「いぃぃぃざぁぁやぁああ!」
何。何なの。
人が寝ているときに邪魔をするなんて。男の子の高い声が聞こえてきて思わず不機嫌になる。
最近忙しくてシズちゃんと一緒に寝れなくて、約二週間ぶりに本物のシズちゃんを抱き枕代わりにして寝れたのに。
誰?俺の安眠を邪魔する奴は。
「いざや!てめぇ、おれになにをもった!」
目を開けて見れば五歳くらいの金髪の男の子が目尻をつり上げ、眉間に皺を寄せながら俺の胸ぐらを掴んでいた。
よく考えればここは俺とシズちゃん、そしてサイケと津軽の家。それ以外の人が俺を起こすなんてありえない。
……じゃあ、この幼稚園児は誰?
「きいてんのか!」
「……もしかして…シズちゃん…?」
「ああそうだよ!おれにこんなことをするようなへんたい、てめぇしかいねぇ!」
ちっちゃいとはいえ普通の幼稚園児よりは力はあるらしく、俺の胸ぐらを掴んだままがくがくと揺さぶった。
「…全部平仮名で喋る舌足らずなシズちゃん、かわいい…」
「うるせぇだまれへんたい!」
本音を言ったら黙れと言われてしまったから黙ることにする。小さいシズちゃんに変態って言われると、なんかそそられるものがあるね、うん。
言っとくけど俺はショタコンじゃない。言うなればシズちゃんコンプレックス、略してシズコンだ。シスコンっぽいな。
しかし、シズちゃんの今の格好はヤバい。小さくなった身体に合わなくなったパジャマは俺の横に脱ぎ捨てられている。だからシズちゃんは全裸で俺に跨がっている。
「その白くて柔らかい太ももに触ったらきっと気持t」
「いますぐだまらねぇと、おれのこぶしをそのうるさいくちにねじこむぞ。」
やだなぁ、冗談じゃないと笑っておどけてみるもシズちゃんは俺を睨み付けてきた。
ちっちゃい子に睨まれても怖くないし、むしろ可愛いよね。小さいなりの精一杯の抵抗、みたいな感じで。
そんな感じで小さいシズちゃんに揺さぶられながらも癒されていると、
「いざやあああぁぁぁぁ!」
家の中に別の声が響いた。
叫びながら寝室に入ってきたのはサイケだった。
サイケもシズちゃんと同じように目尻をつり上げていた。
でも一つだけシズちゃんと違って息切れをしていた。俺たちの寝室に来るまでに走ったのかな。
「つ、つがるに、何をしたの!」
訂正。サイケの息切れは興奮しているからだ。
「津軽も小さくなっちゃったの?てか、何でみんな俺を疑うの?ホントに知らないよ。」
「こんなことするようなへんたいは、おまえだけだからな。」
「そうだよ!…って、その後ろ姿は、しずおなの?」
「おはよう、さいけ。」
「しずおじゃ飽き足らず、つがるも小さくしたの…?」
「ホントに知らないんだってば。だからそんな軽蔑した眼差しを向けないでよ。」
全裸のシズちゃんを抱き上げて、とりあえず俺愛用の黒いジャケットを着させる。全裸よりはいくらかマシなはずだ。
「さいけぇー…」
小さいシズちゃんと同じ声が部屋の外から聞こえてきた。きっと津軽だ。
「さいけ、いた!さいけぇ、わぷっ!」
「つがる!大丈夫!?」
バタッと音がしたので、恐らく津軽は少しぶかぶかになった羽織の裾を踏んで転んでしまったのだろう。
サイケを追いかければ、フローリングにキスしている津軽の姿があった。身長とかはシズちゃんと同じくらい。
「ふぇ、さいけ…」
「ああ、泣かないでつがるっ」
大きな蒼い瞳からぽろぽろと涙を流し始めてしまった津軽をサイケが抱き締め、シズちゃんは俺の腕の中から下りて津軽の頭をなでなでした。
「はう……しずお?」
「なくな、つがる。」
「…ん。」
落ち着いたのか、津軽はシズちゃんに、にぱっと笑いかけた。
それを見たシズちゃんが微笑む。
今ならシズちゃんと津軽に欲情できるかもしれない。だってシズコンだからさ、俺。
そんなことを思ってたらサイケに睨まれた。結構本気の目をしてたから怖かった。

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