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ああ、凄く懐かしい。
そう思えるのは、自分がこの地に戻って来るとは考えてなかったからかもしれない。
「着いたよ」
弥一の言葉に、俺は静かに頷く。そして、目の前に建つ大きな建物を見上げた。
金城学園――此処に、藤島くんが居る。そう考えるだけで、何だか涙が出そうだ。
「泣くのは早いよ。そう言うのは、感動の再会を果たした後にして」
「うっせ……分かってるよ」
グッと息を呑み、俺は校門へと近付く弥一の背を追う。正面突破と弥一は言ってたが、門も閉まってるこの状態から、部外者の俺はどうやって入ればいいんだ?車は、特別な許可がないと、これ以上奥に進めないらしいし。
「なあ、弥一……」
「大丈夫。カメラにさえ映らなければ、門は開けてもらえる」
「え?」
「でも、勝負はそこから」
そう言って弥一は、俺に門から少し離れた場所に立ってろ指示し、自分は門の所についているインターホンを押した。
『はい』
「二年の三鷹弥一です」
『……?随分早く帰ってきましたね』
「ええ、予定より早く済んでしまって」
『そうですか、すいません。今すぐ開けますね』
ありがとうございます、と穏やかな表情でお礼を言う弥一は、インターホンが切れたと分かるや否や、俺に急げと手招きした。
「今のは……?」
「普通、外出届を出した生徒は帰る時間を予め警備の人に伝えておくんだ」
だから、随分早いと言っていたのか。
「そして警備の人達は、その時間に合わせて校門で待機して門を開けておく」
「え?」
「そうなると、僕らの姿は隠れる前から見つかってしまう」
「それってつまり……」
「そう。どうやってもこれ以上先には進めなくなる」
けど、今のこの状況は、警備員の殆どが管理室に入り、そして時間的にもお昼を食べる時間になっているらしい。交代で見張りをするものの、その人数は総出で出迎える時とは違い、たったの二人。そいつらが、門が開くと同時に管理室から出てくる。
「弥一、お前……」
「下調べなしに、正面突破なんて無謀なことは言わないよ。けど、これに失敗すれば、もう同じ手は通用しない」
ガチャンッと、鍵の開く音がした。成る程、だからチャンスは一度だけ、か。
「いいか!扉が開く瞬間に走って、管理室から警備の人達が出てくる前に校舎に走れ!」
「分かった!」
弥一のその声と共に、俺は門に向って走った。そして、ゆっくり開き始める門の隙間に身体をねじ込んだ。ガンッ!と鉄の門が音を立てる。
「ぐっ!」
「早く!」
門に当たった瞬間身体に痛みが走るも、そんなの気にしてらんない。俺はよろけながら門の中に滑り込んだ。弥一もその後に続く。フと、視界の端で管理室の扉が開くのが見えた。ヤバい、もう出てきた。
「――走れ!綾太!」
その瞬間、弥一が叫ぶ。
そしてあろうことか、管理室の扉に向って走り、そして出てきた警備員に飛びついた。弥一の軽い身体でも、走り込んで飛びつけばそれなりに威力がある。支えきれずに後ろに倒れ込んだ警備員は、もう一人の警備員を巻き込んで弥一と共に倒れ込んだ。思わず弥一の方へ駆け寄ろうとする俺に、弥一は「来るな!」と声を上げる。
「や、弥一!」
「いいから!早く行け!」
「なっ」
「――目的忘れんな!悠生様の所に行くんでしょ!なら立ち止まるな!」
ドクリと、心臓が鳴る。
そうだ。俺は何のために此処に来た。何のために頑張って来た。皆に助けてもらって、弥一にもこうして助けてもらって。今ここで俺が弥一の元に走ったら?それこそ全部無駄になる。そうだ、今俺が向けるべき足はそっちじゃない。
「――ま、待て!止まれ!」
校舎に向って走り出した俺を見て、警備員の一人が制止の声を上げるも、俺はそれを振り切って走る。ごめん、弥一。いや、違う。こう言う場合は――。
(ありがと)
お前と言う親友が居てくれて、俺は凄く幸せだ。
だから、また後で逢おう。
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bkm