それから放課後になり、二人でシズちゃんの家に向かった。
「あ……」
シズちゃん家のドアには精液がべっとりとついていて。
シズちゃんも嫌そうな顔をしていたが私の今の顔はもっと酷いと思う。まだ顔も見ぬストーカーに激しい怒りを覚える。
私のシズちゃんになんてことを。
「…ごめんな…変なもの、見せて…。」
「気にしてないから大丈夫だよ。それよりもシズちゃんの方が大丈夫?」
ガタガタと震えながら言うシズちゃんが愛しくて、頭を撫でてあげる。するとシズちゃんはまた涙をポロポロと溢しながら私に抱きついて声を押し殺して泣いた。
シズちゃんにこんな顔をさせたくなかったのに、絶対、絶対許さない。
汚いものをウェットティッシュで拭き取り、中に入る。中は荒らされてないみたいで一安心した。
「今、ジュース持ってくるから待っててな。」
精一杯笑顔で笑うシズちゃんがとても愛しくて、悲しくて、痛々しくて。
ストーカーされたことないから私にはシズちゃんの気持ちを理解できる訳ではない。でも、その悲しみや痛みを少しでも共有することができたら。
あれ、なんでだろう、シズちゃんを見ていたら、涙が出そう。初めてシズちゃんの部屋に入って、シズちゃんの匂いが充満してるのに、ちっとも幸せじゃない。
きっと、シズちゃんが笑ってないからだろうな。
「今日はありがとな、甘楽が居るだけで落ち着く…」
まだカタカタと震える手でテーブルに私の分とシズちゃんの分のジュースを置いて眉を八の字にして笑う。
「シズちゃんの助けになりたいからさ!もう大丈夫だよ、心配しないで。」
にこっと微笑むと、シズちゃんもやっと笑ってくれた。うん、やっぱりシズちゃんには笑顔が似合うね、可愛い。
「ごめん、お風呂に入らせてもらってもいいかな?ここに来るまでに汗かいちゃった。」
「ん、いいぞ。沸かしてくる。」
シズちゃんが立ってリビングから見えなくなったところで、シズちゃんのジュースに手際よく睡眠薬を入れる。
シズちゃんと分かれた後、実は授業をサボって家から睡眠薬と小型カメラ数台を持って来た。それからシズちゃんがつけそうな薄いピンク色のブラジャーとパンツも買った。
「数分で沸くから、もうちょっと我慢してくれるか?」
「うん、ありがとう。」
何食わぬ顔でお礼を言い、ジュースを飲む。シズちゃんも喉が渇いていたらしく、ジュースを一気に飲み干した。
それから他愛もない話をしている内にお風呂が沸いて、私はお風呂を借りるために荷物を持ったまま風呂場に向かう。
風呂場も綺麗で、シズちゃんの匂いが充満していて幸せな気分になって顔の筋肉を緩める。でも今はそんなことを考えている場合じゃないと顔の筋肉を引き締める。
お風呂に入ることなく風呂場から出ると予想通りシズちゃんはソファーの上ですやすやと寝息をたてていた。
初めて見るシズちゃんの寝顔に興奮しながらも、タオルケットを探してシズちゃんにかけてあげる。
「私が必ず守るからね。」
頭を一度撫でると、穏やかな表情になった。くす、と笑いシズちゃんから離れてベランダに出る。そして買ってきたブラジャーとパンツを洗濯ばさみで挟み、それらしく見えるようにそれらをサンドイッチするように両側にタオルを挟む。
どこから来ても顔がわかるようにベランダにカメラを五台ほど取り付けて、ベランダを出る。
シズちゃんが眠る傍で私はカメラの映像を見つめる。録画しているから見る必要はないんだけど、一刻も早く犯人を特定してシズちゃんを助けたいから見ておく。
二時間後、カメラに細身の男が映った。その男は慣れた手つきで私が用意した下着を盗って行った。
「…へぇ…この男が…ふぅん。」
ベランダのカメラとタオルを回収して鞄からノートパソコンを取り出し男の特徴を打ち込む。そこから私独自のやり方で、パソコンとケータイを駆使して男の個人情報を掴む。
それから色んなところに電話をして一息つく。
「……チェックメイト。」
パソコンを閉じてシズちゃんをベッドに運び、お風呂を借りる。
今すぐにでも男に復讐してやりたかったが、私が居なくなってたらシズちゃんが驚くと思うから起きるまでシズちゃんの傍にいる。
お風呂に入ってさっぱりした後、シズちゃんが寝ているベッドに一緒に横になる。
「誰にも渡さない、私だけのもの…貴女を悲しませる者は誰であろうと許さない…」
額へのキスは、誓いの証。

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