「ハーマイオニー、ビンズ教授に聞いたんですってね」
「ええ。誰かが聞かないといつまでたっても分からないままよ」
勇敢で賢い彼女は、腕組みをして言う。
ロンが、「ハーマイオニーが手を上げたことに初めて関心したよ」とラピスに耳打ちした。
「スリザリンが狂った変人だってことは知ってたさ」
夕食前に寮に鞄を置きに行く生徒をかき分けながら、ロンが言った。
「でも、例の純血主義のなんのってことを言い出したのは知らなかったなぁ。僕ならお金をもらったってそんな奴の寮なんか入るもんか。もし組み分け帽子が僕をスリザリンに入れてたら、汽車に乗って真っ直ぐ帰ってたな」
「ちょっと、ロン」
言い過ぎよ、とハーマイオニーがロンを窘めながら、ちらりとラピスを見た。
「良いのよ。ロンの言う通り、純血主義なんてくだらないわ」
ラピスは、申し訳なさそうな顔をしたハーマイオニーを見て言った。
「多分、スリザリンが純血主義だったことを、スリザリン生は皆知っているでしょうね」
「ラピスも知ってたの?」
ハーマイオニーが問う。
「ええ。それに、ミリアム家も純血主義ですもの」
スリザリン生も、大半が純血主義だろう。
「ミリアム家は純血主義だって聞いたことない」
とロン。
「表向きはそうでしょうね。世間体を考えて、非純血主義を装っていただけだと思うわ」
「そうなの?」
ロンが目を丸くする。
「非純血主義だったなら、ここまで純血を保っていられなかった筈だもの」
「確かに、ラピスの言う通りね」
とハーマイオニー。
「君が純血主義じゃなくて良かったよ」
ロンがうんうん頷いた。
「ハリー?」
ずっと口を開かないハリーを、ラピスが窺う。
「大丈夫?」
「あ、うん。何でもないよ」
ハリーはぎこちなく笑った。
噂では、スリザリンの継承者はハリーだと言われているのだ。
何の証拠もないのにも関わらず、また周囲の人達は、好き勝手にハリーを傷付ける。
「本当に秘密の部屋なんてあると思う?」
ロンがラピスに問いける。
「私は……あると思うわ」
職員の表情を見ていれば分かる。
きっと、解決の糸口もまだ掴めていないに違いない。
「ラピスが言うと、本当にある気がしてくるわね。でも、私もあると思うわ」
「問題は、誰が継承者なのか、だ」
「皆僕がスリザリンの継承者だと思ってる」
ハリーが、自嘲的に言った。
彼の目線の先には、慌てて走り去って行くハッフルパフのジャスティンの後ろ姿があった。
「気にすることなんてないわ。貴方より、私の方がずっと継承者の要素があるのよ」
「まぁ確かに、ラピスが継承者でもおかしくはないよな」
ロンがラピスの言葉に頷いた。
「でも、ラピスは非純血主義よ」
とハーマイオニー。
「継承者は純血主義でしょうね。それなら必然的にスリザリン生と言うことになるわ」
とラピス。
「じゃあ、あいつしかいないだろう」
「あいつ?」
ロンの言葉にハーマイオニーが眉を顰める。
「マルフォイさ!考えてもみろよ、純血主義でマグルやマグル生まれを見下してる。あいつの家は代々スリザリンだし、父親もどう見ても悪玉だよ」
確かに、ロンの言う通りだ。
「まさか」
とハーマイオニー。
彼がそんなことを出来るだろうか。
恐ろしい怪物を操るどころか、自身も怯えて腰を抜かすに違いない。
しかし、ドラコがスリザリンの継承者と言う可能性は高い。
"大丈夫だ、君は純血なんだから"
彼は、知っていたのだから。
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