相反する立場 | ナノ




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《side Mafiaboys》


時折上を見上げつつフランは壁際にあるソロバンらしきものを眺めていた。

アナログなソロバンより電卓を使ったほうが速いこの時代で、しかも日本生まれでないフランにとってソロバンだなんてものは算数の教科書でしか見たことが無い。

対して興味の沸かなかったソロバンの使い方も知らないけれど、それでも珠の数がおかしいことにフランは気づいた。


「なんでしょーかねー」


騒がしい探偵団から離れて一人、ライトを持ってないから暗い中当てずっぽうで適当に珠をいくつか弄ると動かしたまま動かない珠と、動かすと他の全ての珠が元通りになってしまうものがあるのを発見する。

なんだか楽しくなってきて、次々にソロバンの珠を動かしていると急に明かりを向けられて反射的に目をつぶる。


「ちょっとー、もう、いきなり何すんですかー?ああもう、まーたやり直しじゃあないですかー」

明かりをフランに向けてきた本人であるコナンをじっと睨むと少し怯んだようだった。


「わ、わりぃ。てか、フランてめぇ人の話聞いてたか?」
「聞ーてませんけど?」
「たくっ、いいか。歩美と元太の仕掛けからこの倉の床が動いていないことがまず分かった。だが、壁に立て掛けた光彦のバッジが無くなったことからこの辺の床や壁だけ動いて、その仕掛けの隙間に入って隠れてしまったか、もしくは…、この倉に潜む何者かが持ち去ったかってことが分かる。つまり、短時間でお宝を出し入れできる…、手品のようなカラクリがあるってことがな!」


転校してきてからというもの護衛のためにフランはコナンをよく観察していた。

だから、普段は歩美や元太や光彦に振り回されているものの、いったん何らかの事件が起きると一番張り切るのがコナンだということに気づくのも当然だった。


(随分とまー頑張りますねー)


出入り口の扉の真上に備え付けてある神棚が、危ない取り付け方をしているだとか、フランが弄っていたソロバンの珠の後ろから棒が出ていてその後ろの溝に入っていることだとかを嬉々として解説するコナンの心情はフランには分からなかった。

分からないだけでなく、そもそもこの倉のカラクリ自体に対して興味のないフランはわざわざ説明を入れてくるコナンにいらだったほどだった。


「で、フランおめーはさっきまでそれ弄ってたろ。なんか分かったのか?」
「教えて教えて!」


コナンの解説が終わった頃に元太と歩美がうずうずとフランに尋ねてくる。


「いいえー、なーんも分かりませんでしたよー」
「え〜!!」


フランの言葉に光彦はがっくりと肩を下ろす。

八つ当たり気味にフランは言うべきことを言わなかったのだった。



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