最近臨也が仕事で忙しいらしく、会うことすらできなくて。
電話越しでは強がって見せたけど本当は寂しくて。
最後に会ってから一ヶ月、最後に声を聴いてから三週間が経過した。
たった一ヶ月会えないだけで会いたいだなんて女々しいな、と思い臨也のことをできるだけ考えないようにしたがやはり自分の気持ちには嘘をつけなくて。
臨也に一目でも会いに行こうかなと思ってからの行動は自分でも驚くくらい早くて。いつの間にか新宿に着いて臨也がいるマンションの目の前まで来ていた。
「…迷惑だったらどうしよう…」
ここまで来たんだから、もうどうにでもなれ!と中に入ろうとして足を止める。
直感的に、臨也はここに居ないと思ったのだ。
じゃあどこに行っているのだろうか。やはり仕事に出掛けているのだろうか。
せっかく新宿に来たのだから、ちょっと歩いてみようと思い立ち俺は当てもなく歩くことにした。
因みに、今の服装はパーカーに細身のジーンズだ。他人より背が高いから目立つことには変わりはないが、いつものバーテン服よりは人目を気にしなくて済む。
そして何十分歩いたかわからなくなっていた時に、俺は人混みに溶け込む黒色を見つけた。
見間違えるはずがない、あの後ろ姿は臨也だ。
臨也はいつもの黒いコートを着ていなかった。黒とは対称的な、白いシャツ。下はいつもの黒いスラックスだったが。そして黒い帽子を深々と被っている。
近くまで行って後ろから声をかけて驚かせてやろう、いつも驚かされてばかりだからと若干の復讐心を胸に秘めて臨也の近くまで行くと気付いた。
臨也は一人じゃなかった。
隣には黒い髪を腰まで伸ばした見知らぬ女性がいた。
二人は仲良さげに歩いていて、女性は臨也の左腕に抱きついたまま歩いている。
話の内容までは聞き取れなかったが声色からして二人は楽しそうだ。
女性の横顔がちらっと見えたが、美人だった。
俺が入れる隙など、どこにもない。
「…っ!」
何もかも投げ捨てたくなり、咄嗟にその場から逃げた。
臨也に見せつけられたような気がした。臨也に言われたような気がした。
『シズちゃんはもう用済みだから。』
俺の頭の中で臨也の心の声が聞こえたような気がした。聞きたくない、聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない!
『もうシズちゃんに飽きちゃったんだよねぇ。』
そんなこと言わないでお願い俺を捨てないで俺を嫌わないでお願い、俺を一人にさせないで。
『じゃ、バイバーイ!』
「うあああぁあぁあああぁぁあああああ!!」
自分がどんな目で見られているのかそんなの気にしている余裕はなかった。
ただただ逃げたかった。
ただただ叫びたかった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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