■ 君は微熱に気がつかない

 仁王と事に及ぶのはこれがはじめてではなかった。
 下唇を噛みしめて、必死に嬌声を押し殺して、快感に耐える。仁王に暴かれた身体は僅かな刺激でも快楽を拾い上げてしまう。くぐもった声が漏れる度に仁王の指
先がいたずらにブン太の肌をなで上げた。
「……っ、ん」
 何度も何度も唇を重ねて、底の知れない快楽に溺れる。仁王は手慣れた様子でブン太を抱いて、ブン太を自分の色で染めあげていく。
 最初こそ余裕を装っていた仁王も限界が近いらしく、先ほどから呼吸と呼吸の間隔が短い。
 身体を重ねているときは、お互いにあまり会話をしない。それはあらかじめ決めていたルールでもなんでもなくて、ただ話す余裕もないくらいにこの行為に夢中になっているということだ。
 乾いた唇が名前を紡ぐ。ブン太はそれに答える。汗の粒が光った。
 鍵は一応閉めているけれど、あまり大きな声や音を出してしまうと外に聞こえてしまうだろう。遠慮気味に簡易ベットのスプリングがぎしりと軋んだ。
 そもそも、保健室でやろうと言い出したのは仁王の方だった。ご丁寧にも保健の先生が出張でいない日を調べあげて、いつのまにか鍵まで入手してきた。
 部室の堅い床の上よりも保健室の布団の上の方がいいに決まっている。普段病人が寝ているベットの上でセックスをするなんてイケナイコトをしている感じが
さらにまして興奮材料にはうってつけだ。
「仁王、」
「……なんじゃ?」
 ブン太はブン太同様に汗ばんだ仁王の肌に額をあてて、小さく赤い痕をつける。
「こら、ブンちゃん」
「いつもの、おかえしだよぃ」
 首もとの消えかけの赤い斑点を見せつけながら、ブン太は仁王を上目遣いに見る。仁王は一瞬眉根を寄せて、ブン太にされるがままだった。
 ブン太は気の済むまでいくつもの痕を残した。さながら花が散るような、美しいものだと思った。



End.
title by 休憩

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