いろんなにゃんこ

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「雛くん、もう寝ようか?」


何度目かのこのやり取りは、珍しく、いつもならもう寝ちゃってる時間であるハズなのに、まだまだ元気な雛くんだからです。


今日お世話担当は、成だった。お昼寝いっぱいしたのかな?だから、ちっとも眠る気配がありません。それどころか、まん丸な瞳は爛々と輝いて、テンションも上がっているようです。
うん、その原因もなんとなくわかってますよ。


一応、俺は忙しいから邪魔をしてはいけないというのは感じてるようで、遊んで遊んで攻撃は今の所ありません。
多分、ないと思うよ?だけどねー。。。俺が気になっちゃってますよ!なんなんでしょうか、その物体たちは。。。


パソコンを前に、明日使う資料のチェックをしていた俺の隣にペッタリ座ってる、元気いっぱいでごきげんな雛くん。一体、何をやっているのかな?


そして、それらはどこから持ってきたの!昨日まではなかったよね?そんなもの。その大量にある、大小様々の魚のぬいぐるみ達。当のご本人はなにやら、嬉しそうに自分の周りにばらまいて、楽しそうに話かけていたりしますけども。


「んふふ、おさかなさぁん♪」


時おり聞こえてくる声は、どこまでも楽しそうです。。。。


まぁ、それはいいのです。だってぬいぐるみと戯れてる雛くんはとっても可愛いのですから。


……例えそれが魚だったとしてもね。でもさ、なんで魚なの?
いや、雛くんが魚好きだっていうのは知っているし、それだからこそ、嬉しそうだっていうのはわかります。だけどね、その数なんです、問題は。さすがに多すぎるでしょ!ぬいぐるみは、いいよ、百歩譲って邪魔だったとしてもね。だけど、魚オンリーって!それなりに可愛いものから、リアルすぎて怖いものまで、所詮魚。本当に様々であるけど、これだけあると怖いのです。


それに、疑問はそこだけではない。一体誰にもらったのか?このありえないくらいの量のぬいぐるみ達ですけど、想像につくのは、羽柴ちゃん?
ありえます!ありえすぎて脱力するしかありません。


前に、マグロのぬいぐるみなんて、微妙なセンスのクリスマスプレゼントを雛くんに渡したくらいだからね。でも、あの時はプレゼントだったし、たった一つだったからまあ、いい。

デカさは別にしてね。


でも今回は、なんの記念な訳かな?俺への嫌がらせですか?
いや、成ならともかく、羽柴ちゃんに限ってはないな。そう思いたいです。
(でも、今日のお預かりは成だった。やっぱりこれは、まさかまさかの嫌がらせなんだろうか?)


なんだかんだ言っても、とりあえずは大人しく一人で遊んでくれてるんだからそれはそれで有り難い事ですが。だってこの書類、急ぎだし。申し訳ないけど、雛くんの相手をしている時間は正直ないです。


基本いい子な雛くんだけど、たまに、退屈すぎて構ってオーラ全開に放ってる時があります。今もその傾向が多少出ていますけど、ぬいぐるみがある分、ごまかしが効いているようです。
だから、雛くんが魚に夢中になってるのをいい事に、俺は心置きなく、仕事に集中させて頂きましょう。そこは、感謝感謝なのです。


ありがとう


お魚さん達。


もう少しだけ、雛くんの注意を惹きつけておいて欲しいのです。





パタン


ようやく一段落着いたので、パソコンを閉じた。横では、まだお魚相手にイロイロやってる雛くん。本当にまだ、眠くないの?


「雛くん、もう寝ようか?」


そして、再びこの言葉に繋がる訳です。いい加減、もう寝ないといけないと思うんです。そんな、夜更かしはいけません。たとえ、雛くんは学校に言っていなくても、そこは子供なんだから、早寝早起きは基本でしょう?


だけど、そんな俺の言葉にも雛くんは、


「う…?」


と、振り向き顔を上げるんだけど、


「もう、遅いよ。寝よう?」


もう一回そう言ったら、考え込む仕草。視線は魚達。少し名残惜しげな感じですね。しばしの葛藤はあったようだけど、そこは聞き分けのいい雛くんだ。



「あぃ」


といつものように、元気よく可愛いい返事をしてくれた。そしてたくさんの魚達を拾い集める。
うんうん、偉いね!お片づけは基本ですよね。安定の良い子です。


そんな、躾の行き届いた雛くんに頬が緩みながら、俺も寝る前の支度をして、先に寝室へ向かったった雛くんを追いかけた。


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