※パソコンの中にいる設定
※津軽女体化

真っ白で数字で創られているこの空間に、一人で居るのはとても寂しいものがある。
俺は知っている。一人でいる期間があったから。とても退屈で、マスターに呼び出されない限りは歌う練習しかすることがなくて。
でも今の俺はもう一人じゃない。その人が《インストールされて(入って)》来てからはもうこの空間にいるのが苦にならなくなった。
「ただいま。」
何もない空間に突如として現れたのは長い金髪の女。着物を着ている彼女は俺を見て花のようにふわりと微笑んだ。
その姿を見ただけでこの真っ白なだけの空間が楽しくてウキウキするものに変わって、胸が高鳴る。
彼女の名前は津軽。俺も津軽も、マスターが暇潰しに作ったボーカロイドという電脳世界に住む歌唱ロボットだ。
マスターは最初に俺を作ったけど、俺には歌えない曲があった。その曲を歌うために作られたのが津軽だ。
「津軽、寂しかったよー!」
パソコンの中で出会い、俺たちは恋に落ちた。だから津軽は俺の彼女で、俺は津軽の彼氏。
綺麗なさらさらの金髪を撫でてその存在を確かめ、細い身体を抱き締めたら津軽が俺の背中に手をまわした。
「…私も、寂しかった。マスターのために、サイケのために、お仕事頑張ってきた。」
たくさんたくさん練習して、疲れている筈なのに決して顔には出さない。とても心優しくて慎ましやかで、努力家。
一度マスターに聞いたことがあるんだ、どうして津軽はこんなにいい子なのかって。そしたらマスターはこう答えた。
『サイケは眉目秀麗を具現化していて、津軽は大和撫子を具現化しているんだよ。』
確かに、津軽はまさに大和撫子という四字熟語が似合っていた。
着物も着ているし、まさに日本女性の鏡。でもそれは同時に欠点でもある。だから彼氏である俺は津軽を甘やかしてあげるんだ。
「津軽、久しぶりに一緒に寝ようよ!津軽と一緒に寝ないといい夢見れないもん!」
寝ていいよって言ったら気を遣うだろうから、誘ってあげる。
俺は津軽の性格を理解した上で言葉を選ぶ。それほど俺が津軽のことを愛してるという証。
「うん、最近一緒に寝れなかったもんね。私もサイケと一緒に寝たい。」
その言葉を聞いて、津軽をお姫様抱っこしてベッドまで運んであげる。その細い身体は想像以上に軽くて少し戸惑ってしまう。
ふと津軽の顔を見てみると耳まで赤くして俺の白いコートをぎゅっと掴んでいた。
「津軽可愛い…」
「可愛くなんか、ない…」
か細い声で反論していて、更に可愛く感じる。もう少し自信を持っていいのに、容姿も性格も良いから。
額にキスをしてあげると、津軽の顔からぼんっ!と音がして全身の力が抜けていた。
津軽の反応の一つ一つが俺のツボを突く。存在で既にメロメロになってしまっているのに、もう津軽以外考えられない程深みに嵌まっていく。津軽以外いらないと思えるくらいに。
「大好きだよ、津軽。」
「…サイケ…だ、だい、すき…」
大好きの一言さえ恥ずかしがっちゃう津軽に、俺の胸の鼓動がまた一段と早くなった。津軽の鼓動は俺のよりも早い。
ベッドに下ろして隣に寝転ぶと、津軽がお返しとばかりに俺の額にキスしてくれて。また一段と深みに嵌まった気がした。
(津軽さえいれば歌えなくてもいいだなんて、言ったらマスターはどんな表情をするだろう?)

END

1000hit企画にくれーぷ様にリクエストし、書いて頂いたサイケ×♀津軽でございます!
女体化した津軽はまさに大和撫子!綺麗で可愛いです!
くれーぷ様、ありがとうございます!
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