秘密の部屋 | ナノ

▼ 06


ハリーとロンが空飛ぶ車でホグワーツまで来て墜落させたことは、瞬く間に学校中に広まった。
何でも、九番線と一○番線の間の柵が通り抜け出来なくなったらしい。
ホグワーツに到着したものの、車が故障し暴れ柳に突っ込んだらしいが、二人は無傷だった。
被害は、車が行方不明になったこととロンの杖が折れてしまったこと。

「二人とも災難だったわね」

二人に説教していたハーマイオニーは、ラピスの言葉を聞いて眉を吊り上げた。

「そうなんだよ、まったく」
「ロン!」

ハーマイオニーがぴしゃりと言う。

「擁護しては駄目よラピス、その人達ちっとも反省してないわ!」
「しているわよ、罰則もあるもの」
「そう言う問題じゃ……」
「貴女だって心配していたのではなくて?」
「しっしてないわ!」

ラピスがいたずらっぽく言うと、彼女は顔を赤くした。

「汽車で噂を聞いて、ハーマイオニーったら何度も窓から空を見上げて貴方達を探していたのよ」

と、ラピスはハリーとロンに耳打ちした。

「直ぐに許してもらえるわ」

二人には、微笑む彼女が女神に見えた。
翌日、ロンの元にウィーズリー夫人からの吠えメールが届き、ハーマイオニーは二人が充分罰を受けたと判断した為許したようだ。

――「壁が塞がっちゃうなんておかしいよ…一体何だったんだろう」
「奇妙ね……」

ラピスはハリーに、ドビーが現在何処の家に仕えているのか分からなかったことを報告した。

「あんまり気にしないほうが良いよね。ロンもそう言ってた」

今のところ、危険なことは起きていない。

「そうね……」

そうは言ったものの、心配性のラピスはどうしても気になってしまう。

「――ラピス、」
「何?」

彼女が顔を上げると、ハリーは視線を泳がせていた。

「一年生の終わりに…ダンブルドアから聞いたんだけど……」

彼の言っているのは、"能力に頼った魔法"のことだろう。
同い年の子供が、杖も呪文もなしに魔法が使えるのだから、驚いて当然だろう。
そういえば、あれからこの話しをしたことはなかった。
言葉を選んでいるのか、言うか否か悩んでいるのか、彼は口を開いたり閉じたりしている。

「……?」
「…いや、何でもないんだ」

彼はそう言うと、「またね」とぎこちなく微笑んで走って行ってしまった。
彼は何が言いたかったのだろう。
何かを聞かれたとしても、自身も分からない為答えることは出来ない。
彼のぎこちない微笑が気になった。
追求して良いものなのか、放っておいた方が良いものなのか、分からない。

「ラピス!こんなところにいたのか」

ドラコが早足でやって来る。

「一限目は変身術だ、行こう」
「…ええ」

変身術では宿題を集めた後、コガネムシをボタンに変える魔法を教わった。
何度目かに漸く成功させたラピスは、マクゴナガル教授から一○点をもらった。
予習と復習をやっている甲斐あって、杖と呪文を使用する魔法に慣れてきた。

「すごいのね、本当にラピスって」

瞳を輝かせて言う彼女達は、ラピスの影の努力を知らない。

「次は薬草学ね」
「薬草学って嫌い。汚いし、手も制服も汚れちゃうもの」
「土いじりなんて召し使いにやらせるものだわ」
「そう思うでしょう?ラピス」

育ちが良いのか悪いのか、スリザリン生は薬草学が嫌いだ。

「私は嫌いではないわ」

ラピスを除いて、だが。
周りにいた女生徒が顔を見合わせた。

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