毛布を頭からかぶった。
「……幸村、」
 毛布の上から真田が抱き締めてくる。
「すまない、幸村」

 溢れた涙が止まることはなくて、いつまでもシーツを濡らし続けた。



End.
2014/4/24
title by 休憩

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