親衛隊隊長を代行します | ナノ
END

「んっ……ぁ」

 何処からか漏れ出る自分のモノとは思えない声に、思わず腕で口を塞ぐ。

「……綾太、塞いだら聞こえないよ」
「っ、う、あ……だっ、て……!」

 お前が俺の大事な息子を弄るからだろ!とは言えず、俺は悠生のされるがまま。もう一度はイかされた。それに、今口開いたら、間違いなくだらしない声が出るに決まってる。とは言え、自分の鼻に抜ける声も俺の羞恥を煽る訳なんだが。

「ひっ」
「綾太、力、抜いて?」

 ガチガチな俺の身体を撫でながら、悠生の手がトンッと尻の窄まりを叩いた。その手にはいつの間にかジェルが塗られている。今からされるであろう事を想像し、俺の身体は力を抜くどころかどんどん硬くなっていく。くそっ、何で俺こんな緊張してんの?折角風呂で準備までしてきたのに。悠生も、こんなの相手じゃ冷めちゃうんじゃないかと思い、知らず知らずの内に目に涙が溜まっていく。うー駄目だ!変な方にしか考えが行かねぇよ!
 と、その時、悠生がゆるりとした動作で俺の口を塞いでいた腕を退けた。潤んだ視界に、悠生の妖しげな笑みが映り込む。

「りょーた」
「え……?」
「口、少し開けて」
「あ、んんっ」

 言われた通り薄く口を開くと、悠生が噛み付くようなキスをしてきた。薄く開いた唇をすんなりと抜けて来た悠生の舌が、まるで俺を宥める様に優しく俺の舌と絡む。それをどの位の時間続けたかは分からないが、チュッと舌を吸われ、唇を甘噛みされ、漸くお互いの唇が離れた頃には俺はドロドロになっていた。もう力入らねぇ。

「……あっ、ン」
「ん……?綾太、もしかして……」
「う、うるせー……何も、言うなっ」

 力が抜けた俺の尻の穴に指を入れた悠生が、少し驚いたような声を上げる。
 けどそれを悠生自身の口から言われるのが恥ずかしい俺は、敢えてそれを口に出さないように言った。だって恥ずかしいだろ。自分で洗ったとか。お、俺だって一応男同士のこと調べたんだ。俺、経験ねぇし、少しでも悠生の手間を減らしたかったし。

「怖くなかった?」
「……少し、勇気いった」
「今度は、俺も手伝うよ」
「ッ、いい!絶対いい!」

 何故か嬉しそうに笑う悠生は、「残念」と口にしながらも、その嬉しそうな笑みを崩さなかった。そして、俺の尻の穴を慣らす行為は続いていく。慣れない感覚に目を瞑って、俺はひたすらに悠生の指だけを感じていた。そこからすぐに快楽を拾える訳じゃない。とにかく、俺はこの感覚に慣れようと必死になっていた。

「う、ぁ」
「……ん、結構いいかも」

 そして長い前戯が終わった。と言うのも、悠生がきっと初めてだと言う俺の身体を気遣って、此処まで慣らしてくれたんだろう。結構長い時間弄られた気がする。悠生がゴソゴソと自分のチンコにゴムを装着しているのを視線だけで捉える。

「ゴム、すんの?」
「またそう言うこと……ハジメテだからね。あんま無茶はさせたくないから」

 そう言って俺の額に唇を押し付けた悠生は、そのまま俺の目を見つめ、笑った。


「ッ、あぁ、くっ……んん……」
「はっ、キッツ……」


 ――結構、緩めたのに。
 そう囁いた悠生の声に俺は答えられず、口をハクハクと開閉させるしか出来なかった。くるしい、大きい、なんか、熱い。けど、痛くないのは悠生が長い時間を掛けて慣らしてくれたからかもしれない。それよりも圧迫感がすごい。悠生もキツイのか、顔を顰め唇を噛み締めていた。

「う、お前、の……ッ」
「んー……?」

 ゆっくりと腰を押し進める悠生に、俺は息も絶え絶えになりながら言った。

「おっきくて、くるしっ」
「――!」
「ぅあ!?ちょ、な……ッ」

 余計に大きくなったソレに、俺は思わず悲鳴を上げる。殺す気かこの野郎。ただでさえ一杯一杯なのに。

「優しくするって決めてるんだからッ、あんま、煽ること言わないで」
「え?」

 顔を赤くして少し拗ねた様に目を吊り上げる悠生は、そう言って一つ深呼吸をすると、俺の腰を掴み、再び動き始めた。どんどん深くハマっていく感覚に俺は、無意識に身体を震わす。何だろう。さっき指で弄られた時とは違う。何だか、身体が変だ。

「んんっ、は、あ……」
「綾太、ごめん、ちょっと、動くよ」
「えっ、ちょ、悠――」

 奥に入ったと思ったら、そのままズルッと限界まで抜かれ、そしてまた入れられ、動きこそはゆっくりだが、何だか身体のゾクゾクが止まらない。

「やっ、ゆ、せい!ちょっ、まって……!」

 声を上げるも、悠生は聞こえていないのか、抜き差しするのを止めてはくれない。

「ああッ、ん、い、やっ……な、んか……変ッ」
「綾太の中、凄いピクピクしてる……」
「ゆ、せーっ、やば、俺ッ」
「うん。分かってる。此処だよね、綾太の好きなトコ」

 そう言って悠生が一際強くその場所を突くと、俺は声にならない悲鳴を上げた。一瞬にして頭を真っ白くさせる強い快楽が、俺の身体を突き抜けた。さっきまで気持ちいいとか、そう言う感覚は全くなかったのに。それなのに、この行き過ぎた快楽はなんだ。

「かわいい、りょーた」
「あっ、う……ゆーせー……」
「うん。もっと呼んで、俺の名前」

 何故だか涙を浮かべる悠生は、嬉しそうに笑ってまた俺の唇を塞いだ。これじゃあ名前呼べないだろうが。

「りょーた、綾太ッ」
「ゆ、ッ、せ、んっ、ぁ?」

 キスの合間に俺を呼ぶ悠生は、何故だか泣いていた。ポタポタと頬に水滴が落ちてきているから。なんで泣いてるんだこいつ。しかも自分で気づいていないのか、夢中で俺の唇に吸い付き、腰を揺らしている。
 理由は分からない。分からないけど、少しでもこいつの不安がとれるならと、俺はキスをする悠生の頭を強く抱き締め、より一層深いキスを返す。まさか俺からそんな事をすると思っていなかったのだろうか、悠生の動きが一瞬止まった。けど、止まったのはほんの一瞬。フッと小さく笑うような吐息が伝わったかと思うと、悠生はその動きをより一層強くした。

「ッひ――!」

 喉が引き攣る。強い快楽に、目の前がチカチカした。こいつ、急にッ!

「……ごめん、りょうたっ、もう、少しだからッ」

 そして、ラストスパートと言わんばかりに腰を打ち付ける悠生は、俺の弱い所ばかりを狙ってきている。さっき優しくしたいと言ったのは何処のどいつだ。俺もお前も、もう理性のカケラもねぇじゃん。ただ互いの身体を求めあってる、獣そのものだ。


「っ、ああァッ!」
「つッ……」


 目の前に火花が散る。ガクガクと身体が震え、中の悠生を思い切り締め付けた感覚が伝わって来た。瞬間、ビクビクと脈打つ悠生を感じた俺は、無意識の内に瞼を閉じていく。あー、身体が重い。





「お前、なんで泣いてたの?」
「え?」

 俺が目を瞑ったのはほんの数分のことで、目を開けると、目の前には呆然と俺を見つめる悠生が寝そべっていた。思わずその顔を抓ると、悠生は解せないと言わんばかりの顔をした。そんな悠生に構わず、俺はさっき気になった事を聞いた。

「泣くつもりはなかったんだけど、そうだなぁ……切なくて、嬉しくなったからかな?」
「は?」

 そう言って笑った悠生は、コツンと俺の額に自分の額を当てて来た。

「自分の腕の中に綾太が居る奇跡に、俺を好きになって俺と一緒に生きてくれる奇跡。一度失った存在が自分の元に居る奇跡を考えたら、切なくて、でもそれ以上に幸せで」

 それで泣いちゃったのかな?
 そう言って照れ笑いする悠生に、俺はグッと涙を堪える。今その話するかよ、こっちまで泣きそうになる。本当に奇跡の様な、俺達の物語に。

「あ、そうだ。俺ね、綾太に渡したい物があるんだ」
「渡したい物?」
「うん。今日持ってきてるから、あとで読んであげる」
「え?読み上げるもんなの?」

 当然の疑問を口にした俺に対し、悠生はニッと無邪気な子供の様な笑みを浮かべると、俺の耳元に唇を寄せ、小さく耳打ちして来た。


「大事な、大事な、俺の日記」
「はあ?」
「どんな時でも、綾太を想いながら書いた俺の日記はね?」


 ――キミへのラブレターなんだ。
 それは、俺が居ない間に書いた、悠生から俺への手紙。俺への想いを書いたラブレターだと、悠生は言う。

「そーかよ」
「うん」
「……ありがとな」

 こんなに胸が温かくなる思い、そうないよ。
 全部、お前にだけだよ。悠生。
 この愛しさも、幸せも、お前以上に抱ける相手なんか二度と現れないだろう。
 だから――。


「悠生」
「ん?」
「俺今、すげー幸せ」
「――うん、俺も!」


 これからも笑っていこう。
 辛くても、悲しくても、こんな奇跡を起こした俺達なら、きっと乗り越えられるから。
 


 END



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