親衛隊隊長を代行します | ナノ
4

 所変わって三鷹の部屋。親衛隊の集会が終わって部屋に戻った俺は、何故か三鷹から罵りを受けていた。

<ばっかじゃないの!ホントばっかじゃないの!>
「うっせぇ!馬鹿馬鹿言うな!」

 こいつホント口うるさい。俺は俺で意見しただけだっつの。別に聞き入れてくれとは言わない。あくまで自分達の隊はもう手を出さないと言っただけだ。

<大体、喜多村先輩にあの態度……!絶対目つけられた!>
「んだよ。あの人がなに?」
<会長の親衛隊隊長なの!!あそこはこの学園で一番の過激派で、邪魔者は容赦なく切り捨てる冷酷さをもってるのに……っ>

 過激派って、どこのテロ集団だよ。でもそっか、あの人を筆頭に制裁とやらを行ってるわけね。じゃあ言っても無駄だったか。終始俺のこと睨んでたもんな。
 可愛い顔してこえーな、などと暢気に考えてる俺に対しかなり怒っているのか、三鷹がどなってきた。

<なに暢気にしてんの!?>
「分かった分かった悪かったって。でも三鷹の隊で制裁はやめよーぜ。藤島悠生も言ってたじゃん。佐伯に手を出すなって……」
<そんなのいいの!それよりもこの状況、いつ僕らが制裁にあっても可笑しくないんだよ!>

 そんなのって、お前の悠生様に関わることだぞ。そんな適当でいいのかよ……って、え?今なんて言った?

「ん?制裁?僕らが、制裁?」
<そうだよ!>
「はああ!?何で俺らが制裁にあわないといけないんだよ!!」
<だから言ったじゃん!邪魔者には容赦ないって!>
「じゃあなにか!俺は邪魔者扱いか!?」

 何だそれ。つまりは制裁をなくそうとする不届き者は始末しようって、そう言う考えか!えーマジか!

「え、制裁ってなにされんだっけ!?あーえー、例えば上履き隠されたり、扉開いたら黒板消しが落ちてきたりとかそんな!?」
<んな訳ないでしょ!?何その地味な嫌がらせ!>
「じゃあなんだよ!」
<そんなの暴力や強姦に決まってるじゃん!>
「いや決まってねーよ!!さも当然みたいに言うな!」

 暴力はまだしも強姦って、ここ男子校だろ。そう思うも、自分が初めて此処に来たときの口にも出したくない体験や三鷹の信仰具合を見るとそうも言えない。もうここではそれが当たり前なんだ。何だか自分の常識とはかけ離れていて少し怖い。

「つかさ、佐伯もその……強姦とかされたの?」
<…ううん。最初はリンチとか考えてたらしいけど、あの転入生何でか強いんだ。ものすごく>
「あー…まあ、確かに喧嘩慣れしてるっぽいわ」

 アイツ全然物怖じしないし。最初殴られたときもかなり真っ直ぐないいパンチだった。まあ血が昇りやすいのはどうかと思うけど。

「成る程、それで陰口ぐらいで済んでるわけね。今のところは」
<そうだよ。けど、このままじゃ僕らが先に……>

 三鷹が心配そうな声を出した瞬間だった。ピンポーンと、部屋にチャイムの音が響き渡る。
 誰か来たようだ。


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