「ケーキたっのしみだねー!」
「了(そうね)」
「うん!」
池袋の街を少女三人楽しげに会話をしながら歩く。双子らしき姉妹と、その子たちより5、6歳程年下とおぼしき少女である。
「マイルおねぇちゃんとクルリおねぇちゃんは甘いもの好きなの?」
「うん?私もクル姉も好きだけど、もっと好きな人知ってるよ?」
マイルと呼ばれた少女がそう答えると、賛同するようにクルリと呼ばれた少女も頷く。
「了(よく知ってる)」
「…?私の知ってる人?」
「知ってるも何も…あ、噂をすれば…!」
マイルはその人物を見つけたのか、その人物目掛けてかけていき、思いっきりダイブする。
「しーずーおーさーん!」
「…っ、マイル!毎度毎度飛びつくなって言って…っ」
静雄のポリシーで女の子にキレたりはよっぽどのことがないとしないが、一応たしなめる。
「あのね、静雄さん!」
「聞けよ!」
静雄の言葉は完全スルーで話し始めるマイル。
「私たちこれからスイーツ食べに行くの!」
「…?良かったな」
「でね、静雄さんも一緒にいこー!」
「了(行こう)」
「はぁ?なんで俺が…」
「だって静雄さん甘いもの大好きでしょ?」
「いや、まあ好きだが…」
マイルの言葉に静雄は否定はせず。
「だったら、ね、行こうよー!」
「いや、俺は仕事中…」
「そんなのいいからいこ!」
「そんなのってお前らなぁ。とにかく俺は行かねぇぞ」
「えー!静雄さんいないとつまんなーい!」
きっぱり断る静雄にマイルは駄々をこねる。
「なんでそうなる。三人で楽しんできたらいいだろ」
「静雄お兄ちゃん行こうよ」
「…茜」
「願」
くいくいと両手を引っ張って見つめてくる茜とクルリ。さらにマイルもベストをぐいぐいと引っ張る。それにみかねたトムは、静雄に言う。
「静雄、行ってこい」
「え、でも…」
「どのみち今から昼飯だし。行ってこいや」
「…トムさんは」
「俺はいい。ちょっと行くとこあるからよ。だから行ってこい」
「…じゃあ、行きます」
トムにそう言われ、断る理由もなくなり、静雄は了承する。
「ホント…!?やった!はやく行こうよー!」
「行こ、静雄お兄ちゃん」
「…」
三人は静雄の手をとって歩きはじめるが、静雄は一度立ち止まってトムに「トムさんの用事終わったら知らせてください」と言って立ち去る。
「…一時間ぐらいでいいか」
と静雄がいなくなったのを見計らってぽつりと呟くトムであった。

池袋某所ケーキバイキング店。
「…うまいな」
「でしょ?もっと食べなよー」
「ああ…」
静雄はもくもくとスイーツを食べ、皿いっぱいに乗っていたケーキを全てたいらげる。普段よく暴れているとは思えない穏やかな幸せな表情を静雄は浮かべ。
「静雄さん、これおいしいよー」
「此(こっちのも美味しい)」
「静雄お兄ちゃんこれ食べてみて」
少女たち三人にケーキを差し出される池袋最強というはたから見ると不思議な構図が成り立っている。そもそも平和島静雄とスイーツというのがどうにも結び付かない。いや、でも、さっきすんごい勢いで食べてたよな。なんて他の客が思っていると。
「静雄さん、あーん♪」
「…っ、自分で食える」
「ダメだよ!ほら、あーん♪」
「…っ、あ、あー」
そう言って静雄は観念したように、少し赤い顔でマイルの差し出したフォークに顔を近づけ、口に含むとケーキを受け取りもふもふと咀嚼する。それはまるで雛鳥が食べ物を与えられる時のように可愛らしく。
「静雄さんっ…!か、可愛い!」
「愛(可愛い)」
「静雄お兄ちゃん、私も!」
「え、いや、もうやらねぇよ」
完全に照れている静雄がそう言うと、茜は悲しそうにする。
「…静雄お兄ちゃんは私からは貰いたくないの?私のこと嫌い?」
「そんなわけねぇだろ」
「でも食べてくれないもん。やっぱり私のこと嫌いなんだ」
うるうるとした目で見つめられると静雄は為す術もなく。
「っ…わかったよ…!食うからそんな顔すんな」
「ホント?」
静雄の言葉に茜はぱあっと顔を輝かせ、静雄にフォークを差し出す。
「ん…」
それを口に含んでケーキをとる静雄は、先ほどより更に顔が赤くなっている。
「食(食べて)」
さらにクルリがプリンを掬ったスプーンを差し出してきて、静雄は茜とマイルにやった手前、クルリにだけしないわけにはいかなくて素直に食べる。
「…ん、んまい」
「おいしいよね」
「了(そうね)」
「うん」
「実は、一回来てみたかったんだが、一人じゃはいりづれぇし…だから誘ってくれてありがとな」
そう言って穏やかに笑う静雄に三人は、
「静雄さんてば可愛いすぎるよぅ!」
「愛(可愛い)」
「静雄お兄ちゃんはカッコイイけど可愛いね」
なんて言う。
「か、可愛くねぇよ」
と真っ赤になった静雄が反論するが、そんな静雄に三人だけでなく、周りの人間も可愛いかもしれないと思うのだった。

End

同じく、『あくまで』の由姫様に一万打企画で書いて頂いたものです!
女の子×静雄は凄く可愛くて癒されます!
由姫様、ありがとうございます!
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