「シズちゃん!夏祭りに一緒に行こう!」
トムさんと取り立て中に目の前に現れたのは全身真っ黒の人間、折原甘楽だった。
全身真っ黒だから白い肌が映えていていて同性でも色気を感じてしまう。特に鎖骨とか、胸元の谷間とか。
それにしても黒ずくめで暑くないのか。本人はむしろ涼しそうな顔をしている。部分的に黒い服を着ている私でさえ暑くて脱ぎたいくらいなのに。
「夏祭り?」
「うん、夏祭り!今度の日曜日!休みだよね?いいよね?」
何で甘楽が私の休みまで把握しているんだ、と突っ込みたくなったがこの際気にしないことにする。
断る理由も無かったので黙って頷くと甘楽がキラキラと目を輝かせて抱きついてきた。暑い。
「じゃあ日曜日の17時頃に私の家に来てね!絶対だよ!」
薄いピンク色の唇に弧を描き、甘楽はスキップしながら去って行った。
スキップする甘楽が可愛くて思わず微笑む。そんなに嬉しかったのか。
日曜日の17時になって、私は時間通り甘楽のマンションに着いた。鍵を開けられて入って行き、ドアを開ける。
「シズちゃん!待ってたぁ!」
何で甘楽、息荒くしてるんだ?
「さ、バーテン服を脱いで!」
…ん?
「私が脱がせてもいいの?ハァハァ!じゃあ脱がすよ!」
ポカーンとしているとドアを閉められ手を引かれ、リビングに入ると甘楽が背後にまわり私の服をどんどん脱がしていく。
「やっ、かんら…!」
「脱がないなら脱がしていくよ?ほらほらー」
黒いベストとカッターシャツのボタンを外されブラジャーがさらけ出される。
「あ…っ!」
「ふふ、いつもなら胸を揉むとこだけど今日はしないでおくね?…あ、今日はガーターストッキングだったんだね。セクシー…襲っちゃいそう。」
スカートとストッキングも脱がされてしまいブラジャーとパンツしか着ていない姿にされてしまう。
恥ずかしくて太ももを重ね合わせて両腕で胸を隠していると、甘楽は何かを私に着させた。
「はい、これ着て…」
よくわからず着ると、それは白地に水色と黄色と薄いピンク色の花が描かれた可愛い浴衣だった。
「甘楽…これは?」
「言ったでしょ?夏祭り、一緒に行くって!」
「っわ、私、浴衣のお金持ってきてない…!」
「いいのいいの、私が勝手にシズちゃんに着せたいと思ったものを買っただけだからさ。」
前にまわってきた甘楽がにっこりと笑ってすぐに着付けをしてくれて。
黄色い帯を締めてちょっと皺を伸ばしたら完成した。
「難しい結び方の方が可愛いんだけどそこまでは覚えられなかったんだ、ごめんね。」
「ううん、浴衣を着させてもらっただけでも嬉しい。」
今まで浴衣…着物なんて七五三くらいでしか着たことなかったから、興奮してその場で一回転した。
「じゃあついでに髪も結んじゃおうか!」
ソファーに座るように促されたのでソファーまで歩くと、浴衣の裾があまりひろがないのでこけそうになる。今まで自分がどれだけ女らしくしてなかったか思い知らされた気がして恥ずかしくなった。
「やっぱりお団子が一番可愛いよねー。」
甘楽は私の切り揃えていない髪を後頭部で手際よくお団子にすると、にこにこと笑った。
「待っててねシズちゃん、私も着替えてくるからさ。」
波江さーん!と言いながらぱたぱたと走っていくのを見て、ここに居るのは二人だけじゃなかったのかと恥ずかしくなる。
数分後、白い花が描かれた紺色の浴衣を着た甘楽が部屋から出てきた。私と同じお団子にしていて、くるりと一回転した。
「似合うー?」
正直言って、ぽーっと見とれてしまった。元々美人だから何を着ても似合うのだが、浴衣を着ることで何だか艶かしさが増して。白くて色っぽいうなじが紺色の浴衣に綺麗に映えていて、とても似合っていて、和風の色っぽさが滲み出ている。
「やだシズちゃん、そんなに見つめられると照れちゃう。」
「だって、似合ってるんだもん。可愛いよ甘楽。」
甘楽は頬をほんのりと赤くして照れ臭そうに笑った。
こうしてたら甘楽も普通に可愛いのになぁ。
「二人ともよく似合ってるわね。鍵はちゃんと掛けておくから、早く行きなさい。」
「ありがとう波江さん!さぁシズちゃん、行こう!」
甘楽と同じような、黒髪のロングヘアーの人に会釈をする。あの人ってあまり笑わないイメージあったんだけど、笑うとすごく綺麗だな。
黒のロングヘアーの美女が二人も揃うと気分が高揚するなぁなんて思いながら、私は甘楽に手を引かれ家を後にした。

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