「わあっ!」
思わずテンションが上がってしまう。夏祭りなんて小学生の頃を最後に一回も来たことなかった。
わたがしや金魚すくいなどの定番はもちろんのこと、りんご飴や射的などもあり、どこからまわろうか迷ってしまう。
「かんら、かんら!ねぇねぇ、どこから行く?」
下駄をカラカラと鳴らしながら甘楽に近付くと、甘楽はポスターを凝視していた。
「甘楽?」
甘楽が凝視していたのはこの夏祭りのプログラムのポスターだった。どうしたんだろう。
「花火もあがるみたいだね。花火があがるまで何しよっか?」
こんなに楽しそうな甘楽の顔を見たことない。花火、好きなのか?
「りんご飴食べたいんだ。甘楽も食べよう?」
「シズちゃんは本当に甘いもの好きだよね!じゃあ買ってあげるね!」
「え、私だってお金あるんだから大丈夫だよ!自分で買うから…」
「いいって、今日は奢りたい気分なんだ!シズちゃんとのデートでちょっと興奮してるのもあるけどね。おじさん!りんご飴二つくださーい。」
一緒に買い物することはあっても遊びに行ったことないもんなぁ。りんご飴を一つ受け取り、かぶり付いたら甘い味が口の中に広がった。美味しい。
「ふふ、シズちゃんってりんご飴が似合うね。」
何でだ?
「何となくそんな感じがする!ねぇ、おじさんもそう思うでしょ?」
りんご飴のおじさんにいきなり同意を求めるなよ、困ってるだろっ!
「あ、この子ねぇ、私の彼女なんだー!いいでしょー羨ましいでしょー!こんな可愛い子の彼氏なんだよ私!」
「甘楽!もう!」
手を引きその場から離れる。私の顔はりんご飴に負けないくらい真っ赤になってると思う。
「あ、シズちゃん!ヨーヨーつりだって!やる?」
「やる!勝負しよう!」
「シズちゃんには負けないよー」
余裕そうにりんご飴を食べている甘楽の様子に私の闘争心がメラッと燃えて。
結局、甘楽が五つで私が三つで勝負には負けたんだけど。さすがにそんなにいらないから一つもらうことにした。
左手にはりんご飴、右手にはヨーヨー。歩きながら紫色のヨーヨーで遊んでみる。この年になってもヨーヨー遊びは楽しくて。ヨーヨーは偉大だな。
「シズちゃん、あそこにわたがしとかき氷あるよ!」
「食べるっ!」
「りんご飴食べてからね?」
「ん!」
赤子をあやすように言われて素直にこくんと頷き、人混みから少し離れたところで一緒にりんご飴をもくもくと食べていると甘楽がぴったりとくっついてきた。
「暑い。」
「幸せなんだもん、シズちゃんとこうしてデートできてさ。」
私も嬉しい、とりんご飴から口を離して話そうとしたら、甘楽が私にキスしてきて。
突然のことで硬直していると唇が離れて、私の唇を甘楽の赤い舌がぺろっと舐めた。
「シズちゃんの唇、甘いね。」
「…甘楽のも、甘い。」
りんご飴食べてるから当たり前だろ、と言う余裕もなくなった私はただただ「甘い」とぶつぶつと呟くのだった。
それからいちご味のかき氷とわたがしを食べた。
射的で甘楽に再挑戦するもまた負けて。悔しくてむすっとしていると甘楽が射的でとった大きなうさぎのぬいぐるみをくれた。もふもふして気持ち良いから悔しいなんて感情をすぐに忘れた。
それから甘楽がとっておきの場所があると言って、誰もいない土手に連れて行ってもらった。
他愛もない話をしていると花火が上がって、誰もいないし花火はよく見えるし。すごい綺麗だった。
赤や緑や青やオレンジの花火が次々に上がっては消え、上がっては消え。
綺麗だけど、この一瞬のために職人はどれだけの時間を費やしたんだろう、なんて考えながらぼんやりと眺めている間にまたキスされて。
「また来年も来ようね?」
逆光で甘楽の表情はよくわからなかったけど、嬉しそうな表情をしていたと思う。
「楽しかったし、また来年も甘楽と一緒にここに来たいな。」
私も楽しかったけど、甘楽が楽しそうな表情をしていたのが一番嬉しかった、なんて言ったら襲われそうだから言ってあげない。

end

………………………
1000hit企画にくれーぷ様にリクエストし、書いて頂いた甘楽×静緒です!
浴衣姿の美女が2人イチャイチャしていたら眼福ですね!←
くれーぷ様、ありがとうございます!
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