「ラピス!」
大広間にラピスとハーマイオニーが入ってきたことに気が付き、ハリーとロンは二人に駆け寄った。
「ハリー、ロン……」
「君なら絶対チームに入れるって思ってた」
言葉が出てこないラピスに、ハリーがにこやかに言った。
「僕も。君以上にふさわしい人なんていないさ」
ロンもにっこり頷いた。
「言い出せなくて、ごめんなさい」
「謝る必要なんかないよ」
とロン。
「君が言い出せなかった気持ち、分からなくもないもの」
とハリー。
悩んでいたことが、馬鹿みたいに思えてしまう。
否、悩んだのは大切さ故だ。
「嬉しいよ、ラピスとクィディッチが出来るなんて」
ハリーがそう言ってくれるのならば、チームに加入して良かったと思える。
「でも困ったわね、グリフィンドールとスリザリンの試合の時、どっちを応援したら良いか分からなくなってしまったわ」
とハーマイオニーが笑う。
「そりゃ勿論」
「グリフィンドールだろう」
フレッドとジョージが、ラピスの肩をがばりと抱いた。
「ちょっとフレッド、ジョージ」
一緒にやって来た、アンジェリーナが双子を窘める。
「ラピスがいたって、スリザリンはスリザリンだ」」
「俺達の憎っくき宿敵」
「手加減無用だ」
「そうだろ?ラピス」
にやりと笑う双子。
二人のこういうところが、とても好きだ。
女性同士の陰湿な関係よりも、男性同士のような割りきった関係の方が楽だと思う。
勿論、名家は男性でも、関係は陰湿だけれど。
「ええ。臨むところよ」
ラピスの言葉に、双子がひゅぅと口笛を吹く。
「負けないわ」
双子の笑みを真似てラピスが言うと、周囲がはやし立てた。
私は、こんなことを言う柄だっただろうか。
周囲で笑うグリフィンドール生の中で、ふとラピスは気が付く。
「そんなこと言ったら、ウッドが更に燃えちゃうよ」
ハリーが困ったように笑った。
「今度は徹夜で練習だとか言いそうだな」
「それだけは勘弁だな」
フレッドとジョージが大袈裟に首を振った。
「私達だって負けないんだから」
ケイティとアリシアが笑う。
この人達は、グリフィンドール生は、他人の心を開く才能を持っている。
いつも、知らない自分が顔出して、いつの間にか笑っている。
しかし、心地良さと温かさの中に、一抹の不安がある。
不安――否、恐怖だろうか。
心を開いて、知られてしまうのが怖いのだ。
自身でも分からない心を晒してしまうのが怖い。
知られてしまうのが怖い。
何を?
――何だろう。
何か、知られたくない何かを知られてしまうことが、とてつもなく怖いと思う。
その"何か"が分からないことが更に恐怖を掻き立てる。
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