秘密の部屋 | ナノ

▼ 09(02)


「ラピス!」

大広間にラピスとハーマイオニーが入ってきたことに気が付き、ハリーとロンは二人に駆け寄った。

「ハリー、ロン……」
「君なら絶対チームに入れるって思ってた」

言葉が出てこないラピスに、ハリーがにこやかに言った。

「僕も。君以上にふさわしい人なんていないさ」

ロンもにっこり頷いた。

「言い出せなくて、ごめんなさい」
「謝る必要なんかないよ」

とロン。

「君が言い出せなかった気持ち、分からなくもないもの」

とハリー。
悩んでいたことが、馬鹿みたいに思えてしまう。
否、悩んだのは大切さ故だ。

「嬉しいよ、ラピスとクィディッチが出来るなんて」

ハリーがそう言ってくれるのならば、チームに加入して良かったと思える。

「でも困ったわね、グリフィンドールとスリザリンの試合の時、どっちを応援したら良いか分からなくなってしまったわ」

とハーマイオニーが笑う。

「そりゃ勿論」
「グリフィンドールだろう」

フレッドとジョージが、ラピスの肩をがばりと抱いた。

「ちょっとフレッド、ジョージ」

一緒にやって来た、アンジェリーナが双子を窘める。

「ラピスがいたって、スリザリンはスリザリンだ」」
「俺達の憎っくき宿敵」
「手加減無用だ」
「そうだろ?ラピス」

にやりと笑う双子。
二人のこういうところが、とても好きだ。
女性同士の陰湿な関係よりも、男性同士のような割りきった関係の方が楽だと思う。
勿論、名家は男性でも、関係は陰湿だけれど。

「ええ。臨むところよ」

ラピスの言葉に、双子がひゅぅと口笛を吹く。

「負けないわ」

双子の笑みを真似てラピスが言うと、周囲がはやし立てた。

私は、こんなことを言う柄だっただろうか。
周囲で笑うグリフィンドール生の中で、ふとラピスは気が付く。

「そんなこと言ったら、ウッドが更に燃えちゃうよ」

ハリーが困ったように笑った。

「今度は徹夜で練習だとか言いそうだな」
「それだけは勘弁だな」

フレッドとジョージが大袈裟に首を振った。

「私達だって負けないんだから」

ケイティとアリシアが笑う。

この人達は、グリフィンドール生は、他人の心を開く才能を持っている。
いつも、知らない自分が顔出して、いつの間にか笑っている。
しかし、心地良さと温かさの中に、一抹の不安がある。
不安――否、恐怖だろうか。
心を開いて、知られてしまうのが怖いのだ。
自身でも分からない心を晒してしまうのが怖い。
知られてしまうのが怖い。
何を?
――何だろう。
何か、知られたくない何かを知られてしまうことが、とてつもなく怖いと思う。
その"何か"が分からないことが更に恐怖を掻き立てる。

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