※弟臨也×姉静緒です。

「シズちゃんシズちゃん!」
「?何だよ、臨也…っつうか結局その呼び方なのな。」

シズちゃんが男と付き合う様になった当初、
俺はこの想いを捨てようとした。
姉さんと呼ぶ様にしたりして距離を置いた。

でもやっぱり捨てられなかった。

「シズちゃんはシズちゃんだからね!」
「何だよそれ…。」
「それより、シズちゃん明日暇?」
「…まあ暇だけど。」
「じゃあさ、一緒に映画観に行こうよ!v」
「は?」

だから逆に開き直る事にした。
シズちゃんに彼氏が居ようと、
シズちゃんと俺が実の姉弟だろうと、
俺はシズちゃんが好きなんだと。

シズちゃんが観たがってた人気映画のチケットをちょっとしたコネで手に入れ、
彼氏との約束が無い日を見計らって誘った。
シズちゃんは少し怪訝そうにしてたけどすぐ頷いてくれた。
これは男として見られてない故の、弟の特権だろうか?

「それでねシズちゃん、明日なんだけど待ち合わせにしない?」
「?何でだよ面倒臭い、一緒に家出れば良いだろ。」
「偶にはさ…良いでしょ?」

眉を下げて上目遣いに見れば、シズちゃんはそれ以上反論しない。
昔からシズちゃんはこれに弱い。
それを知った上で俺は今までこうしてシズちゃんにお願いをし、
叶えて貰っていた。

「彼氏と別れて…なんてお願いしたら、叶えてくれるのかな?(小声)」
「?何か言ったか?」
「ううん、何も!ああ明日が楽しみだなぁ!v」

知ってるよ、シズちゃんが今幸せだって事くらい。
シズちゃんの彼氏がシズちゃんを凄く大切にしてる事くらい。

………………………

翌日、俺は約束の時間の1時間前に待ち合わせ場所に着いた。
きっと今頃、シズちゃんも支度をして家を出る所だろう。

シズちゃんと出掛けるなんて、そりゃあ今まで何度もあった。
でもこうやって待ち合わせしてるってだけで、
不思議と気持ちが違うのは何でだろう?

「臨也!」

ふと愛しい声が聴こえて顔を上げると、
シズちゃんが俺の方に向かって駆けて来るのが見えた。

「おはようシズちゃん、早いね。」
「おっおまえが早過ぎるんだろっ!」
「だってシズちゃんと初めてのデートだからね、つい気合いが入っちゃったv」
「でっデートって…//」

デートって単語だけで赤くなる初なシズちゃん。
もっとじっくり見ていたいけどせっかくのシズちゃんとのデート、
1分1秒を大切にしたい。

「じゃあ行こっか、シズちゃん!v」
「あっああ!…って何だよこの手!?」

シズちゃんの小さな手を指を絡めて握って歩こうとしたら、
シズちゃんが赤い顔で叫んだ。

「何って、恋人繋ぎ?」
「おっおかしいだろ!百歩譲って手を繋ぐにしても、こんな…!//」
「百歩も譲るんだ…別に良いじゃない、デートなんだから。」
「デっ、デート…だから!姉弟なんだからデートとは言わねえだろ!//」

キャンキャンと仔犬みたいに吠えるシズちゃん。
<姉弟>という単語がちょっと胸に刺さったけど、
俺は笑ってシズちゃんの手を痛くない程度にギュッと握り締めた。

「細かい事は気にしない気にしない、ほら、そろそろ行かないと映画始まっちゃうよ?」
「…むう、…今日だけだからな!//」

真っ赤な顔で拗ねた様にそっぽを向くシズちゃん、
だけど俺の手をそっと握り返してくれた。
たったそれだけで、
俺は嬉しかった。

映画館にやってきた俺達は、スクリーンが1番よく見える真ん中の席に着いた。
観る映画は今大人気の俳優が主役を務めるアクション映画。
シズちゃんは物凄く期待に満ちた顔で、
ジッとスクリーンを見つめている。
俺はそんなシズちゃんの横顔を見つめた。
スクリーンが光り出し室内が暗くなっても…。

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