今朝は起きた時から津軽の様子が変だった。
苦しそうな顔を時折見せながら平然を装っていたから。
俺が知ってる津軽は、笑顔が素敵でかっこよくて可愛い。
でも今日の津軽は笑顔が一切なくて。何も聞かないでくれ、という顔をしていたから俺は何も言わなかった。
でもマスターもその異常に気付き、津軽にこう言った。
「メンテナンスするよ。」
津軽は最初は嫌がった。マスターに迷惑かけたくないから、と。でもマスターと俺が説得してなんとかメンテナンスに取り掛からせることができた。
メンテナンス中は基本的にお互い会わないことにしている。自分の身体に繋がれたコードとか見られたくなくて。
ボーカロイドなのだからそんな姿になるのは当たり前のことなんだけど、恋人に見られるのだけは避けたい。
「あっ、マスター…」
メンテナンスをするための部屋からマスターが出てきた。
「ウィルスにかかってたから、目を覚ますまではしばらくかかりそうなんだ。…サイケ、傍にいてあげたらどう?」
「…っはい!」
マスターの許可を貰って俺は部屋の中に入る。そこには椅子に座って、様々な色のコードが手足に繋がられている津軽の姿があった。
「…津軽。」
目を固く閉じている津軽は、マスターの言う通りしばらくは目を覚ましそうにない。
目の前にいるのに、津軽は動かない。目を覚まさないのはわかっているのに不安にかられてしまう。
「早く目を覚まして…」
頬に触れると、いつもは温かいのにすっかり冷たくなってしまっていた。
人間も死ぬ時は冷たくなるって聞いたことがある。そんな情報を思い出しては忘れようと頭を振る。
何も聞こえない、無音の世界。
今は津軽は電源を切っているから心音は聞こえない。
僕の心音と、呼吸をする音だけ。
寂しくて、温かさを求めて、俺は座っている津軽の膝を枕代わりにして傍でただひたすら目を覚ますのを待った。
「…さいけ?」
ふと感じた温かさと綺麗な声に目を覚ますと津軽が僕の頭をゆっくりと撫でていた。心地好い。
「津軽、起きた!大丈夫?」
「ん、心配かけてごめん。」
すっかりと顔色が良くなった津軽が微笑む。ああ良かった。このまま君を失ってしまったらどうしようと思っていた。
「でも本当に良かった。大好きだよ津軽!また一緒に歌を歌おうね?」
唇同士が触れ合うだけの軽いキスをしたら津軽が嬉しそうに笑う。
「俺も大好き、サイケが恋人で良かった。」
もう、君が俺の世界そのものなんだ!

end

………………………
1000hit企画にくれーぷ様にリクエストし、書いて頂いたサイ津でございます!
お互いに相手を必要としてるサイ津が素敵です!
くれーぷ様、ありがとうございます!
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