「あ〜!面白かったな!」

主題曲が響き長いスタッフロールが流れるスクリーン。
シズちゃんはとても満足そうに笑っていて、可愛い…v

「なあ臨也!凄かったよな〜、あの刑務所とか船のアクションがさ!俺もあんな風にできねえかな?」
「シズちゃんなら練習すればすぐ出来るんじゃないかな?体柔らかいし、運動神経も良いしv」
「そうかな?(喜)」

にこにこと映画のパンフレットを捲るシズちゃん。
席を離れ映画館を出ても、パンフレットを両手で胸に抱え込む様にしてる。

「そんなに喜んでもらえたらなチケットを手に入れた甲斐があるよ。」
「へへっ、ありがとな臨也!」

パンフレットをしまっても笑顔のままなシズちゃんに、
俺はとても満足した。
シズちゃんにとったらやっぱりこれはデートじゃないだろうけど…。

「ねえシズちゃん、お腹空かない?」

さっきみたいに手を繋いでも、もうシズちゃんは恥ずかしがらない。

「そうだな、ならどっかでお昼にするか。」
「そうだね、シズちゃん何処が良い?」
「臨也の好きな所で良いよ。」

小さい頃から変わらない。
いつも選択を俺に譲ってくれた。

「じゃあシ「見つけたぜっ!折原静緒!!」

突然ドスの利いた野太い声が、
馴れ馴れしく俺のシズちゃんの名前を大声で発した。
振り向けば如何にも不良ですって感じの奴等がざっと15人くらい立っていて、
みんな包帯やらガーゼやらも体中のあちこちに着けている。

「この前の借り、たっっっぷり返して貰うぜ!!」
「覚悟しやがれっ!!」

セオリー通りの安い台詞を大声で喚き散らしている。
シズちゃんの可愛い顔が怒りの色に染まっていく。

「悪い臨也、下がってろ。」

これも小さい頃から変わらない。
シズちゃんはいつだって俺を守ろうとする。
弟を守る、としか考えていないだろう。
実際俺はシズちゃんよりは喧嘩が弱いから…。

「逆だよ、シズちゃんが下がってて。」
「は?おっおい!」

でも、好きな子に守られるなんて嫌だ。
シズちゃんに、大嫌いな喧嘩をさせるのはもっと嫌だ。

「…………(ぼそっ)」
「!!?」

俺は囁くだけで良い。
俺には、
シズちゃんを守る為にずっと研いできた武器があるんだから。

「?おまえ、何かしたのか?」
「別に何も!」

青褪めて「覚えてやがれ!」とか叫んで逃げていく男達の背中を見て、
シズちゃんは不思議そうに俺を見つめてくる。
俺はそれを笑顔で返し、シズちゃんの華奢な腕に腕を絡めた。

「いっ臨也?」
「俺はシズちゃんの彼氏だからね、俺がシズちゃんを守らないとv」
「か、彼氏って…。」
「…今日だけで良いからさ、シズちゃんも腕、絡めて?」
「………。」

シズちゃんは真っ赤になって俯いてる。
でも、絡み返してはくれないけど俺の腕を振り払わない。

「お昼だけどさ、俺、シズちゃんの御飯が食べたいなv」
「…は?」
「俺の好きなの、で良いんでしょ?外食よりシズちゃんの手料理の方が嬉しいなv」

シズちゃんは呆気に取られたという顔で俺を見る。
そんなにシズちゃんに俺のとびっきりの笑顔を見せれば、
シズちゃんは溜め息を吐き困った様に微笑んだ。

「しょうがねえな〜、なら帰る前にスーパーに…いやでも、確か冷蔵庫に少し材料があったな〜。」

頭の中で家の冷蔵庫の中身を思い出しているのだろう、
ブツブツと呟きながら歩くシズちゃん。
流石に俺だけが腕を組んでても仕方無いから、
シズちゃんとは再び指を絡めて手を繋ぐ。

周りに少しでも、
ちょっとでも恋人同士だと思われたくてシズちゃんにすり寄る。

「…臨也、オムライスで良いか?」
「勿論良いよ!シズちゃんのオムライス大好きだからね、またケチャップで俺の名前書いてね?」
「嫌だ、めんどくせえ。」
「そう言っても毎回書いてくれるよね〜、もうほんと、シズちゃん大好き!」

本当に…。

本当に…!

「?いざ…や?」

周りの目なんかどうだっていい…。

シズちゃんに嫌われるかもしれないけど、
我慢できなかった。

「……吃驚、した?」
「………した…。」
「………。」
「…おまえな、冗談が過ぎるぞ?」
「…うん、ごめんね?」

シズちゃんは呆れ顔で、だけど俺の手は離さないでくれた。
唇に残る甘い温もりを舐めながら、
俺はこの関係を憎んで…感謝した。

END

〜あとがき〜

お待たせしました!
由姫様、リクエストありがとうございます!
まさか悲恋紛いな弟臨→姉♀静の感想が頂けるとは思っていませんでしたので、
凄く嬉しいかったです!
余りリクエスト内容に沿えなかったかもしれませんが、
どうぞお持ち帰り下さい!
これからもよろしくお願い致します!
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