※来神時代です。

※幽→新羅→セルティ視点となります。

「…明日……か。」

明日は2月14日、
バレンタインデー。

毎年、この日は俺にとって数少ない楽しみの1つだった。

「姉さん…。」
「ん〜?って、入ってくるなよ!明日のお楽しみなんだから!」
「今年は……うん、ごめん。」
「?幽、どうかしたか?」

不思議そうに俺の様子を伺う姉さん。
その後ろにあるキッチンの台に置かれた、
沢山のカラフルなラッピングの材料とチョコ。

今年は去年までより数が多い。
高校に入ってできた友達にあげる分。
その中にたった1つだけ、
他のとはちょっと違ったチョコが在る。

「幽?どっか具合でも悪いのか?」

心配してくれる姉さんには悪いけど、
俺は何も答えず部屋に戻った。

じゃないと、嫌な事を言ってしまいそうだったから。

「折原…臨也…。」

きっとあの人だ。
去年までは俺にだけくれた特別なチョコを、
今年はあの人も貰うんだ。

「……ああ、きっと…これが…。」

嫉妬だ。

………………………

今日は待ちに待ったバレンタイン!
愛しのセルティが誠心誠意作ってくれた、愛情たっぷりのチョコを鞄に入れて登校した!v
いや本当は学校になんて行きたくなかったんだけどね。
こんな甘〜い日は僕等以外誰もいない家でセルティと2人っきりでイチャイチャしていたかった!v
チョコだって、
すぐに食べてしまいたいけどでも勿体無くて!v

「ちょっと新羅、さっきからうるさいよ!何回同じ話をすれば気が済む訳!?」
「うるさいって…俺はこれでも抑えている方なんだよ?だって可愛い愛しのセルティが僕の為に苦手な料理をしてくれたんだよ?しかもバレンタインにチョコ!これは興奮するしかn」
「黙れ、刺すよ?」

かなり機嫌が悪い臨也は未だに静緒からチョコを貰えず、
俺に八つ当たりしてくる。
まあでも自業自得だと思うけどね。
いくら静緒にヤキモチを焼いて欲しかったからって、
静緒の前で他の女の子のチョコを受け取るなんてさ。

「全く、何で君達はいつもいつもそうなるかな?とばっちりを食らう僕の身にもなってよ。」
「…………。」
「…そうしてる暇があったら、早く静緒に謝りなよ。」

だんだんジメジメしてきた臨也が哀れに見えてきた。
それに廊下からチラチラ此方を伺う静緒を何とかしたくて、
僕は久しぶりに一肌脱ぐ事にした。

………………………

仕事が終わり家に向かってシューターを走らせていたら、
何やら言い争いをしている静緒と臨也を見掛けた。

といっても、静緒が一方的に怒っている様で臨也はそれを宥めようとしているだけみたいだが…。

「ごめんってばシズちゃん!あれからもう誰からもチョコを貰ってないし、今朝貰ったチョコもとっくに捨てちゃったから!(汗)」
「っ捨てるなら、最初から受け取んな馬鹿!!」
「本当にごめん!ただシズちゃんにちょっとヤキモチを焼いて欲しかっただけなんだよ!(汗)」
「知るかっ!!」

怒鳴ってはいるが静緒の声は少し震えていて、
目元にはうっすら涙が浮かんでいる。

臨也の奴っ!!

私にとって静緒は親友であり、
妹だと言っても良いくらい大切な存在だ。
それがよりによって臨也と付き合っている。
知った時は思わず臨也をシューターで轢きそうになったが、
静緒の幸せそうな様子を見て、
不満はあったが祝福した。

なのに今、臨也は静緒を悲しませている。

「も…私のチョコなんかいらないんだろ?だったら最初からそう言えば…」
「いらなくないっ!俺はシズちゃんからのバレンタインチョコだけが欲しいんだよ!」

怒りを抑えて見守っていたら、
臨也が本格的に泣き出した静緒を抱き締めた。

「っ…ほんとに…?」
「本当だよ、俺にとって大事なのはチョコじゃなくて…静緒から貰った…っていう所なんだ。」
「………!//」

此処からだと抱き締められてる静緒の顔は全く見えないが、
今静緒の顔は真っ赤だろう。
そしてきっと、
とても嬉しそうに微笑んでいる。

「っ…じゃあ、これ、受け取ってくれる?//」

臨也から少し体を離した静緒が鞄から取り出した物を臨也に差し出した。
残念ながら此処からでは臨也が壁になって其れは見えないが、
昨日話していた静緒の手作りチョコだろう。
臨也は甘い物が余り好きではないからビターが良いだろうか…とか、
私の手作りなんかで喜んでくれるだろうか…とか、
静緒は少しでも臨也の好みに合う物を作ろうと色々と試行錯誤していた。

「勿論!ありがとうシズちゃん!今開けて良いかな?v」
「うっうん…//」
「…!わあ、まるで華みたいに綺麗だね!凄く美味しそうだ!v」
「エスプレッソ・ガナッシュって言って…その…いっ臨也、あんまり甘いの好きじゃないから…苦めに作ったんだ…//」
「ありがとう、シズちゃんv」

数分前とは打って変わって甘い空気を放つ2人。
私は2人に気付かれない様にそっとシューターを引き、
走り出す前に1度振り向いた。

(よかったな、静緒!)

幸せそうに笑う静緒に少し寂しさを感じながらも、
私は改めて2人を祝福した。

それに、何故か今無性に新羅に会いたくなった。
私は極力音を立てない様にしながら、
既に新羅が帰っているだろう家に向かって走り出した。

ああ、でもやはり悔しいな。
静緒をあんな笑顔にさせられる臨也が…。

END

〜あとがき〜

遅れてしまったバレンタイン小説、
しかも余り臨♀静が無いときてる!
しかし周りから見た臨静or臨♀静というのも好きなんです!←
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