▽ unhappy gift
※【貴方と私の愛のカタチ】よりゼロの執行人ネタです。
東都を混乱に陥れたNAZU不正アクセスによる無人探査機「はくちょう」の落下騒動が解決したと警察庁に連絡が入った頃、突如私の携帯が鳴った。非通知と表示された画面に眉を潜めながらも応答をスワイプする。
「はい。」
『僕だ。』
この忙しいときに一体誰からだと思ったら、まさかの零だった。
「降谷くん!?ちょっと大丈夫なの?怪我は?」
『ああ。大したことはない。』
「・・・よかった。」
私は安心して膝から崩れ落ちそうになるのをなんとか踏み止まる。
『・・・優華、頼みたいことがあるんだが。』
零がどことなく言いにくそうに切り出した。
「何?」
零が言いよどむことなんて珍しいこともあるものだ。私はそんなことを思いながらも零を促す。
『ちょっと色々やらかしてしまってな。後処理を頼みたいんだ。』
何を言い出すのかと思えば後処理の件だった。そんなこといつものことなのになぜそんなに言いよどむのか。
「わかった。何をしたらいいの?」
私は零の説明を聞いた後、簡単に請け負ったことをすぐに後悔した。
「・・・あのさ・・・降谷くん。」
『言いたいことはわかる。・・・悪いが頼んだぞ。』
「ちょっと・・・!」
私の言いたいことなどお見通しなのだろう。零は言いたいことだけ言うとあっさりと電話を切ってしまった。私は無情にも通話終了を告げる音に呆然と立ち尽くす。そしてこみ上げてくる頭痛をこらえるように額をおさえた。傍から同僚が「どうした?」と声をかけてきたが、返事をする余裕もない。
建築途中のビルの破壊行為は・・・まだいい。「はくちょう」の落下地点からも近かったし、いくらでも誤魔化しようがある。が、一般車両の側面走行に電車の側面走行、電車の天井走行。・・・何ということをやらかしているんだろう。生きているのが不思議なくらいだ。
わかっている。零は守るべき国民のために奔走した。そのための結果だ。それはよくわかる。それに零の違法作業の後処理を手伝うのはいつものことだ。・・・けれど今回はスケールが違い過ぎる。この後処理を一切投げられてしまった私はしばらく職場から帰ることは不可能だなと悟り、遠い目で窓の外を見た。