※キャラ崩壊激しいです。

※人間に耳と尻尾が生えた感じです。

昔の様な昔じゃない様な、そんなある所に1匹の狼がおりました。
通常狼は群れを作るのですが、その狼は普通の狼とは少し違っておりました。
狩りも生活も全て自分だけでこなせる程の知恵と身体能力を持っていて、
その性格上、群れという集団生活に適せなかったからです。

その狼の名前は臨也。

臨也は森の奥の奥にある洞穴を住処にしております。
臨也なりに快適に過ごせる様、洞穴の中には色々な工夫がされております。

「さあて、御飯でも狩りに行こうかな。」

水が入った手製の竹筒を首から提げ、
臨也は狩りへと出掛けました。

黒髪から生える真っ黒な耳を傾け尻尾を揺らして、異様な程静まりかえっている森の中を進みます。
ふと、臨也の耳に微かな音が聴こえてきました。
そしてその鋭敏な鼻はあの独特の臭いを嗅ぎとったのです。

気配を消して其方に向かい、少し手前で大きな茂みに潜んで音と臭いの発信源を覗きます。

次の瞬間、臨也はこれまで感じた事が無い衝撃を受けたのです。

一面にいっぱい咲き誇る白詰草。
その中心にペタンと座り込んで白詰草をもふもふと食べているのは兎でした。
蜂蜜の様な色をした綺麗な髪、
蒲公英の綿毛の様に白くふわふわな耳と尻尾、
大きな琥珀色の瞳、
スラリと長く雪みたいな肢体…。

臨也は目を奪われてしまいました、
今まで見てきたどんなモノよりも美しいその兎に…。

「…ねえ君。」
「!?」

思わず声を掛けてから臨也は後悔しました。
自分を見たら、兎はその名の通り脱兎の如く逃げてしまうでしょう。

しかし予想に反して兎は逃げるどころか悲鳴さえ上げません。

その大きな瞳に自分を映して首を傾げているのです。

「?誰??」
「っ、俺は臨也、この辺りを縄張りにしてる狼だよ。」
「おおかみ?」
「…狼を知らないの?」
「私が居た所にはいなかった。」

兎の言葉に納得した臨也は安心して兎に歩み寄りました。
傍で見るとより綺麗に見え、臨也は無意識に息を飲みます。

「見た事無いけど、一体何処から来たの?」
「お店、人間のお店に居たの。」
「…ああ、飼われてたの?」
「違う、殺されそうになったから逃げたんだ。」

臨也は驚愕しました。
こんなに綺麗な兎を殺そうだなんて、
人間はなんて馬鹿なんだろうと思いました。
臨也は怒りに歪めた顔を兎に見られたくなくて視線を下に向けましたが、
視界に入った真っ赤な水に目を剥きます。

「怪我…してるの?」
「あっ、うん、逃げる時掠った。」

ペタンと座っていた為に隠れて見えなかった細い脚、
其処から滴る臭いの正体に眉をひそめます。

「手当てしてあげるよ、俺の巣においで。」
「えっ?でも…。」
「どうせ行く所無いんでしょ?」

臨也が手を差し伸べると、流石に兎も躊躇いました。
ですが臨也の言う通りなので、兎はその手を取ります。

臨也はその瞬間歓喜に震えました。
今までに無い…そしてこの先これ以上のモノは現れないであろう、最高の獲物を手に入れたからです。

「ちょっと歩くけど大丈夫?」
「ん、平気だ。」
「なんなら背負ってあげようか?」
「っ必要無い!」

ムッと顔を歪め声を荒げながらも、握った手は離さない兎。
臨也はニヤリと笑って兎を自分の巣に連れて行きました。

「あっ、そういえば君、名前なんていうの?」
「……静緒。」
「しずお…うん、シズちゃんだねv」
「はっ!?何だよそのふざけた名前!」
「え〜?可愛いじゃんv」

手を繋いで歩く狼と兎を、身を隠していた森の動物達が呆然と見送りました。

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