秘密の部屋 | ナノ

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それから数日、ホグワーツはミセス・ノリスの事件で持ちきりだった。
フィルチは今まで以上に目をぎらぎらさせて廊下を歩きまわり、生徒達は恐れ、秘密の部屋を知りたがった。
秘密の部屋がどんなところか、何の為の部屋なのか。

無類の猫好きであるジニーは、酷くショックを受けたらしく、ずっと元気がないという。
一年生は特に怯えているだろう。
事件後、パーシーが更に厳しくなったと、ロンが文句を言っていた。
薬草学の授業へ向かう途中、ここ最近ずっと探していた赤毛を前方に見付け、ラピスは口を開いた。

「ジニー!」

弾かれたように振り向いた彼女は、瞼を腫らし、充血した目を僅かに潤ませていた。

「ラピス…!」

ジニーは表情をぱっと明るくして、ラピスの元へ駆け寄る。

「ドラコ、先に行っていて」

渋々頷いたドラコとスリザリンの面々が離れて行くのを見届けて、ラピスもジニーの元へ向かう。

「ラピス!会いたかった!」

顔を綻ばせて喜ぶジニー。
とても可愛らしいが、痛々しい。

「私も、会いたかったわ。体調は大丈夫?」
「うん。唯、少し元気が出ないだけ」

ジニーは眉を下げて微笑んだ。

「ラピスも大丈夫なの?倒れたって聞いたわ。ごめんなさい、お見舞いに行けなくって……」
「大したことではないから良いのよ。ジニー、これ」

ラピスがポケットからチョコレートを取り出し、ジニーに差し出した。

「チョコレート?」
「元気薬を煎じてチョコレートと混ぜたのよ。きっと元気が出るわ」

ラピスの自室には、ルーシーに家から送ってもらった実験器具が揃っていた。
スネイプ教授に理不尽な減点をされて魔法薬学が学べなくなっては困ると、自室で練習を始めたのだった。

「ラピス…ありがとう」

潤んだ瞳をぱちぱちさせて、彼女はラピスを見上げる。
彼女の為なら、どれだけでも作ってあげたい。
彼女がいつもの元気な子に戻るのならば。

「ジニー、天体観測のことなんだけれど」
「覚えていてくれたの?」

顔を輝かせる彼女に、ラピスは微笑んだ。

「当たり前でしょう」
「嬉しい」
「クリスマス休暇が空けてからにしましょうか、冬の方が星は綺麗に見えるわ」

一瞬、ジニーの表情が曇ったのをラピスは見逃さなかった。
もっと早く天体観測をしたいのだろうか。
しかし、一年生のうちは学校に慣れるまで時間もかかる。
唯でさえ元気がないジニーが、無理をして体調を崩してはいけない。

「学校に慣れるまでは我慢よ。体調を崩してはいけないもの」

「ね?」と頭を撫でてやれば、彼女は笑って頷いた。
また元気薬チョコレートを持って行こう。
ジニーの後ろ姿を見送りながらラピスは思う。
早く、いつものジニーに戻りますように。

私も秘密の部屋について調べなければ。
スリザリンは、何の部屋を、何の為に残したのだろう。
そして、何故、ミセス・ノリスは石になってしまったのだろう。
ラピスはドラコに聞くつもりで機会を窺っていたのだが、それが中々なかった。
そこへ、魔法史のレポートを一メートル書く宿題が出た。
そして、ドラコはいつものようにラピスに添削を依頼した。
ハリー達は、宿題も兼ねて図書館へ行くと言っていた。
図書館に行くよりも、ドラコに聞いた方が早いだろう。
ドラコが口を割れば、の話しだが。
しかし、彼が口を割るとは思えない。

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