◇2

「こーくん、こーくん!!」

なんか、ニコニコしながら雛くんが近づいて来てるよ?
なんだろう?でも、可愛いなぁ…//
ついつい、顔がニヤけてしまうのは仕方のない事だと思う。うん、俺悪くないよ。


「どうしたの?」


笑顔の雛くんにこちらも笑顔で問いかければ、


「んふふ、あのね。ぼくね。」


なんだか楽しそうに、くふくふ笑みをこぼしながら何かを伝えようとする雛くん。マジ天使なにゃんこ。そんなにゃんこは天使の笑みで、


「ぼくね。にいちゃのところ、いくの」


悪魔の言葉を吐き出し、俺を地獄に突き落とす。


…………、は?え…、………ええっ!?
え?何!聞き間違えだよね?まさか、嘘!?そんな馬鹿な!
驚愕に包まれた俺は、思わず持ってたパンを落としちゃいました、、、。


「えっ!えっ?ひ、雛くん。それって?え…、えーーーーー!?」


徐々に現実として受け止められないその事実に気づき、上手く言葉が出ないくらい動揺しまくってる俺。


すると、目の前の雛くんは、そんんな俺を見てなお一層笑みを深めた(ように見える)その事実に、また俺は愕然としてショックを受けている。
ダメージが、半端ない!もう、俺にとってはハルマゲドンレベルの大事態だ!


「んふふ、あのねー。こーくん、きょうはなんのひ?」


雛くんが、ますます笑顔で何かを言ってるけれど、今の俺の心には届かない。
すでに燃え尽きてしまいそうに真っ白なのだ。


「こーくん?」

「・・・・・・」

「こーくん!」

「・・・・・・」

「こーくん!ってば!?」


雛くんの言葉に終始無反応な俺に、とうとう焦れた雛くんが、俺の服をぐいぐいと引っ張り訴えていた。ようやく、なんとか現実に引き戻された俺は、痛む心に鞭を打って、ぎぎぎぎと油の切れたロボットのようなぎこちない動きで、雛くんの方を見た。


「きょうは、なんのひ?」


再度笑顔で言われた言葉。俺は、必死に考える。
きょ、今日?今日は、えっと?何日だっけ?

確か今日から4月で………、あれ?
あ!?あぁぁぁーーー!!


「もしかして、え、エイプリールフール!?」


すると、雛くんは、それはそれは嬉しそうにコクんと頷きながら、


「うそ、なの!」


イタズラが成功したといわんばかりに、口元に手をやりながら笑ってる雛くん。おう、何から突っ込んでいいのか、、、でも。

は…はぁぁぁー、良かったぁ。

今は、雛くんがどこにも行かないんだ。俺の側にまだいてくれるんだ。
という、安堵感。一気に力が抜けたような脱力感。


なんだ、エイプリールフールの嘘だったのか…。
俺は、膝をついてうなだれてしまった。


「こーくん?」


雛くんが、心配そうに俺を上から覗き込むようにしゃがんで声をかけた。


「・・・・・・」


そんな雛くんを俺は見上げ、俺は雛くんをひょいと抱き上げた。
そして、


「…心臓止まるかと思ったよ」


情けない顔で雛くんに向かって言った。


そんな俺の情けない顔と、声に、


「んふふ。こーくん、かなしかった?」


ニコニコと可愛いらしく笑ってる雛くん。


「悲しかった…です。」


そう答えた俺の言葉に、雛くんは満足そうにまた笑った。もう、なんなの?
いくら可愛い雛くんでも、これは酷いイタズラだよ!例え俺が雛くん至上主義でもこれは文句を言ってもいいレベルだと思うんだ!と、さすがの俺も、雛くんへの文句が口をでそうになる。


「雛くん!」


だって、雛くんは楽しそうだけど泣きそうだよ…俺。なんで、雛くんはこんなに嬉しそうなの?
と、なんだか悲しくなってきたんだ。
そんな落ち込み始めた俺だったけど、そんな俺を見て、なおも雛くんは嬉しそうで、そして、


「じゃぁ、うそってきいてうれしかった?」


満面の笑みでそう言った。


………、嘘で?嬉しかったかって?
そりゃあ、、、


「嬉しかったですよ、、、」


はあ、とため息をついて答えた。


すると、その俺の答えに満足げにクスクスと声をたてて笑い始めた雛くんは、


「んふ、うそもほぉべん」


かたことな言葉で楽しげに言った。そして俺の腕の中に抱かれながら、甘えるように胸に顔を埋めながらスリスリしてくる。


うわぁ…//
可愛い。

さっきまでどん底だった気持ちが一瞬にして浮上した、ゲンキンな俺。


て、…ん?嘘も方便って言いました?
どこで覚えたの?そんな言葉。それに、


「雛くん?よく、エイプリールフールなんて知ってたね。」


不思議に思ってそう聞いたら、


「なりが、おしえてくれたんだよ」


…………、


「じゃぁ、この嘘も?」


「んぅ…」


あれ?なんかもう、眠くなったのかな?
急に雛くんがおとなしくなった。


「雛くん?」


それでも聞いておきたいからもう一度、声をかける。
そしたら雛くんは、とろんとした瞳を向けながら、


「なりが…そういったらこ、くんよろこぶからって…」


そう言って、またぐりぐりと顔を動かす。


「雛くん?眠いの?」


「う、んん…、」


そう首を振るけど、目は閉じてしまいそう。
俺はそんな雛くんの頭を撫でてあげながら


「眠ってもいいよ。」


そう囁いてあげると、すぐに、寝息が聞こえてきた。


雛くんの、小さな嘘。

”嘘も方便”


ちょっと違うんだけど、って思うけど、きっと俺が喜ぶって思っての純粋な嘘。
わかってしまえば、心が温まるのを感じる。


「でも、成…絶対に嫌がらせだろ。」


雛くんを使ってくるなんて!反則だろ!
今度会ったら、絶対に文句を言ってやる!
そう心に誓ったエイプリールフールだった。


何よりも、雛くんが成に感化されないか、今後が非常に心配になると、真剣に悩む洸さんだったとか…。



fin


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