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<今日は集会だからね!しっかり意見交換してよね!>
(は…?)
食堂で転入生たちと一悶着あって、アイスを食べた藤島悠生と別れた後、三鷹がそんな事を言い始めた。何、集会って。
<隊長格の人達が集まって、今後の方針を決めるんだ>
(隊長格?それって何人ぐらい?)
<この学校にファンクラブがある数だけ隊長が存在するから、どれ位か分からない>
(え、そんなに?)
<まあ大きいファンクラブの隊長しか殆ど来ないよ。だから精々二十人ぐらいかな>
へえ、そりゃご苦労なこって。そう思う位たるい。集会とかチョーたるい。そんな俺のダルさが伝わったのか、中で三鷹が怒り始めた。
<ちょっと!真面目にやってよね!じゃないとこっちの動きまで制限されたりするんだから!>
(分かってるって…出るよちゃんと)
<出るだけじゃなくてちゃんと意見して!>
(それはお前が考えてくれよ。俺にはどうしたらいいのかなんて分かんねぇし)
<当たり前でしょ!誰もお前に期待してないから!>
なんだコイツ。言ってる事違うぞ。意見しろって言ったのお前だろ。何かムカつくから、ずっと黙っててやろうかな。
*
と言う訳で、放課後言われた通りの場所に赴いた俺は、すぐにでも帰りたい気持ちに見舞われた。なんでこの目の前に座る男は俺をめっちゃ睨んでくるのでしょう。可愛い顔してんのにめっちゃ目鋭いんだけど。
「会計親衛隊隊長、三鷹」
「え、あ、はい」
「どう言うつもり?大陽様の親衛隊に入るなどと言いふらしたそうじゃないか」
いやいや、言いふらした覚えはないぞ。そもそも、たいようって誰だ。
<宮内大陽様は此処の生徒会長様。お前がこの間この人の親衛隊に入るって指差した金髪の人だよ>
(ああ。あのイケメン!)
思い出した。確かに言ったわ。この人のに入るって。けどあれは、もう誤解だと解けた筈だ。なのに何故こんな睨まれないといけないんだ。
「えっとぉ、それは誤解なんですけどぉ」
<ちょっと!その気持ち悪い話し方止めてよ!>
(は?お前そっくりだろーが!)
「その気持ち悪い話し方やめてくれる?不愉快だから」
なんと!
二人から言われたらもう気持ち悪いと言うのを認めなければいけないじゃないか。何だか三鷹に負けた気がして少し悔しい。対する三鷹は勝ち誇ったように笑っている。だがこの身体はお前のものだ。気持ち悪い印象を持つのは俺ではなくお前だと言うのを忘れてはいけない。まあムカつくから言わないけど。
「とにかく、もうその誤解は解けた筈です。彼が、藤島…くんがそうしてくれました」
俺がそう言うと、周りがざわついた。何だ突然。みんな俺を見てヒソヒソ話している。
「いいよね、アンタは。どうやって取り入ったか知らないけど、愛しの悠生様に味方してもらえて…!」
「は?誰が愛しのだ」
<喜多村先輩…>
突っかかる俺に対し、三鷹が中で心配そうな声を上げた。喜多村?この人の名前か。つか先輩だったのか。よかった取り敢えず敬語で話してて。
「僕は、見てさえもらえないのにッ…」
そう言って悔しげに唇を噛む先輩。周りのやつ等も、みんな悔しげに顔を歪ませていた。成る程な、それ程までに切羽詰ってるんだなこの学校。一人の転入生の存在によって、かなり揺れ動いている。少なくともこの空間に居る奴らは、俺に当たらないと気が済まない位には余裕がないのだろう。
「喜多村、先輩?」
「なんだよ…」
「一つ提案があります」
みんな怖いんだ。自分が好きだった存在が、どんどん変わっていくことが。自分が変えるんじゃない、他の人の手によって変えられるのが、きっととても怖いんだと思う。
「制裁…でしたっけ?」
<ちょ、香坂…?>
三鷹が焦った声を出す。三鷹が期待してないとか言ってたし、それはそれで悔しいから俺は俺なりに考えてみた。そしたらやっぱ、これが一番いいと思う。あくまで意見だから、いいだろこんくらい。
「あれ、やめましょう」
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bkm