翌日、コリン・クリービーが襲われた事が瞬く間に学校中に広まった。
ジニーは妖精の魔法の授業でコリンと隣の席だった為かすっかり落ち込んで、双子の冗談にも笑えなくなっていた。
ラピスは、ドラコを出来る限り監視していた。
自室に入ってしまえば監視出来ないが、肖像画は、深夜寮を出た者はいないと言っていた。
ではどうやって?
――他に協力者がいる…?
又は――誰かを操っている……?
服従の呪文――彼にそんな高度な魔法が使えるだろうか?
ルシウスならば、当然闇の魔術に長けているだろう。
彼がドラコに教えたと言う線は?
否、いくら教えたとしても、流石に二年生の子供では……
「…ラピス?」
「え……?」
ハーマイオニーの声に我に返る。
今は昼休み。
ポリジュース薬を煎じる鍋を囲み、ラピスとハーマイオニーは薬を煎じながら、退院したハリーの報告を聞いて話し合っていたところだ。
「ごめんなさい」
物思いに耽る癖を直さなければ。
ラピスは謝罪をして、鍋の中をゆっくりとひと混ぜした。
昨晩の深夜、ハリーの元にドビーが現れたと言う。
九と四分の三番線の入り口を閉じたのも、あのブラッジャーを操っていたのも彼だったのだそうだ。
ということは、ブラッジャーをラピスの何十センチか手前で止めたのも彼だったと言うことだ。
彼の目的は、ハリーを家帰すこと。
秘密の部屋が関係していて、部屋は以前にも開かれたことがあるらしい。
ハリーはマグル生まれではない。
何故、秘密の部屋がハリーに危険を及ぼすのだろうか。
そして、以前は誰が、どうやって秘密の部屋を開いたのだろうか。
「決まってるさ、ルシウス・マルフォイが開けたんだろ。それで息子のドラコに開け方を教えた」
ロンの言葉に、ラピスは考える。
それが一番有り得そうな線だが、そんな簡単な問題なのだろうか?
狡猾なスリザリンが、簡単にばれてしまうようなやり方を使うだろうか。
「そんな簡単に分かってしまって良いのかしら……」
とハーマイオニーが顎に手をやる。
「でも納得出来るだろう?ポリジュース薬で一刻も早く吐かせなくちゃ」
ロンが言って、ハリーが頷いた。
「ラピス、引き続きマルフォイの監視をお願い」
「ええ」
ハーマイオニーの言葉に、ラピスは頷いた。
自室に戻ると、直ぐにルーシーに手紙を書いた。
ミリアム邸を離れていも良いから、ドビーのことを調べて欲しいと。(彼女がきっと怒るので、彼のブラッジャーで殺されそうになったことは伏せた)
しかし、彼女からの返事は拒絶のものだった。
"ミリアム邸を任された立場で屋敷を空けることは出来ない"と彼女からの手紙に書かれていた。
ルーシーは秘密の部屋について知ってはいたが、ビンズ教授の知っていた内容と大差はなかった。
彼女を頼ることは出来ない。
心配する彼女に、ラピスは"大丈夫だから"と言い聞かせ、クリスマスに帰宅することを再度約束をした。
――「最近やけに素直だな」
ぼそ、とドラコが呟く。
"先に行って"だの"用事がある"だの言わず、ドラコについて行くラピスが、彼には珍しかったのだ。
本音がぽろりと出てしまったのだろう。
「あら、歯向かった方が良かったかしら」
「え、いや、違うんだ、少し驚いて、その……」
慌てる彼に、ラピスは少し微笑んだ。
「良いのよ、」
「……うん」
ドラコは口を閉じて、前を向いて歩く彼女を見つめる。
最近、立場が逆転したように、僕は彼女に見られている。
僕も見ているからこそ分かる。
彼女は、僕を観察している。
何故……?
秘密の部屋のことだろうか?
僕なら知っていると、彼女は思っているのだろう。
しかし何を聞かれても、僕はこれ以上は知らない。
父上にも教えてもらってはいないのだから。
彼女のいつもとは違う笑み。
きっと、端から見たらいつも通りに綺麗に笑う彼女なのだろう。
けれど、僕は違和感を感じて仕方がないのだ。
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