第一回カラオケ選手権-立海の巻-

「あー、今日は雨だね」



「ってことは部活は中止っすね」



ザーザーと降り続く雨をレギュラー陣と見上げる



「柳、やむ確率は?」



「そうだな…この雨が部活時間内に止む確率……5%」



もはやうちの参謀はお天気お兄さんになりつつある



「ほら絶対止みませんって!」



「うむ、仕方ないな。今日は部活中止だ」



ある程度の雨ならやっていたがここまで降られると選手の体が心配になる



「各自家で筋トレすること。いいね?」



「なっ、なんで俺を見るんだよぃ?」



「うっ…俺もっすか」



『あんたら絶対やってこないじゃん』



どうも、如月レイです。一応立海テニス部のマネージャーをやってます



本当は入る気なんてさらさらなかったんだけど……まあ色々あって



あの時の記憶は今すぐにでも消し去りたい



「それじゃあ、帰ろうか」



「あ、待ってください!」



精市の言葉に待ったをかけたのは赤也



「先輩たちこの後空いてるっすよね?」



もともと部活だったし、予定はないはず



「だったらカラオケ行きませんか!?せっかくの休みなんだし、たまにはみんなで!」



「お、たまにはいいこというじゃねえかよぃ!俺行く…ジャッカルも!」



「俺もかよ!?」



「プリッ…そうじゃのう、レイが来るなら行ってあげてもいいぜよ?」



『私?まあ予定もないし…別にいいけど?』



「じゃあ行く。俺の美声たっぷり聞かせちゃるき、覚悟しんしゃい」



『あの、顔、近いっす』



「え、レイも行くの?なら俺も行こうかな」



なんで私が行くと行くんだ



「む?からおけ…とはなんだ」



「「…え」」



一人ジェネレーションギャップを感じさせる人もいたが結果みんな行くことになった



「ここ、ここっすよ!」



赤也が行きつけだという店についくと受け付けを済ませてくると一人走って行った



受け付けの人と親しげに話すあたり本当に仲がいいみたい



「俺らの部屋は203号室みたいっすね、」



「ここだよな?入るぜぃ」



おお、なかなか大きい部屋だ



なんか真ん中にステージある………え、ステージ!?



「…あのステージ、見ると跡部を思い出すのは俺だけか?」



『心配ないよジャッカル…激しく同意』



「さあ歌うぜぃ!」



赤也と、同じくらいノリ気なブン太の二人が仕切り始める



「ほう…ここがからおけというところか」



「お前さん、生まれる時代間違っとるぜよ」



こちらも激しく同意。いまどき中学生でカラオケ知らない人なんていないから



「ほう、全国版の採点機能があるのか」



「面白そうだね」



その瞬間、全員が固まった



精市が"面白そう"って言った…嫌な予感がしてならない



もう本能が警告音を発しすぎてピーピーからビービーに変わった



「えっと…、採点つけると時間かかるっすよ」



赤也がさりげなーくフォローを入れた



「そうだね。でも…折角だしつけようよ」



『赤也使えない!』



「ひどいっす先輩!」



「普通に歌うだけじゃつまらないね…そうだ、俺に良い考えがあるんだけど」



もうこれは従うしかない…



「これで60点以下を取ったら罰ゲームなんてどうかな?」



「あれ、意外と普通…」



「待て赤也。相手は幸村君だ、普通なわけねぇだろぃ」



「うん、ブン太は問答無用で罰ゲーム決定にしようか」



『それで?別ゲームは?』



ブンタが涙目でこっちにグーサインを送ってきた



「そうだね……受付にあった罰ゲームセット借りてこようか」



「そんなものがあったのか」



「目ざといぜよ」



赤也、とってくる。と一言命令して精市は僕を走らせた



『60点って低くない?』



「そう?あ、ちなみに曲はこのランダム機能使うからね」



そういうことか!騙された!



『高いと思います!』



「ん?不戦勝?」



いじめだ!



「順番はこのあみだくじでいいか?」



「いつの間に作ってたんすか先輩」



「いつの間に戻ってきたのか赤也」



あみだくじの結果、順番は



1番 ジャッカル
2番 柳生
3番 真田
4番 赤也
5番 ブン太
6番 蓮二
7番 私
8番 仁王
9番 幸村



の順になった。最後に関しては謀ったとしか思えない



「はいジャッカルマイク。」



「あ、あぁ…」



「ちなみに歌うのそこね」



指差す先は中央にあるステージ



「まっまじで!?」



「せっかくあるんだから活用しないと…ね?」



もはやこのカラオケは精市に制圧された



「それでは僭越ながら私が…」



画面をタッチして曲が流れ始める



『私これ全然わからない』



聞いたことがない曲も流れるから怖い



ジャッカル歌えるのかな?



「…ん、これ」



歌い始めた……ってなんか異国語喋りはじめた!?



「これブラジル国歌だ。助かったー」



『ブラジル国歌も流れるの!?』



「点数は62点……微妙すぎるよ。罰ゲームなのかなんなのかはっきりしなよ」



「すいません」



「微妙すぎるからはい、罰ゲーム」



そんな理不尽な…と誰もが思っているが誰も言葉を発しなかった



自ら首を絞めるようなまねはできない…ごめん、ジャッカル



「罰ゲームは…これ飲んで?」



出してきたのはグラスに入った……何か?



『え、何それ?』



「んーと…健康にはいいらしいから、はい」



「ちょっ、待て。色が…色がおかしい」



「はーいジャッカル行きまーす」



嫌がるジャッカルに無理やりグラスを押し付ける



「え、絶対嫌だ!俺合格したんだしいいじゃねえか!」



「飲ーんで飲んで飲んで飲ーんで飲んで飲んで飲ーんで飲んで飲んで……飲んで?」



「うっ!」



最後目が笑っていなかった…ジャッカルも恐怖でグラスを一気飲みする



『ジャ…ジャッカル?』



心配になり顔を覗き込むと黒いのにみるみるうちに真っ青になっていった



「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」



『ジャッカルーーーー!!!!!!』



「待つんじゃレイ!あいつは俺らのために犠牲になった…ジャッカルの犠牲を無駄にするんじゃなか!」



「ジャッカル…お前の事は一生忘れないぜ」



「なんでもいいから次、はい柳生」



マイクという名の命綱が渡される



「あ、普通の歌ですね」



ほっと息を吐き安心したように歌い始める



"71点"



「うん、まあいいんじゃない?」



「やりました!」



『おめでとう柳生、君は生き残ったね』



隣で帰ってきたジャッカルが死んでいた



次は真田なんだけど、この人最近の歌を知ってるのかな?



「真田って歌えるのかよぃ?」



「演歌でもでないとわからないんじゃ…」



「む、俺をバカにしているのか!?最近の歌ぐらい耳にしておるわ!」



『よーし、じゃあ行くよ!』



流れ始めたのは……



「ほう、これならばわかるぞ!」



真田は自分の知っている歌が流れて安心したのかはりきっている



「……なぁ、これって」



「……嫌な予感がしてならないぜよ」



さすがの精市も顔が引きつっている



キラッ☆



「「ブハッ!!」」



一斉に真田を除く全員が吹きだした



私でも知ってる有名なアニメのあの歌声をこんな野太い(失礼)おっさん声で聞かないといけない!?(そして声を合わせようと若干かわいこぶって歌っているところがまた気持ち悪い)



ダンスまでつけだしたぁぁぁぁ!!!!



「これはっ…ひどすぎるぜよ」



『誰か!誰かとめて!』



「すまない…近づきたくもないよ」



精市でさえ断念せざるを得なかった



「…憐れ、弦二郎」



蓮二がリモコンで強制終了



いつの間に耳栓なんてものを持って…



「む?なぜとめたのだ?」



『ひどすぎるから強制終了。』



「レイがやるならまだしも…あの歌を侮辱した罪で真田はこれ終わるまでつけててね」



私でもあれ見たあとにやりたいとは思わない。



手渡したものはウィッグだった



「これをつけていればいいのか?」



「うん。強制終了させてしまったからねあれ飲むより軽い罰ゲームだろ?」



「そうだな」



いやいやいや精市の口車に乗せられすぎでしょう?



気付いてよ、それずっとつけてないといけな……



「あっはははは!!!!無理、無理っす!腹いてぇ!!!」



「ちょっ、これギャグだろぃ!!!しっ死ぬ!!!」



耐えられなかった赤也とブン太が床を転げまわるかの如くおなかを抱えてのたうちまわっている



『……っくく』



「レイ、顔ひきつってるよ」



「そういう精市もつらそうだね」



笑ったら真田の鉄拳が飛んでくるだろうと思い必死にかみ殺す



これはつらい。なぜなら真田のつけたウィッグはおさげだったから



しかも髪の毛が短いので上につけるしかなくツインテールをみつあみにしている感じ



「貴様らそこに直らんかぁぁぁぁ!!!」



予想通り怒りにふれた赤也とブン太はおさげの真田に怒鳴られていたが…あれで怒られても正直笑いしか起こらない



「ふふっ…はい赤也、マイク」



「うっウィース」



涙目になりながら赤也がステージに立つ



「あっ俺これ知ってるっす!」



私でも知ってる有名な歌だった



これならいけるなーと安心して見ていたんだけど…



「夏の夜の真ん中…つっ…きの」



赤也の歌がだんだんと苦しいものに変わっていく



『赤也?どうしたの?』



「もう無理っす!耐えらんねぇ!!」



あはははと突然笑いだす赤也、仕方ないけど全部歌えなかったので罰ゲーム



「おぇぇぇぇぇ」



「きたない」



飲ませておいてそれはないと思うけど確かにそうだったから無視



『そういえば赤也なんで笑ったの?歌う前は安定してたのに』



「う、歌えばわかるっすよ…」



「次俺だな」



あのステージに何があるんだろうか



歌は"大切な人へ"だった



「お、これ俺の歌じゃん!」



『ブン太!?そういうの言わない!キャラソンとか設定では出してないから!』



「レイ…墓穴掘ってるぜよ」



『…あ』



「まーこれなら余裕だな!天才的歌声で満点…」



曲が始まりだしたとたん、ブン太は一点をみつめて固まった



『…あれ?』



「ブハッ!!無理無理!耐えらんない!歌えるわけねぇって!!!」



始まっているのに歌う事もできずただ笑い続ける



強制罰ゲーム



『…一体あのステージの上に何が』



「この柳蓮二が確かめてこよう」



「頼んだぜよ参謀」



ブン太からマイクを奪い取りステージに立つ



曲はいろは歌だった。あ、なんか和風であうなー



今のところ前の二人のように笑うことはない



まあ冷静な蓮二だしそうそう笑うことなんて…なんて思っていたら



突然カッと目を見開いて制止した



『れ、蓮二の目が…』



「…これは一種のホラーぜよ。目があったら死ぬ」



制止したまま動くことはなく、結局柳生が連行した



もちろん強制罰ゲーム



『蓮二どうしたの?あそこで一体何が…』



「…あえて言わないでおこう」



「お前さん自分が被害にあったからって犠牲者を増やすつもりじゃな?」



「お前らも身を持ってしるといい…あの破壊力を」



次私なんですけど!?何この流れは



緊張の面持ちでステージに行くと雅治の前を通り過ぎるときにこそっと耳打ちをされた



「これから歌い終わるまで、ずっと俺を見ときんしゃい」



『は?なんでよ』



いつものように軽く流そうとしたけど腕を掴まれてそれも叶わなかった



「お前さんのためじゃ。絶対に逸らすんじゃなか、わかった?」



『わ、わかったから。腕っ…顔ちかい』



「ふっ」



なんなんだわけがわからない



でもやらなかったら後が怖いから雅治を見つめることにする



流れた曲は私の知ってる曲で安心した



『耳元熱い吐息をかけて』



好きなアーティストだったから全然よかったんだけど…この歌詞を雅治に向けて歌うのは少し…いや、かなり恥ずかしい



逸らそうとした視線を雅治が口パクで逸らすなとけん制された




『上目づかいは君へのサイン』




「え、なんで仁王みながら歌ってるの?浮気?」



お願い精市だまってて!



『ねえ 軽くsmileくすぐれ恋心 Lockon君はもうメロメロ 覚悟ができたならkissして』



最後、最後だけ視線をふっと逸らした



『all right?』



そして私は見てしまった……



『…ふっ…あははははは!!!!!』



前の人が笑っていた理由が判明した



確かにこれは…ひどすぎる!



「あー、見ちゃったかの」



『まっ雅治…ふふっ』



「ま、歌い終わったことじゃしよかったぜよ」



『助かったよほんと…ぶふっ』



あのステージに立つと、嫌でも目に入ってしまう……おさげ真田が今回の原因だった



座っていれば気にしてなかったけど視界が見渡しやすくなっておさげ真田の姿をとらえることができる



腕を組んでいつものようにしてるのに髪が…おさげって!



一度見たら逸らせない異彩を放っていて、雅治のほうを見ておけばかろうじて視界に入らない



「点数は90点だね。すごいじゃないか」



『精市目が、笑ってないっす…ブハッ』



精市の隣にいるからやめてほしい



「当然だろ?あんな歌詞を仁王を見て言うんだから…浮気かと思ったよ」



『その前に付き合ってないよね?』



「次は俺じゃな…見ときんしゃレイ。次はお前さんを見て歌うぜよ」



『え、うん』



独特の雰囲気のままステージに立つと流れ始めたのは…"A気持ち"



「……レイ」



精市が私のとなりに移動してきた



真田の隣になってしまった柳生とジャッカルは笑わないよう口を押さえている



『精市?』



「あんなむさい男の隣にいつまでもいられないだろう?」



んー、確かにそうかも



だからって腰に手を回すことはないだろうけど



「A気持ちにさせてやーるー」



『!』



なんなんだこの色気は!



不覚にもどきっとさせられてしまった



心臓がバクバクいってる



「もっと頂上へ!歓喜に呼び起された眠れる獅子」



『雅治視線!こっちみないで!』



耐えられなくなり耳をふさいだ



「仁王?あんまり調子に乗ってると…」



ってあれ、なんでこっちきてるの!?



手をのばされギュッと目を瞑る



右手がグイっと外され、その瞬間



「A気持ちにさせてやる…」



『ギャーーーーー!!!!!』



叫んだ。















「やっと俺だね」



精市が雅治に制裁を下し(点数は98点だったけど行いが悪いということで)、ようやく最後



『精市、黒魔術とかだめだからね?』



「ふふっ俺がそんなせこい手使うと思うのかい?」



『思わないです』



そんなことをしなくてもこの人は…



「シャラララ素敵にkiss」



いやーな予感がしてならない



「I love you」



『ギャーーーーーー!!』



本日2度目の悲鳴をあげる羽目になった















「というわけで俺が一番、仁王が2番で、3番がレイだね」



時間になり退室したあと歩きながら話していた



「俺…このメンバーで当分カラオケは行きたくないっす」



「同感…あれはひどかったぜぃ」



「私も…今回ばかりは堪えました」



「ひどかったな」



「「おもに真田が」」



「む?」



気持ち悪いくらいおさげの印象が残ってしまい当分真田の顔を正面から見ることはできなさそうだ



「で、レイはどっちがよかったの?」



『ふぇ?』



突然話を振られても意味がわからず変な声をあげた



「そうじゃのう…この際はっきり決めるのも悪くないしな」



『だから、何が?』



精市と雅治に詰め寄られ思わず後ずさる



他のメンバーは見ないフリだ。助けろ!



「何言ってるんだい?決まってるだろ」



『いやだからわかんな…っ!』



ずいっと顔だけはいい二人に詰め寄られ言葉につまる



ついでに顔も赤くなっているだろうなと自負



「俺か仁王、どっちの歌がよかった?」



『…へ?』



「せっかくあんな恥ずかしい歌詞をレイのために真面目に歌ったんじゃ。少しくらいサービスしてくれてもいいじゃろ?」



「そうだね。良かった方の頬にキス…なんてどうかな?」



『えぇ!?そんなの無理!』



全力で否定するも両方から腕を掴まれ逃げ道はなくなった



「俺か…」



『!』



「それとも俺か…」



『ちょっ…耳元で喋らないで!』



「「どっちがいい?」」



『…っ///!!』



そして私が選んだ答えは………




―――――――――――――――

おちw
一萬打おめでとう
これからも面白い小説期待してます
凄い長くなって最終的に面倒になったw
すいません
とりあへず最後の所と、真田のみつあみお下げポニーテールverがかければよかったw
よろしければ納めください

※ポルノグラフティ「アゲハ蝶」、supercell「LOVE&ROLL」、一部歌詞抜粋















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