※Psychedelic Days設定なサイ津+子静

「いぃいいいいざぁああああやぁああああ!」
突如響いた大きな声に、スリープ状態になっていたサイケは目を覚ました。
その発音には覚えがあったが、声が違う。日頃聞くよりもずっと高い声は、子静のものだ。
「子静?」
驚いたサイケがフォルダから出ると、目の前をカーソルが通り過ぎた。
デスクトップの角に当たったカーソルが落ちるのを確認すると、サイケは飛んできた方を見る。
「どうかした、の……?」
「ころす!めらっところす!」
ぷくーっと頬を膨らませた子静が、ゴミ箱のアイコンを高く振り上げ、サイケの方へと投げつけようとしていた。
驚いたサイケが避けると、先程のカーソルと同じように、アイコンは落ちる。
「ちょ、ちょっと子静?何があったの?」
サイケが驚いて尋ねると、子静は今度は臨也の遊び用のフォルダを振り上げる。これはまずい。
サイケの記憶が正しければ、あのフォルダにはサイケたちのプログラムのファイルが入っている。
中身のデータが消えてしまえば、臨也に叱られてしまうどころか、存在さえ危うい。
「子静?」
不意に津軽が顔を出した。
いつもと違う位置にあるゴミ箱のアイコンと、子静の振り上げているフォルダを見て首を傾げた。
「何かあったのか?」
「俺もよく分からないんだけど……」
困り顔でサイケが答えると、津軽は子静を見る。
津軽と目が合った瞬間、子静はにっこりと微笑んだ。
「なんでまだいきしてるのかなぁ」
それは臨也の話し方によく似ている。サイケと津軽が目を丸くすると、子静はとてとてと落ちていたカーソルに近付く。
そしてカーソルを拾うと、津軽に向かって切りかかった。
「子静!」
「危ない!」
津軽が避けるのを確認し、サイケは子静を後ろから捕まえる。
ウイルスでも入り込んだのか、とハラハラしながら津軽は子静を見つめていた。
子静はきょとん、としたあと、ぽいっとカーソルを投げ捨てる。
ひとまず、サイケと津軽は胸をなで下ろした。
「子静、どうかしたのか?」
「いきなりどうしたの?」
何かなければ、子静があんなことをするはずがない。
二人が尋ねると、子静はにぱっと笑う。それはいつもと同じ笑顔だ。
「ますたーとシズちゃんのまね!」
「「は?」」
「ねっとでみたの!どーん、ばーん、すぱーっ、してた!」
どうやら、臨也と静雄の真似をしていたらしい。
子静にとっては単なるごっこ遊びだったのだろう。
津軽ははぁ、とため息を吐いた。サイケもほっとすると、子静を捕まえていた手を離す。
遊びであろうと危ないことは危ない。
サイケは子静を叱ろうと、しゃがんで目線を合わせた。
「子静、あのね――」
「いざやぁ……」
「え?」
ちゅ、と子静の唇がサイケの唇に触れる。
サイケが固まっていると、子静は楽しそうに笑い、今度は津軽に飛びついて押し倒した。
そうして、
「あいしてるよ」
臨也そっくりの口調でそう言うと、今度は津軽にキスをした。
あまりのことに、サイケと津軽はピシリと固まってしまった。
二人だって、臨也と静雄がそういった行為を致しているところを見たことがない。
いったいいつ見たのか、と思いつつ、二人は同時にため息を吐いた。
「子静、マスターとシズちゃんの真似は禁止!」
「どうして?」
サイケの言葉に子静はこてんと首を傾げる。
子静は先程の暴力じみた行為も、その後の愛を伝える行為も、まだきちんと理解していない。だから真似てみただけなのだろう。
「危ないし、それに……キスは、その……」
「子静、ほっぺならいいけど口にはだめだ」
「ますたーとシズちゃんも、さいけとつがるもしてるのに?」
「なっ……!」
思わぬ子静の反論に、津軽はかぁ、と顔を赤くして俯いてしまった。
サイケは困ったように笑うと、そっと子静の頭をなでた。
「そうだなぁ……口へのキスは、胸がドキドキする相手にするものなんだよ」
「どきどき?」
「子静にもそのうち分かるよ」
サイケが優しくそう言うと、子静はこっくり頷いた。
どきどき、と口にしながら胸の辺りを触る子静を見て、サイケと津軽は顔を見合わせて笑った。

おわり

『TIGHTROPE』の七草様に、10000hit企画で御執筆頂いた小説でございます!
このシリーズ、みんな可愛くて大好きなんです!
七草様、ありがとうございます!
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