四天王と俺 | ナノ


四天王との出会い

 少し過去の話をしようと思う。そう、それは俺が中学二年に上がったばかりの頃の話。
 だがその前に話しておこう。まず俺の学校は私立で共学。人数も多いせいかとても広い学校だった。うん、まあ此処まではいいとしよう。普通の話だ。だがこの学校には一つ問題があった。それは、ある四人組の存在だ。此処の人達は皆彼らをこう呼ぶ。

 ――四天王、と。

 そんな大層な名前が付けられたのには色々な理由があるが、まあ面倒なので説明は省く。容姿、頭脳、運動神経共にずば抜けた彼らは、皆の注目の的。憧れ、恋慕の対象でもある。
 他にも生徒会とか風紀委員とか、皆の注目を集める輩は沢山いるけど、やつらはずば抜けている。性格が。うん、大分イッテると俺は思う。と言うのも、明確な理由があるのだ。そう思わずにはいられない理由が。
 その所以は、これだ。


「ん、ぁ、もぅイヤ、だ…ッ」
「何言ってんの有久ぁ。まだ五回しかイッてないじゃん」
「アアン!もっとぉんの間違えだろ」
「アハハ。跳二きもーい」
「うっせぇチビ丸!」
「あッ、もっ……イッ、ク……からぁ!」
「んあ?イクってよ」
「……ん」

 あーやめろやめろ!イクんだってマジで!俺のチンコから離れろ!
 そう思うのに口から出るのは、自分で気持ち悪いと思うぐらいの甘ったるい声ばかり。そうこうしてる間にも、最大まで開いた俺の股の間に鎮座していた男が、俺のチンコを躊躇いなく銜えた。その刺激で俺は呆気なく果ててしまう。

「うっ、んぁ……」
「うまい?京助ぇ」

 俺を後ろから抱き抱える男が、俺のチンコから出る精液をゴクリと飲み干し、ピチャピチャと亀頭に舌を這わす男にそう投げ掛けると、男は表情一つ変えずコクコクと首を振る。んな訳あるかくそボケ。
 さっきから無理矢理イかされてもう息も絶え絶えだ。なのに無理矢理横に向かされた顔をベロベロ舐めて、終いには口を塞ぎチューチュー舌を吸うこの男は鬼畜か何かか?俺を殺す気か?

「んじゃ、今日は俺がいっちばん」
「っ、んむ!……ッンンンン!」
「――!」
「おいおい、いきなりトコロテンかよ。持つのかこの後。だはは!京助の顔せーえきまみれじゃん!」
「っ、はっ……ちょっと勢いよすぎたぁ?深いよね、奥当たってる?」
「ん、む……ッ、やぁ、も、動か、な……でぇ」
「もっと動いてって、龍臣」
「ハイハイ、しょうがねぇなぁっ……とぉ!」
「――――ッちがぁ、ああああぁっ!」

 背面座位の状態でガツガツと突き上げてこられ息が止まりそうな所を再びキスで塞がれマジで意識が飛ぶかと思った。その間にも、乳首は弄くられるわ、耳の中まで舐められるわ、チンコは舐められ扱かれるわで四人好き勝手に俺を犯してくる。
 本当に地獄のような日々だ。こうして無茶苦茶な刺激を与え続けられた俺は、もう感覚が大分麻痺ったと思う。ああそうそう、言うまでもなく、この四人が例の四天王だ。一人一人説明するのもすげぇ嫌だけど、今後のためにも必要だから言っておこう。
 まずは一人目、俺をよく後ろから滅茶苦茶に犯してくるある意味頭が一番ぶっとんでいる見た目絵本の中の王子様、裏表の激しい伊角龍臣。二人目、さっきから俺を窒息死させようとしているのか、しつこくキスをしてくる見た目国民的アイドル、皆大好き辻丸水希。俺と変わらない体躯で細めだけど、バリタチだ。そして三人目、俺の精液をよく飲む、俺としては一番掴めない無口な男。この中でも一番大きく、見た目手足のスラッと長いモデルのよう。その名も一宮京助。実はキスしてくるのはこの人が一番多い。今日は違ったけど。そして最後の四人目、見た目からして悪魔のような鋭い目をして笑うこの男は、そのまんま中身まで悪魔だ。たぶん、一番しつこく俺をイかしてくるのはこの人だ。今日だって玩具で五回もイかされた。泣いても喚いてもこの人には無駄だ。その悪魔の名前は厚本跳二。
 この四人を総称して、四天王と言う。誰だよ付けたの。馬鹿四人組で十分だろ。そんな学園のアイドル(笑)に何故俺がこんな仕打ちを受けているのか、それを話すのには冒頭で言った通り少し時間を遡る必要がある。





 そう、あれは何の変哲もない毎日を過ごしていたある日のこと。俺は先生に頼まれて、放課後社会科資料室に教材を届けに行こうとしていた。社会科資料室には沢山の道具が置かれている為とても広い教室だ。だからか知らないが、別館の二階にある。本校舎から態々此処まで来るのはとても面倒だが、先生に頼まれた以上仕方がない。さっさと用を済まして帰ろう。
 その時だった。別館に足を踏み入れた俺はある異変に気付く。

「え、何……」

 別館の奥の方から、微かに声が聞こえる。俺の気のせいかとも思ったが、足を進める度にそれは確信へと変わる。これは確かに人の声だ。正直俺以外、こんな辺鄙な所に来ないと思っていたんだけど、もしかしたらアレか。噂に聞く"制裁"とやらか。
 この学園には有名人が居て、その人達の熱狂的ファンである生徒達が親衛隊なるものを結成した。その活動内容はそいつらの世話を甲斐甲斐しくしたり、まあ色々らしい。でも俺が聞く限りは本当に力を入れている活動は彼らに近づく者を貶める、制裁と呼ばれるものだ。俺は直接その現場を見たことはないけど、同じクラスの子が制裁に遭って自主退学をしたのだけは知っている。最後に見たその子は、身体中ボロボロだった。

(もし、制裁だったら――)

 俺の足がピタリと止まる。もし本当に制裁の現場だったら、俺はどうしたらいいのだろう。多勢に無勢ではその人は救えない。それどころか俺がどうなる事か。でも、此処でオレが放って行ってしまったら?また、あの子の様になってしまう子が出てしまうのではないか。
 そう思ったら、足は勝手に奥へと進んでいた。とにかく、アレだ。もし制裁だったら急いで戻って先生を呼ぶ位俺にも出来る筈だ。結構足には自信あるし。緊張からか、ドクドクと心臓が脈打つ。そして辿り着いたそこは、別館一階の一番奥の部屋。第三準備室だ。こんな所が使われているのも驚きだ。何故だか扉に布がかけられていて、外からは中の様子が窺えない。尚更怪しい。どうする、チョロっと開ける事とか出来るかな。
 だが今更ながらに気付いた。いつの間にか、声が聞こえない。そう思ったのと、扉が開かれたのはほぼ同時だった。そして俺は後悔する。俺のこの選択が、これからの人生を狂わす最悪の選択だったのだから。

「――!」
「あー?なにコソコソしてんだよ。俺らから丸わかりだっつの」
「あ、な……」
「もしかして今日の相手お前?なら早く来いよ」
「ち、違うっ、俺は!」

 マズイ、マズイマズイマズイ!
 扉から顔を出した人物を見て、一瞬固まってしまったせいで、相手に捕まってしまった。掴まれる手を解こうにも、相手の力の方が上らしく、全く外せない。そして抵抗も虚しくそのまま室内放り出され、後ろで扉が閉められる音がした。

「っ……」
「やっと来たぁ。遅くね?もー待ちくたびれたんだけど」
「ねー。俺も寝ちゃうところだった」
「……ぐー」
「つか京助寝てね?」

 本物だ。本物の、四天王だ。流石に俺でも知っている。さっき言ったこの学園の一番の有名人。裏で学園を牛耳っていると言ってもいい、浮世離れした四人組。伊角龍臣、辻丸水希、一宮京助、厚本跳二。この四人はヤバいんだ。

「早くヤろうよ。此処座って」
「今日は何にする?これ使う?」
「てか今日のやつなんかパッとしなくね?まあ厳選なる結果だから仕方ねぇか」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「ん?」

 青褪めた顔で突っ立っている俺の背を、厚本跳二が押してくる。だがそこで俺は制止の声を上げた。三人が一斉に俺を見る。

「俺、違います。ただ上の階に教材を置きに来ただけなんです!」
「え?」
「マジ?あー確かに何か抱えてんな」
「でもさ、この部屋覗こうとしたでしょ?」
「それは、その……制裁だったら、困るかなって思って……」
「制裁ぃ?そんな中入ってどーすんだよ」
「いや、もし制裁なら、先生呼ぼうかなって」
「ぶははは!なになに!お前イーコちゃんな訳!?」

 ガシガシと頭を撫で回され、俺はイラッと来てその手を跳ね除けた。一瞬ヤバいとも思ったが、それより早く此処を出る事が先決だ。

「いいじゃないですか別に。それより、そう言う訳なんで、俺は失礼します」

 それじゃあと踵を返したところで、腕を掴まれた。
 え?と思う暇もなく、遠慮なしにソファーへと投げ飛ばされて、無様に転がる。教材は無残にもバラバラに床に落ちてしまい、俺は俺で何が起こったのか急すぎて理解が追い付かない。だが直ぐにでも分からされる。横から伸びて来た手が、俺をそのまま押さえつけた。この状況ヤバい!

「ちょっ、やめろ!離せ!」
「別にさ、関係ない訳よ。お前が選ばれて来たんじゃなくても」
「え……?」
「もう俺ら我慢できないし、今日はキミが相手してよ」
「は?何、言って……」
「んーと、鈴木有久?へえ、二年か」
「――!な、何でそれ!」

 俺の財布がいつの間にかズボンのポケットから抜かれてる。慌てて取り返そうにも、伊角龍臣に押さえられているため起き上がることも出来ない。くそ!なんで、なんでこんなことに!
 全力で抵抗しているのに、伊角龍臣は涼しい顔で俺を押さえている。そしてその手首にヒヤリと金属特有の冷たさを感じ、俺は慌てて顔だけを向けた。そして絶望で目が眩みそうになる。両手首が、手錠で繋がれていた。

「なんかこの子暴れそうだし?今日は拘束プレイ!なんてね」
「んじゃあ足も固定する?」
「や、待って……本当に勘弁して下さい!」

 俺の話なんか聞き入れてくれる筈もなく、伊角龍臣と辻丸水希は着々と準備を進めていく。何の準備かって?そんなの勿論、セックスの準備だ。
 この人達に纏わるある噂。それを聞いた時から俺はこの人達に良い感情を決して抱いていなかったけど、本当に噂じゃなかったんだ。その噂とは、こうして毎日、全校生徒の中から一人アミダクジで性処理の相手を選ぶと言う何ともぶっ飛んだゲームの話だ。しかも男とか女とか関係なく、適当に学年・クラス・番号の順にアミダして、見事当たった人に四人から招待状が届くらしい。でも場所までは聞いていなかった。分かってれば近付かなかったのに。そもそも、そんな恐ろしい遊びを学園でしているのにも驚いたが、誰一人としてそれを嫌がる人が居ないのが可笑しい。教師も注意しないし。まあでも、此処の生徒千人位居るから絶対その人達が卒業するまで自分には来ないだろうとタカを括っていたのに(来ても行かないけど)まさかこんな形でこの人達に出くわすとは。
 これから起こる事への恐怖からか、視界が徐々に滲む。だがそんな俺の視界に、厚本跳二の悪魔の様な笑みが映り込んできた。その笑みで、俺は全てを理解する。

「残念だけど有久ちゃん」

 ――もう、遅いって。
 悪魔の囁きが、頭の中で反芻し、そして静かに消えた。
 これが俺と悪魔の四天王の出会いの話だ。
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bkm