■ あんなにほしかった君は今、
気が付いたときにはもうすべてが手遅れだった。丸井の口から幸村との仲をカミングアウトされたとき、一瞬丸井が何を言っているのか理解ができなかった。
最近妙に仲が良いな、と薄々気付いてはいたのだ。ただ、頭のなかでその事実を信じたくない自分がいただけで。
「おーい仁王、俺の話きいてる?」
幸せそうに幸村の話をする丸井の顔を見ていると心臓を鷲掴みにされたみたいに胸が苦しくなる。仁王にはブン太を抱き締めることもキスをすることもできない。その権利を有しているのはすべて幸村だ。
ブン太はもう幸村のことしか見えていない。仁王なんて、視界には入っていないのだ。
「のうブンちゃん」
「なんだよぃ」
「ブンちゃんは、どれぐらい幸村が好きなんじゃ?」
丸井は目をぱちくりと瞬かせて、仁王を見つめる。
「どれぐらいってどういうこと?」
「そうじゃな……じゃあ幸村は、俺の何人分?」
丸井はさらに驚いたように目を見開いた。
仁王は答えを聞きたいような、聞きたくないような、妙な気持ちになる。
いっそのこと、こんなこと最初から聞かなければよかった。
仁王がほんのすこし後悔したところで、丸井が顔をあげた。
「……そんなの決めれねーよ。幸村くんも大切だけど、おまえと比べるとかできねーし」
仁王も俺の特別だかんな!と丸井は恥ずかしそうにはにかむ。
「……そーか」
無意識とはいえこんなことを言われてしまっては折角諦めようと思っていた心が逆方向を向いてしまう。
どうしようもなくなるじゃないか。
何度も好きだと告げてしまいそうになるのを必死に押し殺して、仁王は丸井の手を握った。
End.
title by 輝く空に向日葵の愛を
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