四天王と俺 | ナノ


四天王の卒業

 今日も今日とて、俺はこの四人組に好き放題されている。

「んぶ、ン、グッ……!」

 ジュブジュブと聞きたくもない卑猥な音が、俺の口から今現在発生している。それもその筈、一宮京助が俺の口の中にデカい一物を突っ込んでいるから。頭をしっかり押さえ、俺の口の中を好き勝手犯す。そしてそのまま俺の口に出すもんだから、俺は当然の如くえずく。
 しかし何を思ったのか、苦しくて咳き込む俺の顔を無理やり上げさせた一宮京助は、そのまま自分の精液が溜まる俺の口に唇を重ねた。ご丁寧に舌まで入れて。おいおい、自分の精液ごとキスするとか頭可笑しいだろ。しかも深いやつ。まあ頭が可笑しい云々の話は今に始まった事ではないから今更だけど。

「京助ってホントあれだな。有久ちゃんとのキス好きだよな。他のヤツらヤッてる時はあんま見たことなかったのによ」
「しかも体液飲んだりするのも、有久が初めてじゃない?まあ元々その気がないと出来ないよね」
「まあ本人うっとりした顔で啜ってるしぃ、いいんじゃねぇ?それより俺のも銜えてー有久ぁ」
「じゃあ俺は後ろのお口もーらお。物欲しそうにひくつかせてるし」
「ぶはは!エロ親父かオメーは!」

 おーおー楽しそうで何よりですね四人とも。犯される俺はもう力尽きそうだけどな!でも今日の俺はとても寛大だ。漸くキスから解放された俺は、前のチャックを下ろし準備万端に俺をカムカムする伊角龍臣の股間の間に移動した。
 そして少し躊躇った後、そのいきり立つ一物を口に含んだ。

「っ、あれぇ?どしたの、今日はやけに素直じゃん」
「て言うか最近ずぅっとじゃない?」
「まあ、いいけどぉ。もっと強く吸って?」
「ン……」

 そうだとも。どんな要望がこようとも、今週の俺は違うのだ。だって今週、今週で最後なんだ。え?今週末には何があるって?
 そりゃ勿論――卒業式だ。三年生の。
 いやいや、実に長かった。
 と言うか、俺は言いたい。どうして俺だけがあのイカレた先輩達の世話をあれからずっとしていたのかと。あの日手酷くしつこく死にたくなる位犯された次の日、俺は茫然自失のまま学校へ行った。身体はだるいし手首には手錠の痕もあるし、身体中に鬱血の痕がついているから、本当は学校なんて行きたくない。けど皆勤賞があるから!それだけは外せないんだ!
 でも一日じゃやはり感覚は消えなくて、後ろから友人に肩を叩かれただけで飛び上がってしまう程俺は怯えていた。そりゃそうだ。誰だって強姦されたらこうなる。しかも男にだぞ。有り得ないだろ。もう会うことが無いにしろ、やつらは俺に大きな傷跡を残していった。ああ、思い出したくないけど勝手に頭に流れてくる!どうしよ!と言う悶々した思いを抱えながら迎えた放課後、此処で俺はまた選択を誤るのだった。





「昨日はありがとな鈴木。それでまた悪いんだが、これ持ってってくれないか?」
「え、いや、ちょっと俺」
「頼むな!先生これから会議なんだ!」

 先生は俺に何か恨みでもあるのだろうか。そして断れない俺って。もう少し頑張ろうぜ。昨日と同じ場所へ教材を頼まれた俺は、やはり頼まれた以上はと、嫌々ではあるが別館に足を向けた。て言うか、昨日の教材、俺が色々グチャグチャになって呆けている時に気付いたけど綺麗に無くなっていた。どうやら誰かが片してくれたらしい。先生からお礼を言われたと言うことはちゃんと資料室に持ってってくれたんだろう。どうしてそんな事は出来るのに、人として大事な心は歪んでしまったのだろう、俺には理解できない。
 まあとにかくアレだ。奥の部屋に行かなきゃいいんだ。今日ちゃんと聞いたぞ。あそこが四天王の住処だと。皆知っているとか何とか。これまでの自分を悔やんでも仕方ないが、もっとちゃんと聞いとけば良かったな。つか昨日俺がひたすら犯されている時、一人訊ねて来たし。しかもその女の子が、どうやらアミダで決まった子らしいのだが、やつらその子を追い返しよった。こんな悪の手に女の子を放って置けないとか、もう俺はそんなことは考えない。だから頼むから俺と交代してくれ!だが、そんな俺の願いも虚しく扉は閉じられ、俺はまた密かに泣いた。まあ一つ救いなのはその子に顔を見られなかった事だけだ。いやでも、思い切り男の子である証は見られたからやっぱ泣きたい。
 とにかく、さっさと資料室にこれを置きに行けばミッションコンプリートだ。一刻の猶予もない。ヤツらの今日の相手が来る前に、行動を起こすんだ。そーっとそーっと二階に上がった俺は、これまた静かに扉を開け資料室へと入る。昨日も思ったがやつらの感性はヤバい。だって見てもないのに扉の傍に立つ俺に気付くとか、何処の野生動物だよ。でも、今日は上手くいった。静かに入ったお蔭でバレていないぞ。

「ふぅ、良かった!」
「此処って酷い有り様じゃね?昨日テキトーに置いたのに教師のヤツらも何も言わねぇし」
「……」
「あはは、そうですね」

 え?あれ?俺今誰と話してるんだ?つか昨日嫌と言う程聞いた声な気がする。あれー気のせいかな。気のせいだよね!
 だが悪魔共には、俺の現実逃避と言う名のスルー技は通用せず、俺は無遠慮に腕を掴まれ、そのまま後ろから前の机に倒された。背中に感じる人の重みに、俺は嫌な予感しかしない。つか腕!腕痛い!

「な、なんでアンタらが……!」
「あー?何かまたコソコソ入って来る気配あったからよ、見回り的な?ギャハハ!」
「そ、そうですか。でもこの別館に入って来る人が居る度にそれじゃあ疲れますよね。ホント俺だって分かったんですからもう離してもらえますかねマジで」
「いやいや。センコーとの違い位分かるっしょ」

 いや分かんねぇよ。つか俺の言葉軽く無視してんじゃねぇよ。何とか退いてもらおうと身を捩るが、昨日以上に不利な体勢でほぼ抵抗するだけ体力の無駄な気がする。まだ救いなのが、二人しか居ないと言うところだけ。しかも一人はアレだ、昨日俺が散々犯されている時に全く起きなかった謎系一宮京助だ。今この場で危険なのは昨日俺を散々泣かした厚本跳二だけ。コイツさえどうにか撒ければ、何とかなるかもしれない。などと俺が思っていたのが馬鹿だったと言うのは、この数分後に分かる。相手は四天王。それ以外の何者でもないと言うことに気付くのはいきなりズボンとパンツを一緒に下ろされた時だった。

「ギャアアァ!ちょ!何してッ……!」
「なぁケツの穴へーき?昨日がハジメテだったっしょ。まあ大分慣らしてやったから切れてないと思ったけど」
「平気です平気です。大丈夫なんでマジで退いて下さい!つか腕痛いから!マジ折れる!」
「腹とかもくださなかったかー?綺麗に掻き出してやったから平気だったろ?」
「っ、ちょ、そう言うこと、言うなよ!」

 もう思い出さないようにしてんのに、コイツ態々耳元でそんな事を言ってくる。まるで思い出させるようなその言い方により、俺の脳裏にまた昨日の光景が浮かぶ。ゾクリと、肌が粟立つのを感じた。

「っ、もうやめろって!俺はただ教材を置きに来ただけで……!」
「ぶはは!昨日あんなことされたのにノコノコこんな所まで何の用かと思ったけど、有久ちゃんよく使われてんね」
「ぬぬっ……」

 それに関しては返す言葉もない。けど実はもう一つ安心要素が存在するのだ。それを知ったのは昨日だけど、その噂が本当なら、俺は無事に帰れるはずだ。

「まあいいや。どれどれー、俺が確かめてやるよ」
「ひっ、やめろ!触るな!」

 だが俺の希望を打ち砕くかのように、厚本跳二はそのまま俺のケツの穴に触れて来た。予期せぬ展開に思わず青褪める。待て待て待て!話が違うぞ!

「ま、待てよ!俺はもう昨日アンタらとその、ヤったんだし、もういいんだろ!?」
「はあ?」
「き、聞いたんだ!一度相手にした子はもう抱かないって!俺昨日ヤったんだからいいだろ!?」

 そう、聞いた噂とはまさに今言った通り。一度相手にした子は抱かないと言う四天王のルールだ。だとしたら今俺をヤろうとしてること自体もうルール違反だ。約束破るの良くないぞ!

「まあ確かに今下に居るけどな。今日選ばれた子」
「なんと!じゃあ早く行かないと!きっとその子が待ちくたびれてますよ先輩!」
「龍臣と水希で可愛がってるだろうな」
「じゃあ後れをとらないように先輩も出陣しないとッ、あ、だっ……いぃ!」

 本当に指の先っちょだけ、穴の中に入れられた。入ってるのか入ってないのか微妙なくらいちょっと。その悍ましい感覚に思わず変な声が出てしまう。

「俺さ、生意気な後輩を泣かして服従させるのが好きなんだわ」
「ッ、は?」
「でも毎回相手替えるとさ、それも中々出来ないじゃん?自分好みにはいつまで経っても育たない訳よ」

 ヤバい。今この人がどんな顔して俺を見下ろしているのか、見えなくても分かる気がする。さぞ、悪魔の様な顔で笑っていらっしゃることでしょうね。つか噂当てになんねぇな!!

「だからさ、ちょっと実験。有久ちゃん、今日も俺とヤろ?」
「可愛くねぇよそんな頼まれ方されてもッ、うあ!?」
「ほーら。またそんな口きく。昨日教えたろ?ご主人様に対する態度をよ」
「ひっや、だ……抜けよ、指ぃ……」
「指の一本でピィピィうるせぇな。ああ、これでも銜えさすか」
「うわッ!なにすっ、んん!?」

 急に足を持ち上げられ驚いたが、もっと驚いたのは足から抜き取った俺のパンツを俺の口突っ込んできたことの方が驚きだ。自分のパンツ銜えてケツの穴に指入れられてるなんて、どこの変態だよ俺は。あまりの屈辱から思わず涙が零れる。その涙を、上から圧し掛かる厚本跳二がベロリと舐めとって来た。ヤバい、鳥肌がヤバい。
 だが俺は此処で失念していた。この男だけじゃなかったんだ。悪魔は。そう、結局俺の求める展開などそう簡単に起きてはくれないのだ。

「ッ、ン!?む、んん!!」
「あ?何してんの京助」
「……」
「んんっ、ぅ……ッ」

 ゴソゴソと机の下に潜ったその人は、先程から居たのも忘れていたもう一人の四天王、一宮京助だ。デカい身体を小さくさせてまで、窮屈な机の下に何しようと言うのか、それは突如駆け抜けた快楽によって理解させられた。
 この人、俺のチンコ銜えてる。マジかよ、何でだよ。アンタそう言うの興味ないんじゃなかったのかよ。

「珍しいじゃん、フェラしてあげるなんて。良かったな有久ちゃん。一番気難しい京助が此処までしてくれるなんて滅多にないぞ」

 何それ。俺はお礼でも言えばいいのか。よし、ありがとう。なんて言うかボケ!いいわ気に入られなくても!寧ろ関心を抱かないでくれた方がまだ嬉しいんだけど。
 そんな俺の願いも虚しく、俺はこの後またこの人達の相手をさせられることになる。それももうしつこい位に。時間感覚さえ麻痺するぐらい二人に犯された俺の元に、更なる絶望がやって来たのは、外が暗くなってからだった。

「っ、有久ちゃーん?あれ?飛んでね?」
「有久、起きて。挿入れるよ?」
「んぅ……っ」
「ちょっとちょっと。こんな所に居た訳?」
「通りで帰って来ない筈だよ、あれ?こいつ昨日の子じゃん」
「おー。珍しく京助もノリノリだし、結構調教しがいがあるんだよ有久ちゃん。泣き顔も声も結構好み」
「へえ。お前がそこまで言うって珍しくね?」
「まあ試してみんのも悪くないっしょ。それに昨日ハジメテだったのに、泣きながらイかせてー!ってねだるぐらい淫乱だし?」
「ふーん、そこまで言うなら俺も試してみようかな」
「でももう門閉まるよぉ?」
「じゃあ続きは家でヤろうぜ。今車呼ぶわ」
「ほら京助ストップ。腰振るの一旦やめー」
「……まだヤる」
「車の中でヤればいいだろ。そのまんま移動しろ」
「……うん」
「ッ、ひっ!ぁ、な……っ」

 今までにないぐらいの圧迫感に、飛んでいた俺の意識が一気に戻ってきた。だが起きなきゃ良かったと思うぐらいの絶望を目の当たりにし、視界が眩む。何でいつの間に四天王が揃ってんだ。だが、そんな俺の思考もすぐに快楽によって上塗りされていく。ズンズンと奥を突かれ、悲鳴に似た嬌声が上がる。

「ほらほら有久ちゃん。静かにしねーといくら暗いからってバレるぞ」
「や、ぁ、だっ、て……」
「へえ。いい顔してんねぇ。まあバレたくないなら京助の肩でも噛んでしっかり掴まっとけば?」
「このままじゃ車に着くまで何回もイッちゃうんじゃない?」
「ド淫乱だからなぁ有久ちゃん!ぶはは!」





 所謂アレが駅弁スタイルだと言うのは、後日知った。あの日、大豪邸の伊角邸に連れられた俺は、初日が可愛く思えるぐらい色んな事をさせられた。もう口にもしたくない。でもそのせいで、やつら四天王は事あるごとに俺を呼び出しては犯すようになった。勿論俺の潔白のため言っておくが、一度たりとも自分から出向いたことはない。必ずと言っていい程、毎回誰かしらに捕まり連行されるのだ。
 しかしまあ、ホント。俺の何が気に入ったのか知らないが、あれ以来あまり他の子を呼び出さなくなった。何でも四人口を揃えて言った言葉は『身体の相性』らしい。そしてまあ各々思うところがあるようで、俺みたいな凡人はとても相手にしやすいのだとか。ホントあんまアイツらの話とか聞く気ないから知らないけど。
 でも、今日俺はとても晴れやかだ。とても心穏やかだ。昨日犯されたとは思えないぐらいに身体も軽い。ああ素敵だ。人生がこんなに輝いて見えたのは初めてだ。中二ながら、俺は大分大人になったな。

<卒業生代表――伊角龍臣>
「はい」

 四天王の内一人が壇上に上がり、答辞を読む。マジであの強姦魔が卒業生代表ってどういう事?皆大丈夫か?しかもツラツラと綺麗事を並べ立てやがってあの野郎。隣の女の子なんか、アンタらが卒業してしまうのがイヤなのかめっちゃ泣いてるし。
 そして、眠たい眠たい卒業式が終わった。欠伸的な意味で泣けたわ。そして俺は先輩達の花道を作るために皆が並ぶ列からソッと外れ、一人教室に戻った。出欠も済ましたし、後は友人に任せ、俺は帰ろう。最後の最後であの人達に捕まるのもやだし。まあ、それはないか。
 教室から見える外の様子に、俺は思わず笑みが零れる。そこには沢山の生徒に囲まれる四天王の姿があった。こうしてみると、ただの人気者なのに、何でみんな中身がああなんだろ。気にしても、仕方ないか。
 あの人達と会うことは、恐らくもうないだろう。何でも全寮制の金持ち学校を受験したらしいからな。そこはとても厳しい場所で、外にはそうそう出れないとかなんとか。だから、本当にこれで終わり。
 今俺の中を占める感情の割合は解放感八割、達成感一割と言ったところか。残りの一割はモヤモヤしてるからよく分からない。思わず苦笑を浮かべた俺は、遠くで聞こえる生徒達の声に、ソッと小さく自分の声を乗せた。


「――卒業おめでとうございます」


 さようなら。
 悪魔のような先輩方。
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bkm